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シンは、スマホの画面を指先で叩く。
「テストプレイ、始める前から既に面白い。っと……。」
有名人を参加させる事で、自然と宣伝となる。――ここの会社も企業だよな。
色々なジャンルの著名人を集めた理由も、そういうことなのだろう。シンも参加するのだから、少しでも盛り上げたい。
基本SNSは、ほったらかしにするタイプで、まめな方ではない。調子の良い時だけ投稿する気分屋だ。
しかし、最近は、自分の好きなインフルエンサーが、やってくれたら嬉しい事を、自分もやろうと、出来るだけSNSを稼働させている。
それは、自分に注目してくれている存在に、気がついたからだ。
「他の参加者も、結構上げてんじゃん。」
『HOT!』と、書かれてあるページは、今回の参加者の投稿でいっぱいだった。
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『みなさん、今日からしばらく、夢の世界に行ってきます(ハート)』の一文に、可愛らしい自撮りを載せたアイドル。
カプセルの中から飛び出す瞬間を収めた配信者。
人気俳優と肩を組んで記念撮影している大学教授。
何もない食堂にがっかりしているイタリアンシェフ。
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SNSを、ぱっと見ただけでも、凄い事が起こっていると感じ取れる。
シンは、その中の一人に、自分がいることを忘れかけていた。自分の投稿に、早速コメントが書き込まれた。
『荒らシンがんばれ!』 『だっさw』 『シンさん応援してます。』 『えwおまえいんのw』 『筋肉ないなった。』 『まじか、参加してるんだ!』 『かわいい。』
「……か、かわいい?は、置いといて。ダンも参加してるのか。」と、コメントのハンドルネームを確認して呟いた。
ダンは、高校時代の同級生で、シンにとって数少ないゲーム友達である。彼は、プロゲーミングチームに所属するプロゲーマーだ。
参加者に、誰一人として知り合いが居なかったシンにとって、思いもよらない朗報だ。
それから、直ぐにダンからDMが届いた。シンは、届いたDMに返信する。
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ダン《シンちゃん!参加してるなら教えてよ!》
シン《いやいや、お前もな!》
ダン《何階?ちな、僕は、22だよ。》
シン《おれ24。正直、知り合いが居なくて助かった。そっちはどう?》
ダン《事務所の人が何人かと、別のチームの知り合いがいるぐらいかな。始まったら向こうで合流しようよ。》
シン《おk。事務所の人とは、集まらなくて良いのか?》
ダン《集合とか掛かってないし。初めは、みんな好きにやるっしょ。準備しなきゃだから、また後でね。》
シン《ダンも、スーツの写真上げろよ^^》
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それから、シンは、荷物の整理を始めた。仲間を見つけ、一旦、ぼっちを免れた事で、テンションが上がった。テストプレイが、より一層楽しみになってきた。
キャリーケースを開け、中からタオルや着替えなどを出し、棚にしまう。歯ブラシやスマホの充電ケーブル。ノートPCも持って来たが、使うことは無さそうだ。
忘れ物が無いかを確認しつつ、整理を終わらせて、ペットボトルの水を飲む。
すると、丁度良いタイミングで、アナウンスが流れた。
「テストプレイ開始時刻、30分前となりました。参加者の皆様は、各お部屋にて待機をお願い致します。係員が順に訪れますので、係員の指示に従い、起動準備を行なって下さい――。」
◇ ◇ ◇ ◇
人々が眠りに就き、楽しい夢を期待する様に、人間の意識だけをゲームの世界に投影する最新のフルダイブ技術。それを可能とした筐体、フルダイブ型仮想現実シミュレーター『VR-fog』。
この先日発表された『霧』と呼ばれる就寝タイプのVRゲーム機は、ゲームだけでなく、医療や遠隔でのロボットの操作など、あらゆる商用利用を、早くも期待されている。
とは言えど、発表されたばかりで、実際に体験した者は、数少ない関係者のみとなっている。その情報は、まだ、マスコミの妄想の範疇だ。人々は、開発者側から知らされた数少ない情報だけを元に、楽しそうに夢を膨らませていた。
『アムリタ』は、その『筐体』を、初めて公の場で使用する初のゲームとなる。三次元空間に創られた広大なフィールドを探索し、自由気ままに冒険をするサバイバルアクションシュミレーションゲームだ。
プレイヤーは、自然の豊かな星『アムリタ』に降り立ち、相棒と呼ばれるサポート役と一緒に冒険する。
山脈、森林、砂漠、湖――。
アムリタの大自然の中には、凶暴な野生の生き物が沢山生息する。
他のプレイヤーと協力するも良し、ソロを突き通すも良し。
未開の地を攻略し、その手で人々の生活圏を増やしていく。というのが、このゲームの醍醐味だ。時には、古代人の遺跡が見つかるといったトレジャー要素もあるらしいが……。
ゲームとしては、そこまで目新しい要素も無く、何かをやり遂げるといったクリア目標も特に無い。人々の心を突き動かすのは、フルダイブと言う新感覚を逸早く堪能したい。という想いだけだった。
それでも、このサンドボックスと呼ばれるゲームジャンルに似た終わりの無いゲームを、最初に持って来たのは、運営の経営手腕と言ったところだろうか。
いつまでアムリタと言う仮想世界が残り続けるのかは謎だが、このアムリタで、『物』や『思い出』といった物を作ると、それが破壊されるまでの間は、アムリタにずっと残り続けるという事だ。
テストプレイ終了後に、アムリタに継続してログインし続ける者もいれば、里帰りの如く、偶に戻って来る者も現れるだろう。自然と、リピーターが獲得出来るという訳だ。
それに、もしかすると、有名人の聖地巡礼とか言って、ファンが押し寄せるかもしれない。
同じ世界にログイン出来るのだとすれば、だが……。
◇ ◇ ◇ ◇




