表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天秤のアムリタ  作者: ぐぅぜん
はじまり
7/35

レディー(2)

「――女の子っ!?」


 可憐な金髪の女性が光の中から召喚された。女性の後方の召喚ゲートの輝きが、後光の様な神秘的な演出を醸し出す。

 その魔法の様な輝きが、彼女の綺麗な長髪を煌めく。その金色の髪は、頭の後ろで纏められ、風に乗る。


 整った顔立ち、西洋風の軽鎧姿で、腰に刀。銀色のプレートメイルが、豊満な胸を押さえつけている。


 召喚ゲートから飛び出した影響か。彼女は、地面に足をつけていない。鉄のブーツの爪先が、地面と並行して宙を移動する。


 彼女の体が、シンに向かって、勢い良く飛び込んだ。


 シンは、バランスを崩しながらも、彼女の腰に手を回し、受け止める。そして、彼女も、シンに抱きつく形で、何とか無事に着地した。

 お互いの顔が、急接近した状態で、見つめ合う。


 その場で固まり、お互いが動けない。


 数秒間の沈黙――。



 シンは、到頭恥ずかしくなり、堪らず声を掛ける。


「だっだいじょうぶ?」


「お、おしり……。」


 シンは、何の事か分からずに聞き返す。


「おしり?」


 ふと、右腕の感覚を辿ると、自分の右手が、彼女の尻を鷲掴みにしている事に気がついた。


「わわわっ!ごめん!」


 シンは、咄嗟に彼女から離れ、両手を上げて弁解した。


「いえ。突然でしたし、大丈夫です……。」と、彼女は、シンと目を合わせられず、恥ずかしそうに顔を逸らした。


 シンは、気まずい中、ドギマギと自己紹介をする。


「おっおれっ。ぼく?わたしは、光先シン。よろしく、オネガイシヤス。」


 シンが、ぎこちなく頭を掻くと、彼女は笑った。


「そんなに畏まらなくても良いですよ。私は、ホノカ。あなたのバディーです。よろしくお願いします、シン。」と、ホノカは、丁寧にお辞儀をした。


 シンは、まだ心が落ち着かず、目を泳がせる。


「女の子が出て来るなんて、予想外だよ!美人だし……緊張するな!あはははー。」


「……美人?」と、ホノカは、疑問に思ったようだ。


「てか、ナビ子さん。急に黙るじゃん。」


 シンは、慌てて空を仰いだ。


《空気を読む。と、言う事は、とても大事な事だと認識しております。》


「いやいや。何でだよ。」


 シンは、緊張を紛らわせる為に、わざと困った素振りをした。――おかしなAIだな。



 少し間を開けて、ナビ子さんが提案する。


《次は、武器の支給を行いますが、どうなさいますか?》


「それじゃあ、早速、お願いするよ。」


 シンは、ホノカを視界に入れない様にして、空に向かって言った。気を紛らわせて、心を落ち着ける作戦だ。

 バディー召喚で、人間の女性が召喚されるなど、聞いていない。シンは、てっきり、小さなドラゴンとか、もふもふした亜人なんかを想像していた。


(他の参加者は、どうだったのかな。これじゃ、やり辛いったらありゃしないぞ……もしかして、バグじゃないだろうな?)


 シンは、ホノカを横目で見た。


 ホノカがシンの視線に気づいて微笑むと、シンは、パッと視線を空に戻した。――運営さ〜ん。スタッフ〜?


 シンが(GM)に祈っていると、真っ白な部屋に光が走った。――神様!?(*GM…ゲームマスターの略。)



 一直線に部屋の中央を駆け抜けた光が、形を形成して行く。その光は、キラキラと、光学的な輝きを見せる。

 すると、沢山の武器の形をしたホログラムが、綺麗に一列となって現れた。ずらりと、並んだ武器は、端まで長い距離がある。


《この中からご選択下さい。武器によっては、盾や矢筒などのオプションが付属される物もございます。これは、初回だけの特別支給です。今後、新たに支給を行なったり、破損、紛失の補填は、ございません。》


「この中からって……目茶苦茶あるじゃないか。」


 シンは、現れた武器の数々を見て、途方に暮れた。

 小ぶりな剣から大剣まで、あらゆる形状の剣に加え、槍や弓、ハンマーや杖といった様々な種類の武器たちが、ショーケースに飾られているみたいにして、宙に浮いている。


《共通オプションとして、ナイフ、水筒、小袋、タオル、スコップ、そして、それらを収納する為の背嚢が、支給されます。》


 シンは、簡単に言うナビ子さんに困り果てた。

 武器を選ぶ事は、これから始めるゲームプレイにとって、かなり()()()()()だ。これは、ただの道具と言う訳ではない。自身のプレイスタイルが、武器一つで大きく変化するのだ。


 戦闘方法は、勿論。立ち回りでさえも変わってくる。剣を持つ人と弓を持つ人では、ただの道を行くだけでも、道順も違えば、索敵方法も違う。

 大袈裟に言うと、弓を持った人は、態々水中を進まない。迂回が出来るのならば、陸の道を行くはずだ。

 何をするにしても、その武器の長所を活かした行動を取る事になるだろう。


 そんな重大な事を、パッとは、決められない。シンは、ホノカに助けを求めることにした。


「ホノカさんは、どれが良いと思います?」


「ホノカで良いですよ。」


 シンは、ホノカに言われて言い直す。彼女も、それを待っている様子だ。


「ホノカは、どれが良いと思う?」


 すると、ホノカは、腰の刀を、シンに見せてから答える。


「私には、この刀があるように。シンは、シンが自分の命を預けられる武器(相棒)を、自分で見つけないと。」


 ホノカの刀の鞘は、光沢があり、長くて格好が良い。唾も柄も、しっかりとした日本刀だ。


「ん〜。こういうの。時間掛けちゃうタイプなんだよなぁ。決めて貰えれば、サクッと行く派なんだけど?」


 シンは、眉を上げ、期待した表情でホノカを見るも、ホノカは、断固とした態度を取る。


「いくらでも、待ちます。」


 彼女は、ドンッと、地面に刀を突き立てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ