バンケット(5)
シンは、トールから受け取った皿を、自分の正面に置いた。そして、立ち昇る湯気を掻き分け、柔らかい肉にフォークを突き刺す。ジュワっと、脂が溢れ出し、フォークが曲がってしまいそうなぐらい重い。
「これ、トールさんが最後に仕留めた奴だよね。がぶっ……うんめぇ〜。」
シンは、天に昇った。
「流石、ラントールって、感じだったよ。あんな技、どうやったんだ?」
カゲミチは、トールから肉の載った皿を、受け取りつつ聞いた。
「トールマンな。」っと、トールは、即座につっこんだ。
ダンが、テーブルの上にいるキールを見て言う。
「キールと一緒に、空も飛べるんですよ。」
キールは、コップに頭(?)を突っ込んで、エールに浸りながら飲んでいる。
「は?まじかよ。」
カゲミチは、目を点にした。
「俺も、トールさんに聞きたかったとこだ。絆力のコツとかあったら、是非教えて欲しい。」
マモルにそう頼まれ、トールは頭を掻いた。
「なんだか照れ臭いな!っはっは。俺は、頭が良くないからな。理屈とかじゃないんだわ。フィーリング?っつーか、なんつーか……。」
そこで、トールが、「閃いた!」と、いう顔をして、手を叩いた。
パンッ。
「イメージだ!イメージ!」と、そう言って、大きな人差し指を前に突き出した。
「想像力ですか?」
ダンは、首を傾げて考えた。
トールが、コップから這い出たキールの背中を叩く。
「こいつと俺なら、こういうことが出来そうだ。じゃあ、こういうのを、やってみるか?出来なきゃこうだ!ってなあ、キール。」
キールは、エールに酔ったのか、トールの平手の衝撃で、ふらふらとしながら、布の体でグッドサインを作り上げた。
「んで、出来ちまっただけのことだわな!っはっは。」
トールは、腰に手を当て、最後ににんまり笑って見せた。
カゲミチは、それを聞いて頭を抱えた。
「はぁ〜。なるほど……。」
理屈じゃないと聞いて、がっかりしたようだ。
「直感を大事にしろって、ことですかね?」
ナッチは、テーブルに肘を突いて、ジビエを眺めて言った。頬を染めて、夢見心地の様に、気分が良さそうだ。
「バディーと向き合うのが、大切なんだろう。何が出来るか、俺たちも考えてみるか。」
マモルは、ケシルをじっと見ている。
「ケロー……スー……ケロー……。」
ケシルは、大きな腹を抱えて、気持ち良さそうに眠っていた。
「想像力ねぇ。」
シンは、肉を頬張り、途方に暮れていた。
「まだ、初日だし。諦めるには、早いよ。出来ない僕が言うのもなんだけど。美味しい物も食べたし、これから頑張ろうよ。」
ダンは、やる気に満ち溢れていた。
シンは、そんなダンとは、対照的な態度を取る。
「んー。まあ、ぼちぼちかな。な?ホノカ。」
ホノカは、膨らんだ腹を摩って、気を抜いていた。シンに話を振られ、もたれ掛けていた椅子から跳び起きる。
「え!あ、はい。そうですね。」
シンとダンは、ホノカを笑って話を続ける。
「シンちゃんは、この後、何するの?」
「一旦、ログアウトしてみようかな。体が、どうなっているか、気になるし。どういった感じなのか、試して置かないと。そう言うダンは、どうするんだ?」
シンは、手持ち無沙汰に、皿の中をフォークでつつく。そろそろシンも、腹がいっぱいだった。
「町を巡って、金策と、カブトと修行してみようかな。」
ダンは、カブトの頭を、指でなぞる様にして掻いた。
カブトは、小皿に入れたエールを、無心に舐め続けていた。
「金策って、掲示板とかじゃ駄目?」
流石のダンも、シンのこの台詞には、絶句した。
「シンちゃん……適当に投稿すれば、お金貰えると思ってるでしょ。そもそも、幾らになるか分かんないし、まともな収入源は、必要だよ。」と、シンを諭す様にして言った。
「え?そうなの?適当にコメントしてれば、いいものだと……。」
ドッと、笑いが起こる。
マモルが、真面目に助言をする。
「このゲームは、アムリタの開拓と復興が、目的みたいだからな。何かと出来る事が、あるんじゃないか?これだけ現実的なんだ。星の開拓なんて、そうパパッと、終わるものではないだろう。」
マモルが気軽に発した言葉が、シンの頭に響いた。
『パパッと、終わるものではないだろう。』
シンは、所詮ゲームだと思い、簡単な事だと、頭の中でふわっとイメージしていた。しかし、マモルに言われて、それが思い込みだと言う事に気がついた。
そんな簡単に終わる物を、態々、人を集めてテストプレイをさせる訳がない。テーマパークのアトラクションとかなら、話は別だが、このアムリタというゲームは、一日や二日などではない。長期間のプレイを、想定しているものだ。
それに、マモルが言う様に、規模が星ともなると、途方も無い話だ。五年、十年。それくらい先を、運営が見越している可能性は、十分にあった。
それから、ナッチが眠い目を擦りながら言う。
「北の街、双璧の渓谷に行けば、稼ぎには、困らないと思いますよ。話に聞くと、私たちの想像より、かなり大きな街みたいです。」
「へー。北の街か。なるほどねー。」
思っていたより、みんな、色々と考えている事があるようだ。人によって、主観や仕入れた情報が違うので、シンは、聞いているだけでも面白かった。




