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13話_母との稽古

母の暴走が止まらない...。

「話を始めないなら俺から言うぞ。」

「だめよウィード。私から言うって決めてたのよ~。」


 良かった。いつもの母に戻ったようだ。


「実はね~。今回のピクニックでウルフが襲ってきたの、お母さま達の仕掛けなのよ~。」

「え?は??」

「サクラに課した試練で~。一年前からウィードに鍛えてもらったウルフをサクラにぶつけてみたの~。」

「ちょ!?えっ?」

「それで~。サクラが無事「いったんストップしとけ。」なによ~。説明の邪魔しないでくださる?ウィード。」

「???」

「いや、嬢ちゃん見てみろ。情報量多すぎて頭に入ってねえぞ。」

「あら~。困ったわ~。これからが本題なのにね~。」


 良くなかった。マイペースすぎて情報の処理が追い付かない。え~と、整理すると今回襲ってきたウルフは一年前から依頼に行っていたはずのウィードさんが獲物を与えたりしつつ育てた個体で、私への試練として襲わせた。でいいのかな?衝撃的過ぎただけでそこまで情報量が多いわけじゃなかったかな。ん?


「ウィードさん。一年前に言われた依頼ってもしかして?」

「ああ、ローズさんからの依頼でウルフ一体を育ててCランククラスまで強くすることだ。」

「Cランク…。それは苦戦するじゃん。」

「おう、危なかったら助けられるように近くにいたけど平気だったな。」

「いや、笑い事じゃないでしょ。母さまも近くにいたしウルフがそっち向かったらどうするの。危ないでしょ。」

「あー。なんで嬢ちゃんがローズさんのことを弱いと思ってるのかは知らんが、彼女俺より強いぞ。元Sランク冒険者だしな。」

「へ?」

「そうよ~。お母さまがサクラを守るんだからね~」

「...?」


 また思考停止してしまった。母がSランク冒険者だったなんて。魔法についてもっと詳しく聞いておけばよかった。


「ローズさんは中、遠距離だとえげつない魔法ぶっ放してくるし、近距離だと即切られるから負けなしだったんだ。一応刀を教えたのは俺だが直ぐに勝てなくなったし。」

「え、もしかして氷華って母さまが使ってた刀なの?」

「そうよ~。娘が引き継いでくれて嬉しいわ~。」

「じゃあ、本題に入るがいいか?」

「え?まだ本題だったの?」

「おう、まだ事前知識みたいなもんだ。」

「いや、無理、一度休憩入れたい。」

「んじゃ~。休憩が終わったら本題ね~。」


 ―――


「では本題入りましょ~。」


 休憩が終わって本題に入る。


「最初に言った通り、今回の一件はサクラへの試練だったのよ~。」

「そういえば試練だって言ってたね。なんの試練だったの?」

「そ~れ~は~。なんと!お母さまに修行を付けてもらうための試練でした~!」

「違うだろ。」

「え...。」


 なんかまた母が脱線しているがウィードさんがぶった切った。


「魔物討伐解禁の試練だ。魔物とはいえ生き物を殺すことになるからな、俺とローズさんの目が届くところで初めての討伐をしてほしかったんだ。」

「なるほど、失敗してたら実践は遠のいていたと。」

「一人での実践はそうだな。ま、ローズさんが修行付けるのは失敗しても成功しても考えていたがな。」

「む~。せっかくお得感を出そうと思ったのに~。」

「そんなもの出す必要はない。ちなみに実践は俺らが付きっきりであれば許可を出す予定だったぞ。」

「なるほど。なら合格したから行きたければ一人で森に入っていいってわけなんだね?」

「そうよ~。さすがに行く前に一声かけてもらうけどね~。」

「は~い。」


 母にも修行を見てもらえるうえに魔物と戦う許可も貰えたみたい。明日になったら森に行ってみるかな。


「明日からお母さまと一緒に特訓しましょうね~。」


 ...。森へは明後日以降に行こう。


 ―――


「え~い。」

「ちょっ」

「や~。」

「ちょっ」

「ほい。」

「待って!」

「ん~。どうしたの~?」

「はぁ、はぁ、いや、どう、した、の、じゃなくて、ふぅ、普通に死んじゃうから。」

「いやね~。サクラなら大丈夫よ~。」

「母さまからの謎の信頼がすごい!」

「叫ぶと疲れちゃうわよ~?それと母さまじゃなくてローズ師匠でしょう~?」

「いや…。うん、そうだね...。」


 気の抜けた声を出しながらも数十個の水の矢を飛ばしたり、私の周りを草だらけにして動きにくくしたりと、やはり母は凄い。じゃなくて躱すので精一杯で反撃ができない。


 師匠ズとの話し合い?をしてた次の日。今日は母、ではなくローズ師匠との修行だ。師匠呼びだとウィードさんと紛らわしいため、修行中はローズ師匠、ウィード師匠と呼ぶことになった。

 今やってるのは母との模擬戦で私が一撃入れたら私の勝ち。負けはないが一撃入れるまではご飯抜きといったルールで戦っている。すでに10時間は経過しているのに母の攻撃が止まない。今は防御に専念して反撃の機会をうかがっているとかカッコいいことを言えれば良かったのだが、残念ながら防戦一方を通り越して普通に被弾している(もちろん威力はかなり落ちている)。そろそろ勝負を仕掛けないと今日のご飯抜きが決まりそうだ。


「アイスフィールド」


 ウルフ戦の反省を生かして範囲を絞って地面を凍らせる。


「あまいわ~。」


 氷の下から茨が生えて氷を砕かれる。


「もらった!」

「ん~、惜しいわね~。」

「くっ。」


 先ほどのタイミングで作っていた氷のスライダーを使って速度を上げた攻撃を仕掛けてみたがあっさりと防がれてしまう。が、今がチャンス。


「氷華!」


 氷華に魔力を流し刀身を伸ばす。


「残念でした~。」

「ひゃぁ。」


 腕を捻って投げ飛ばされてしまった。再度体勢を立て直して...。


「は~い、時間切れ~。最後は良かったけど攻撃への転換が遅かったかな~。攻撃の始点の種類を増やしなさいな~。後は魔法を使うときはもっとグワッとして刀を振るうときはシュバッってやればもっといい感じよ~。」

「時間切れ?」


 そんな話は聞いてないが?講評も最初分かりやすかったのにすぐに感覚的な話になってしまっている。


「ええ、ご飯の時間だもの。サクラもおなかが空いたでしょ~?」

「一撃入れるまでご飯抜きなんじゃ?」

「あら~。それはお昼ご飯のことよ~。ご飯はいっぱい食べなくちゃね~。」


 ...。母との修行は身体面だけでなく精神面も鍛えられそうだった。


*****

Tips ブルーム王国

 人族の暮らす王国。魔法技術が発展し、中世の雰囲気を持ちつつも魔道具の存在によって現代社会と同じくらい過ごしやすい。対魔王軍の中心となっており、魔法学園や貴族学園など教育機関も充実している。

次話は明日の17時投稿予定です。


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