17話_領主の館へ
<???視点>
洗礼式が終わったころ、ある一室で高級感漂う服を着た男と執事の格好をした男が書類を見ていた。
「ふむ、この中だと彼女がいいかな?」
「ええ、よろしいかと。」
空いた窓から風が吹き、束になった書類を撫でる。書類の何枚かが宙を舞った。
「おや、この子は...?」
「彼女ですか?ステータスは高いですが適正が無い時点で止めたほうがよろしいかと。」
「そうだね。でも、一目見てから気になってたんだ。」
「...。」
「え?なんで引いたの?なにか不思議な感覚があっただけだよ。」
「...。安心しました。てっきり少女趣味なのかと。」
「違うよ!?たしかに可愛らしいとは思うけど奥さん一筋だからね?」
「かしこまりました。そういうことにしておきましょう。」
「違うからね?何その分かってますよみたいな笑顔。絶対分かってないからね。」
「では、招待状を作ってまいります。気合をいれて...。」
「やっぱり分かってない!気合なんて入れなくていいからね?」
「ええ、承知しております。では。」
執事の格好をした男が部屋を出ていく。
「はぁ、異常にステータスの高いのに適正が無なのか、眉唾物だと思っていたけど超級適正とかいうものなのかな?」
高級な衣服に身を包んだ男の呟きは誰に聞かれることもなく宙に溶けていった…。
―――
<サクラ視点>
「洗礼式って大変だったんだね。」
「洗礼式っていうよりもサクラのステータスが原因だと思うわ~。」
「うっ。とりあえず修行してくる。」
「あら~。逃げちゃったわね~。それにしても大変だったっていいながらもサクラは元気ね~。」
次の日になって帰宅し、リビングでまったりとおしゃべりをしていたが話の流れが嫌な方向に行きそうになったので退避する。ステータスが上昇したからか体力が余り気味だったので丁度いい。
昨日はあの後、成長限界が変わっていたことを話した。洗礼式で何かあったのでは?と意見が出はしたが、みんなから見えてる範囲では異常がなかったし、私も洗礼式であったことを覚えていないので結論付けることはできなかった。まあ、悪いことが起きたわけじゃないからそこまで気にしなくてもいいだろう。
―――
「ただいまー。」
「おかえりなさ~い。領主様からお手紙来てたわよ~。」
「はーい。後で…なんて言った?」
「お手紙来てたわよ~?」
「そこじゃなくて、その前は...?誰からって?」
「領主様からよ~?」
「なんでよ!」
修行から帰ってきたら母に爆撃された。領主からって何?
「ん~。珍しい魔法の適正を持っている人や優秀なステータスを持つ人を領主が学園に推薦してくれるらしいし、その意思確認の招待状じゃないかしら~?」
「私、無の適正のはずなんだけど...。」
「ふふふ~。サクラは天才だからね~。優秀さがにじみ出てて目を付けられたんじゃないかしら~?」
手紙を確認してみると母の言う通り招待状だった。日付は来週になっている。
「学園か...。」
「推薦されたら強制ってこともないからしっかり悩んで決めるといいわ~。」
「ううん。行けるなら行くよ。」
「あら~?悩まないのね~。」
「うん。楽しみだよ。」
SDSのストーリーで主要メンバーが集合するのは学園のある王都だ。この世界が何週目の世界なのかを確認するためにも、メンバーたちを一目見るためにも絶対に行きたい。
ライラスとシルビアは学園で会えると思うから休日に他のメンバーに会うための計画を立てなくては。
―――
招待状が届いて一週間、今日は領主様の館に行く日だ。
「「カトレアちゃん、おはよう。」」
「おはよう、サクラ。今日は遅刻しなかったのね。ローズさんもおはようございます。」
「ふっふーん。やればできるのだ。」
「はぁ。」
尻尾に抱き着いたらため息をつかれたが逃げられはしなかった。モフモフ。
「でも大丈夫なの?特殊スキルがばれたんだったら逃げられなくなるかもよ?」
「うーん...。たぶん大丈夫!それよりも学園への推薦だったら一緒に行こうね!」
「なんでそんなに前向きなのかしら。ま、サクラが大丈夫だと思うなら平気でしょ。領主様のところに行くわよ。」
そう、カトレアちゃんも今日の招待状をもらっている。魔法の適正に“影”があったらしく、珍しい適正ということで招待されたのだろうとのこと。ちなみにカトレアちゃんの両親はお仕事があって行けないらしく、母が保護者として付いてきている。
「あいかわらず大きいねー。」
「そうね。この建物の中に入るって思うと緊張するわ。」
領主の館について大きな建物を見上げる。
「ようこそいらっしゃいました。カトレア様とサクラ様。それからローズ様。」
「っ!?」
「はじめまして~。サクラの母でローズと申します~。今日はよろしくお願いしますね~。サクラとカトレアちゃんも挨拶しましょうね~。」
突然の声掛けに驚いたが母は気づいていたみたいだ。気を取り直して挨拶を…。
「は、初めまして。カトレア「セバスっ!?」言いま…。サクラさん?」
「ご、ごめん。初めまして。サクラと言います...。」
「おや、サクラ様はお会いしたことがありましたか?確かに私はセバスと呼ばれていますが...。あなたのような可憐なお嬢さんを忘れるはずがないのですが。」
「い、いえ、あったことはありません。ただ、見た目がまるでセバスだと思いまして...。」
「?まるでセバス…ですか?良く分かりませんが誉め言葉として受け取っておきましょう。」
困惑させてしまった。失言もフォローしてくれるなんて、まさにできる執事って感じがする人だ。
「ちょっとサクラ。人前で変なこと言わないでよ…。」
「お母さまも今のはマナーがなってないと思うわ~。」
「ご、ごめんなさい...。」
二人に呆れられてしまった。
「いえいえ、まだ洗礼式を終えたばかりですから。これから学んでいけば良いのですよ。」
「はい、精進します...。」
「では旦那様がお待ちです。中へどうぞ。」
セバスさんの案内で中に入っていくのだった。
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Tips スティム・グロウズ
公爵令息。土属性。お貴族様らしくプライドが高いが実は寂しがりや。父親を誇りに思っており自分も父のようになりたいと思っている。無適正は無能だと思っている。
次話は明日の17時投稿予定です。
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