表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天秤のアムリタ  作者: ぐぅぜん
はじまり
4/35

ログイン(3)

 シンは、スマホの画面を指先で叩く。


「テストプレイ、始める前から既に面白い。っと……。」


 有名人を参加させる事で、自然と宣伝となる。――ここの会社も企業だよな。


 色々なジャンルの著名人を集めた理由も、()()()()()()なのだろう。シンも参加するのだから、少しでも盛り上げたい。


 基本SNSは、ほったらかしにするタイプで、まめな方ではない。調子の良い時だけ投稿する気分屋だ。

 しかし、最近は、自分の好きなインフルエンサーが、やってくれたら嬉しい事を、自分もやろうと、出来るだけSNSを稼働させている。


 それは、自分に注目してくれている存在に、気がついたからだ。


「他の参加者も、結構上げてんじゃん。」


 『HOT!』と、書かれてあるページは、今回の参加者の投稿でいっぱいだった。


+

 『みなさん、今日からしばらく、夢の世界に行ってきます(ハート)』の一文に、可愛らしい自撮りを載せたアイドル。


 カプセルの中から飛び出す瞬間を収めた配信者。


 人気俳優と肩を組んで記念撮影している大学教授。


 何もない食堂にがっかりしているイタリアンシェフ。

+


 SNSを、ぱっと見ただけでも、凄い事が起こっていると感じ取れる。

 シンは、その中の一人に、自分がいることを忘れかけていた。自分の投稿に、早速コメントが書き込まれた。



 『荒らシンがんばれ!』 『だっさw』 『シンさん応援してます。』 『えwおまえいんのw』 『筋肉ないなった。』 『まじか、参加してるんだ!』 『かわいい。』



「……か、かわいい?は、置いといて。ダンも参加してるのか。」と、コメントのハンドルネームを確認して呟いた。


 ダンは、高校時代の同級生で、シンにとって数少ないゲーム友達である。彼は、プロゲーミングチームに所属するプロゲーマーだ。

 参加者に、誰一人として知り合いが居なかったシンにとって、思いもよらない朗報だ。


 それから、直ぐにダンからDM(ダイレクトメール)が届いた。シンは、届いたDMに返信する。


+

 ダン《シンちゃん!参加してるなら教えてよ!》

 シン《いやいや、お前もな!》

 ダン《何階?ちな、僕は、22だよ。》

 シン《おれ24。正直、知り合いが居なくて助かった。そっちはどう?》

 ダン《事務所の人が何人かと、別のチーム(ベッチ)の知り合いがいるぐらいかな。始まったら向こうで合流しようよ。》

 シン《おk。事務所の人とは、集まらなくて良いのか?》

 ダン《集合とか掛かってないし。初めは、みんな好きにやるっしょ。準備しなきゃだから、また後でね。》

 シン《ダンも、スーツの写真上げろよ^^》

+


 それから、シンは、荷物の整理を始めた。仲間を見つけ、一旦、ぼっちを免れた事で、テンションが上がった。テストプレイが、より一層楽しみになってきた。


 キャリーケースを開け、中からタオルや着替えなどを出し、棚にしまう。歯ブラシやスマホの充電ケーブル。ノートPCも持って来たが、使うことは無さそうだ。

 忘れ物が無いかを確認しつつ、整理を終わらせて、ペットボトルの水を飲む。


 すると、丁度良いタイミングで、アナウンスが流れた。


「テストプレイ開始時刻、30分前となりました。参加者の皆様は、各お部屋にて待機をお願い致します。係員が順に訪れますので、係員の指示に従い、起動準備を行なって下さい――。」



     ◇ ◇ ◇ ◇



 人々が眠りに就き、楽しい夢を期待する様に、人間の意識だけをゲームの世界に投影する最新のフルダイブ技術。それを可能とした筐体、フルダイブ型仮想現実シミュレーター『VR-fog』。



 この先日発表された『(フォグ)』と呼ばれる就寝タイプのVRゲーム機(コンソール)は、ゲームだけでなく、医療や遠隔でのロボットの操作など、あらゆる商用利用を、早くも期待されている。

 とは言えど、発表されたばかりで、実際に体験した者は、数少ない関係者のみとなっている。その情報(ネタ)は、まだ、マスコミの妄想の範疇だ。人々は、開発者側から知らされた数少ない情報(ネタ)だけを元に、楽しそうに夢を膨らませていた。



 『アムリタ』は、その『筐体(フォグ)』を、初めて公の場で使用する初のゲームとなる。三次元(3D)空間に創られた広大なフィールドを探索し、自由気ままに冒険をするサバイバルアクションシュミレーションゲームだ。


 プレイヤーは、自然の豊かな星『アムリタ』に降り立ち、相棒(バディー)と呼ばれるサポート役と一緒に冒険する。


 山脈、森林、砂漠、湖――。

 アムリタの大自然の中には、凶暴な野生の生き物が沢山生息する。

 他のプレイヤーと協力するも良し、ソロを突き通すも良し。

 未開の地を攻略し、その手で人々の生活圏を増やしていく。というのが、このゲームの醍醐味だ。時には、古代人の遺跡が見つかるといったトレジャー要素もあるらしいが……。


 ゲームとしては、そこまで目新しい要素も無く、何かをやり遂げるといったクリア目標も特に無い。人々の心を突き動かすのは、()()()()()と言う新感覚を逸早く堪能したい。という想いだけだった。



 それでも、このサンドボックスと呼ばれるゲームジャンルに似た()()()()()()()()()を、最初に持って来たのは、運営の経営手腕と言ったところだろうか。


 いつまでアムリタと言う仮想世界が残り続けるのかは謎だが、このアムリタで、『物』や『思い出』といった物を作ると、それが破壊されるまでの間は、アムリタにずっと残り続けるという事だ。

 テストプレイ終了後に、アムリタに継続してログインし続ける者もいれば、里帰りの如く、偶に戻って来る者も現れるだろう。自然と、リピーターが獲得出来るという訳だ。


 それに、もしかすると、有名人の聖地巡礼とか言って、ファンが押し寄せるかもしれない。


 同じ世界にログイン出来るのだとすれば、だが……。



     ◇ ◇ ◇ ◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ