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19話_学園への推薦

サクラ視点に戻ります。

 セバスさんの案内に従い、大きな部屋に入ると洗礼式で見た領主様と領主様を小さくしたような子供がいた。


「ご足労ありがとう。よく来たね。私はディアード・グロウズ。この辺り一帯の領主をやっているよ。」

「俺はスティム・グロウズ。父上が推薦するのにお前たちが値するか確かめにきた。」

「スティム?横柄な態度はいけないよ?」

「ですが父上、貴族たるもの、平民になめられてはいけません。」

「スティム。大きな態度はね、心の小ささととられることがあるんだよ。威嚇しないといけないような臆病者だと思われたくないだろう?それにお客様に対して失礼な態度は自分を貶めるだけだよ。」

「は、はい。気を付けます。」

「スティムは君たちと同い年でね、これから接点が増えるかもと思って参加してもらったんだ。」


 息子君がめっちゃ睨んでくるが精神年齢が大人の私にはまったく効かない。


「ローズと申します~。本日はお招きいただきありがとうございます~。」

「サクラと申します。本日はご招待ありがとうございます。」

「カトレアです。お招きいただきありがとうございます。」

「うんうん。挨拶もしっかりとしていて良い子たちだね。まずはお茶をどうぞ。作法は気にしなくて良いからね。」

「ローズ様、サクラ様、カトレア様。こちらマカロンというお菓子でございます。ごゆっくり召し上がりください。」

「「「ありがとうございます。」」」

「平民には手が届かないものだからな。感謝するんだぞ。」

「そんなこと言わなくていいんだよ。カトレア君はともかく、ローズ君とサクラ君は価値に気付いてるみたいだしね。」


 いわゆる砂糖菓子の類の物を出された。砂糖自体は平民にも手が届く値段だが、それでも贅沢な使い方はできない。こういった甘味を食べられるのはさすが貴族といったところだろう。


―――


「おいしいお菓子も食べたし、そろそろ本題に入ろうか。」


 五人でしばらく歓談をして、息子君も睨むのを止めてくれたころ、領主様がそう切り出した。


「私は君たち二人を七龍学園に推薦しようと思っていてね、今日は推薦してほしいかの意思確認のために呼んだんだ。もちろん、変な人物を推薦するわけには行かないから人間性の確認もするのだけど...。二人は大丈夫そうだ。」

「「ありがとうございます。」」

「返答は今すぐ。とは言わないけど、なるべく早くがいいかな。そうだね...。一週間後に答えをもらおうかな。玄関に来てくれればセバスが話を聞きに行けるよう手配しておくからね。なにか質問はあるかい?」

「やはり推薦先は魔法科でしょうか?」

「そうだね。カトレア君は下位とはいえ特殊適正の影の適正を持っているのが理由で推薦するからね。大変かもしれないが、魔法科以外を受けたい場合は僕からの推薦とは別で自力で受かって入学してね。」

「では、推薦で魔法科に入って、他の学科にも試験を受けて入学するのはありでしょうか?」

「もちろんだよ。ただし、入学後、魔法科の成績が良くなかった場合は他学科を諦めて魔法科一本に絞ってもらうよ。魔法科よりも他の学科に比重を置きたいなら今回の推薦では入学せずに魔法科も行きたい学科も両方とも受験するのも一つの手だよ。」

「なるほど、ありがとうございます。」

「私からもよろしいでしょうか?」

「もちろんだよ。なんだい?サクラ君。」

「推薦していただきありがたいのですが、なぜ適正が無の私を推薦しようと思ったのでしょうか。」

「なっ!なんだと。父上、適正が無の者を推薦するとは何のつもりですか!」

「まあまあ落ち着きなさいスティム。彼女にとって適正が表示されないことは些細なことだよ。」

「無適正の者を推薦するなんて前代未聞です。魔法科に魔法を使えないものを推薦するなんて。家に泥を塗るつもりですか。」


 領主様は私の適正を承知したうえで推薦をくれようとしているのか。一方息子君は何も聞いていなかったらしい。また私を睨んでいる。


「もちろんそんなことないよ。これはただの勘なんだけどね、彼女は魔法を使えると思うんだ。」

「無の適正の者が魔法を?そんなことありえないでしょう。」

「昔に読んだ書物に書いてあったんだけど、無の適正は鑑定に表示できない超級適正の可能性があるんだよ。サクラ君はそれだと思ったのだけど。」


 領主様は博識な上にかなり勘が良いらしい。優しいだけはなく油断できない人だ。


「そんな眉唾物を信じるのですか?」

「いままでは信じてなかったんだけどね、洗礼式でサクラ君をみてこの子ならって思ったんだ。どうでしょう?サクラさん。鑑定で適正が表示されない君は超級適正を持っていたとしても魔法科に入学することはできないだろう。でも、僕の推薦があれば君は魔法科として入学することができる。もちろん入学するからには隠しているだろう実力を見せてもらうことになるけどね。」

「まて、父上には悪いが俺は認めない。推薦を受けたければ俺と決闘しろ。」

「スティム。決闘する意味を分かっているのかい?サクラ君を侮辱するだけでなく僕のことも侮辱することになるんだよ?」

「父上、申し訳ございません。でも家に泥をぬると分かってる女を推薦することは認められない。」

「仕方ないか、見てもらうのが一番早そうだね。どうだろうサクラ君。この決闘を受けてくれないだろうか。もちろん君が勝った時は私からも利を用意しよう。」


 なにか私が推薦を受ける前提になっている。まあ、受けようと思っているのだが。


「...。魔刀の使用はありでしょうか?」

「ふん、禁止に決まっているだろう。この決闘は勝ち負け以上に貴様が魔法を使えるのかを確かめるための物だ。道具に頼ったら魔法が使えますじゃあダメなんだよ。」

「分かりました。では勝利条件と勝った時の利、負けたときの負担はなんでしょう。」

「そうだな、貴様の勝利条件は一度以上魔法を使って俺を倒すこと。魔法を使うタイミングはいつでも構わないが、ちょっとした補助に使うだけ。とかは禁止だ。貴様が魔法を使った後、俺が気絶するか、降参をする。もしくは見届け人が続行不可能と判断した時点で貴様の勝利だ。逆に貴様の敗北条件は魔法を使う前に気絶すること、もしくは見届け人が魔法を使えないと判断したときだ。異議は?」


 意外とまともな条件だな。本当に意地悪ではなく心配しているだけって感じか?


「ありませんが、一つ質問を。身体強化は魔法に含まれますか?」

「ふむ。そんな魔法聞いたことないが...。仮に身体強化があったとしても名前的に素のステータスで見せかけることができるかもしれないから無しだ。それに、身体能力を強化できるだけなら騎士科に行けばいい。どのみち魔法科に推薦する価値はないな。」


 ま、言ってることは最もだな。


「なるほど。分かりました。では利と負担は?」

「そうだな。貴様が勝利した場合、まずはその時までの無礼を詫びよう。それと推薦の件も認め、学園での生活で困ったことがあれば助けてやる。逆に貴様が敗北した場合、推薦は取りやめるだけだ。この条件で問題ないだろう。」

「そうだね。本来は負けた際の負担はもっと大きい方が良いと思うけど、今回はスティムが一方的にけしかけているし妥当だろう。そうだね、私からの利は入学に必要な物を代わりにそろえてあげよう。大した負担でもないしね。君が負けた場合はカトレア君の準備を手伝ってあげてくれ。それでよければ今から始めようか。」


 この領主様優しすぎる。ウインクしながら負担について言ってきたが、負けた場合の負担が負担になってない。


「こちらの利が大きすぎる気がしますが...。」

「気にしなくていいよ。超級適正を見る数少ない機会だからね。」


 私が適正を隠していると仮定した場合、勝った場合にも“適正を見せる”という負担が出てくるからこその条件設定か。


「では、それでお願いします。」

「よし、じゃあついてこい。」


 息子君の後をついていき、決闘に向かうのだった。


*****

Tips 七龍学園

 ブルーム王国にある学園。アースフィアの中で最も大きな学園で魔法科、騎士科、政治科、貴族科、魔道具科、錬金科、商学科の七つの科があり、十五歳から十八歳までの三年間在籍する。七人の神霊を象徴として建てられた。貴族科を除き、すべての学科で出自問わず入学することができる。貴族科だけは貴族という出自だけで入学できるが、他の科は試験が難しく入学するだけでかなりのステータスになる。貴族も箔を付けるために他学科を受けることが多く、貴族科にしか所属しないものは貴族の中で落ちこぼれ扱いされる。貴族も試験の難しさを知っているため、横柄な態度をとる者は少ない。不文律として出自問わずの平等が掲げられている。

次話は明日の17時投稿予定です。


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