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エンジョイ勢のなんでもない日常  作者: SIN


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6 砂漠エリア防衛任務

 倉庫の中に入れていたカタナ「十六夜」を取り出す。

 このカタナは一応切れ味を確保するため手入れはしているが、属性は付けていないし武器の固有スキルもなし、ボス級のモンスターを倒した時に拾ったものをそのまま使ってる代物なので、強化という強化をしていない状態だが、それでも俺の「朧月」より強いというのだから世知辛い。

 さてと……緊急任務開始時間までに、砂漠エリアでクリア出来そうなサブクエストは受けておくか。

 「あの……緊急任務、一緒に行って良い?」

 緊急任務に参加しますか?の問いに”はい”を選択する前、装備品やポーション系の最終確認をしていると、サブクエストを受けていたのだろう藍が”サブクエスト管理者”の所から一直線にこちらに向かってきてそういった。

 パーティーを組んでいようがソロであろうが報酬額に変わりはないし、同じ場所での防衛任務なのだから「1人で拠点を守っててねー」とはならない。

 それなのに、さっきの遺跡ダンジョンのボス部屋といい今といい、藍はあまりソロ行動が好きではないらしい。

 そんなにも強いのに?

 あ、そうか……。

 戦闘不能になった時に復活スクロールや復活の魔法をかけてもらえるからだな。

 藍はエリートだ、戦闘不能になればきっとあぁでもないこぅでもないとか言いながら、周りにいる適当な奴を捕まえて、そいつのせいにするかもしれない。

 そういうのは、見たくない……他の誰でもなく、藍からは聞きたくない。

「さっきの3人はどうした?」

 気分が落ち込む出来事を未然に防ぐため、遠回しに断ろうと思ったんだけど……

「クランで参加希望者が集まって、すでにパーティー編成が終わった後なんだ」

 なんて細々とした声で言われてしまったら、じゃあお互いソロで頑張ろうとは言いにくい。

 しかも恐らく……いや、絶対に俺を手伝うためにダンジョンに残ったことが原因だろうし。

 だったらどうすれば良いのか?

 簡単だ、戦闘不能にさせないようにすれば良い。

 って、大袈裟だな。

 ハートシーフを装備した双銃器使いが、何処をどう攻撃してもどれかしらのモンスターに命中するほどモンスターが襲来する防衛戦で戦闘不能になったなんて聞いたことがない。

「分かった。一緒に行こう」

 パーティー申請を受けるとまたパーティーリーダーが俺に変更される。

 そしていそいそと小走りで倉庫の方へ走っていった藍は、中からマントを取り出して装備した。

 マントは、クランのマークがドーンと真ん中に大きく描かれているタイプではなく、さりげなく小さく描かれてデザイン性のあるタイプ。

 なので衣装や装備品と合わせれば、まるで中世系のゲームによくいるような騎士っぽい感じの着こなしが出来ると思うんだけど……そのマントの色が目がチカチカするほどの真っ赤。

 臙脂色とかワインレッドとか重厚感のある赤ではなく、醤油さしの蓋のような、消火器のような明るい赤色。

 なんとか戦隊のセンターにいそうな「レッド!」っぷりだ。

 クラン員の統制をとるためなのか、クランポイントの使い道としてクランのマークを登録するってものと、クランアクセサリーを作るってのかある。

 うちのクランはレベルがまだ5なので、クランのマークやらアクセサリーは作れないが……作れるようになったところでリーダーは作らないだろうな。

「あ、あんま見んなよ……」

 どうやら、真っ赤なマント姿は恥ずかしいようだ。

 そんなに嫌なら着けなくても良いんじゃないかとは思うんだけど、他所のクラン事情なんだから口出しはしない方が良いんだろう。

 そうでなくとも藍のクランメンバーから明確に地雷扱いを受けているんだから、余計なことを言ってしまったらブラックリスト行きになる可能性が非常に高い。

「緊急事態発令!砂漠エリアにて複数のモンスター反応が確認されました!適正冒険者は防衛拠点1、2の防衛、および前線でのモンスター討伐任務に当たってください!」

 何度目かのアナウンスがあり、時間を確認すれば先頭のモンスターが砂漠エリアに到着する時刻が迫っていた。

 そろそろ現地に移動しておくか。

 サブクエストは受けられるだけ受けたし、急遽復活スクロールも買い足したし、忘れ物はない、な?

「行こうか」

「うん。行こう」

 さて、適当にやるか。

 通信機に来ていた参加しますか?の問いに”はい”を選択すると、通信機を介してのワープが発動し、あっという間に砂漠エリアに到着していた。

 周りを見渡してみるとまだモンスターは来ていないようで、戦闘が始まっているような雰囲気はない。

 集まっている冒険者は双銃器使いやカタナ使いばかりで、その中にはサブ武器として移動用の双小剣、回復魔法を効率よく使うための杖、超遠距離攻撃が可能な長銃を持っていて、時間つぶしなのかなんなのか試し打ちなどをしている。

 そんな俺も久しぶりに装備したカタナの素振りをしている。

 あまりにも使わなさ過ぎて、間合いとか重さとか振り下ろしたときの感覚などすっかり忘れてしまっていたからだ。

 今でこそ俺は双小剣をメインで使っているけど、前世では攻撃の挙動がトリッキーで面白いという理由で……双小剣と双銃器を使っていた。

 この2種の武器には共通した特徴があって……スキルが空中でも出せる上に上昇効果もあったので延々と宙に浮きながら攻撃が出来た。

 方向キーを押して避けボタンを押すと、推した方向に向かって空中でスピンをするし、敵をロックする機能もあったのでロックしてから攻撃スキルを押せば、そこに向かって飛ぶように攻撃をしたり、弾を撃ちこんだりできた……。

 で、現実そんなことができるのかと言われると、出来るわけがない。

 なんとか上昇スキルを覚えたいってことでバク転をしながら双小剣を振るという、とんでもなく危ないことをやり続けてようやく覚えられたスキルが”スピン切り”だ。

 ゲームみたいに完全に空中で攻撃をし続けるには、どんな特訓をすればいいんだ?

 重力を無視するんだから重力系の魔法を練習しまくれば良いのか?

 ヘリコプターの様に風を使って飛ぶという観点から風魔法か?

 風で良いなら大きな剣やカタナを振り回したときの風圧?

 こんな具合で魔法特化の杖やら大剣やらカタナを振り回しながら風を意識して覚えたのが”ソニックスラッシュ”。

 ゲームには、双小剣のスキルとして連撃をしながら衝撃波 を飛ばすってワザがあったから、それになるのでは?ってソニックスラッシュを双小剣で出すため、1日中双小剣で素振りをしたもんだ。

 こうして覚えたのが”五月雨切り”で、ようやくゲーム内のワザを1つ実現できた。

 と、こんな感じで色んな武器を使ってスキルを3つも覚えたんだ、だから大声で言えることがある。

 双小剣最高。

 それぞれの武器種には、一貫してその職が普通に戦闘する際に必要になる固有スキルが付いている。

 例えば敵のどの方向から攻撃しても攻撃力がプラスされるモノとか、誘導弾が撃てるモノ、連射速度がアップするもの、高い攻撃スキルなどなど。

 双小剣だけだぞ?双小剣使いが普通に戦闘をしていて全く必要のない”移動速度アップ”なんてついてるのは、

 愛用の「朧月」には双小剣使いが戦闘で必要なイギビアとエギルビアの2つのスキルが付いているけど、正面からか背面からかって縛りがある。

 大剣とカタナには全方向で強くなるスキルがついてるのに!?

 全方向で強くなる固有武器をつける技術があるのに、何故に双小剣にはデメリットをつくった!?

 もっと酷いのは双小剣「紅焔」の固有スキルの”背水”で、HPとMPがそれぞれ50%以下になると攻撃力が強くなる。

 武器を強化させることでメリットの部分が増えて、デメリットの部分が緩和されると思うだろ?

 違うんだ。メリットの部分は確かに強くなるけどデメリットの部分がとんでもない位に強調されてしまう。

 そこまで双小剣使いが嫌いですかねぇ生産系の諸君よ!

 常に瀕死でいろと?

 しかし、声を大にして言えることがある。

 双小剣最高。

 攻撃じゃないんだ、強さを求めてたらそれこそカタナ使いや双銃器使いになれば良い。

 でも、そうじゃなくて、双小剣には他にはない……楽しさがある。

 それなのに、これからカタナを振り回さなきゃならない。

 カタナの素振りを続けていると、赤いマントを付けた赤いトリの着ぐるみが砂漠エリアにワープしてきて、ちょっとだけ周囲の冒険者がザワついた。

 これから防衛戦だというのに戦いにくい着ぐるみで来るなんて、とかなんとか思われているんだろうけど、誰もそれを口に出さないのは、藍の腰に装備されているハートシーフが目に入ったからだろう。

 双銃器使いには塔の前に立って守ってもらいたいから、そもそも動き回る必要がない。

 キョロキョロとしていた藍は俺を見つけるとトコトコと駆け寄ってきて、当たり前かのように隣に立った。

 俺、今、カタナ振り回してるんだけど……。

「うぉーい、防衛戦参加してんだな」

 モンスターが向こうの方に見えてきた所でリーダーからの通信。

 そうだった、遺跡ダンジョンをクリアしたら戻ると言ったんだっけか。

「緊急性の高い方だし、一応。リーダーは今どこ?」

 俺と藍は拠点1の防衛任務で、2つの塔を守りながらモンスターを倒したり結晶を拾い集めたりすることが主な内容。

 結晶とは、空間に漂っている闇の魔力を結晶のように固めて無効化させたもののこと。

 モンスターを倒した時に必ず発生する闇の魔力を結晶化しておくと魔族系のモンスターが召喚されなくなるし、魔道具のエネルギー源にもなる。

 塔の横には結晶を使って起動できる大砲やらミサイルがあって、モンスターの殲滅が間に合わなくなった時の最終手段として使われるから、それを起動できるほどの結晶をエリア内を走り回って拾い、塔まで持っていかなきゃならない。

 「俺は拠点1の塔の中。見上げてみ」

 見上げてみろというので通信機から視線を外して見上げてみると、塔の窓からこっちに向かって手を振っているリーダーが見えた。

 闇の魔力が集まってきた時、勝手に結晶化されるわけではなく、結晶化させるためのワザを使用する必要がある。

 その塔による範囲効果のあるワザをギルドの職員ではなく冒険者が手動で発動させるんだけど、1回発動させた後はしばらく使えないから、使うタイミングは難しいらしい。

 ここを失敗すると魔族系のモンスターがわんさかと沸いて防衛任務の難易度が異常に上がってしまうので、実はかなり重要なポジションなのだ。

 今回2つある塔の1つをリーダーが担うのなら、安定した任務になるだろう。

 もちろん、モンスターに塔を破壊されなければの話。

 こちらを見下ろしながら手を振るリーダーの手にはポーションがあり、口に運んでいる。

 拭き出させてやろう。

「藍とパーティ組んでる」

 通信の向こうからブゥーと吹き出す音が聞こえ、俺は何処となく満ち足りた気持ちで通信を切った。

 さて、防衛任務の開始だ。

 遠くにモンスターたちが進軍してくる砂ぼこりが見え、途端にカタナ使い達が迎え出る形で討伐に行った。

 その後を追うように回復スキルを持った冒険者が続き、双銃器使い達は打ち逃されたモンスターが塔に到達する前に倒す。

 完璧な前衛と後衛の戦い方で、やることがなくなった俺は結晶を集めるためにウロウロと走り回る。

 こうしてエリア内を走り回っているので、モンスターからターゲットにされることもしばしば。

 そんな時にはカタナを構え、モンスターが間合いに入ったところで攻撃する。

 今装備している「十六夜」に固有スキルはついていなけど、通常攻撃でも強いので問題なくモンスターを倒せる。

 モンスターの中には死んだ後に爆発する個体がいるのだが、そんな奴らは先に頭を落としてしまえば爆発しないという簡単なギミックがある。

 しかしエリートカタナ使いというのは首を落とさすに敵を倒し、その後の大爆発に巻き込まれて戦闘不能になるケースがかなり多い。

 頭を落とせば良いと分かっているのにそれをしない理由は、単純にできないからに尽きる。

 カタナの攻撃力が高いせいで、首を落とす前に敵が死んでしまうからだ。

 こうしてまた1人、爆発に巻き込まれたエリートカタナ使いが俺の足元で戦闘不能になっているわけだが……エリートたちは更に復活スクロールを使うタイミングも独特で、自分が敵に囲まれていようともいちいち我先にとスクロールを使おうとする。

 ○○さんに復活させてもらいました。なんてログが相手の通信機に残るようになってからは特にその傾向が強い。

 スクロールには気絶状態回復と防御力アップの効果があり、スクロールを使われた方はいわゆる無敵状態に1秒か2秒ほどなるものの、使った方にはその加護が一切ない。

 周りを敵に囲まれた状態でスクロールを使うとどうなるのか、

「うわぁぁぁ!」

 あぁいうことになる。

 俗に言うスクロール死だ。

「右の塔守ります」

「状態異常付きの攻撃をすると本体の防御力が上がるので、本体への攻撃は止めてください」

 今度は”指示出し冒険者”たちによる言葉が聞こえてきた。

 右の塔を守れるという確固たる根拠はどこにあるんだ?

 本体の防御力が上がるから攻撃するなって、またイランことを……。

 防御力が上がるといっても高い攻撃力を誇るカタナ使いの前では微々たる差しかないし、本体に攻撃するなといわれて周囲の冒険者がその言葉をどう受け取るのか考えないんだろうか?

 ホラ、もう誰もあのモンスターに攻撃しなくなった。

 それであの”指示だし冒険者”は1人で防御力の上がったモンスターを倒せるのか?

 無理……そうだな。

 あのモンスターは”指示だし冒険者”をしっかりとターゲットにしているから、俺は別の場所から大量に向かってくる中型モンスターの討伐の方に加勢する。

 しかしあまりにも大量に押し寄せてくるものだから相当な数が打ちこぼされ、よりによって右の塔を守ると言い切った”指示だし冒険者”の方に向かっていく。

 あー……右を守ると通信機を使って大々的に宣言をしたせいで、右の塔前にはあの”指示だし冒険者”1人しかいないじゃないか。

 助けに行きませんけど。

 守ると豪語したんだ、助太刀するのは寧ろ失礼だろ?

 とはいえ、それで本当に塔が落とされでもしたら一大事なんだけど、ここで塔を無事に済ませればあの”指示だし冒険者”は次の防衛戦でもイランことを大声で宣言するんだろう。

 なんなら「自分のお陰で塔が守れたのだ!」くらいのことは言いそうだ。

 まぁ、右の塔の中には結晶任務にあたる冒険者が確実にいるわけだから、その冒険者を助けると思えば全力疾走してモンスターを倒すことも惜しくはないか。

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