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天秤のアムリタ  作者: ぐぅぜん
はじまり
20/35

バンケット(4)

 大皿にキャベツなどの野菜がたんまりと盛られ、その上に、とろりとした輪切りのお肉が湯気を立てて載っている。


「お〜。」と、全員が唸り、「前菜ってヤツか?」と、トールは、口からヨダレを垂らす。


 ホノカは、「いい匂い。」と、可愛い鼻を、ひくひくとさせて、味を想像していた。


 各々が皿に取り分け、食事を始める。バディーの為に、皿に取り分けている者もいる。


「シャキシャキ、とろとろで旨いな。」


 カゲミチは、口の中を一杯にして同意を求めた。


「この香辛料なんだろう。」と、シンは、もぐもぐと、噛み締めながら上を向いて想像した。


 次に、大きな唐揚げとポテトサラダ。

 そして、てんこ盛りのパンとスープがやって来る。


「ヤバいな……現実より美味そうで、旨い!」


 トールの舌が唸った。


「このスープも美味しいですよ。出汁は、何だろう?」と、ナッチは、笑顔でスープの入ったボールを掲げた。


 ダンは、カブトの皿にエールを注ぎながら、雰囲気に酔っていた。


「ファンタジーって感じがしますよね〜。あっ。店員さん。こんなにいっぱい良いんですか?」


 ボルト用に、小さなストローの刺さった丸い果実を運んで来た店員に聞いた。大きなテーブルの上は、沢山の料理で埋め尽くされている。


「私は、ここのオーナーのジュリ。お代は、バーチルさんから頂いているから、たんまりお食べ。」


「えええ!?そうなんですか!?」


 ダンが立ち上がる程に驚いた。テーブルの上の皿が揺れた。

 トールが、漫画肉を食い千切る。


「今度、お礼しなきゃだな。」


「そうですね。」


 ナッチは、小皿に盛ったサラダを床に置き、トールを見上げて言った。ジビエは、嬉しそうに、そのサラダを貪り始める。


 ボルトが、ストローを吸って、ピカピカと七色に光り始めた。

 それを確認したジュリは、カウンターに戻って行く。


「まだまだ持って来るから、テーブルを空けといておくれよ。」


「「ふぁい!」」と、シンとカゲミチが口を一杯にして、同時に返事をした。


 ナッチが、椅子に座り直して染み染みと言う。


「なんか、黙々と食べちゃいますね。」


「さっきまで、誰もいなかったのに、客が増えて来たな。」


 カゲミチが行儀悪くフォークを天井に向け、店内を見渡した。

 彼の言う通り、店内の客席が埋まりつつある。今も、キョロキョロと店内の様子を窺いながら、店に入って来るテストプレイヤーがいる。


 それについて、シンは、知ったような口振りをする。


「そりゃ、広場ってか、町中に、この美味しそうな料理の匂いが漂っていたら……気になって来ちゃうでしょ。」


「なるほどな。広場にも人が増えて来たみたいだ。強ち間違いじゃないかもな。」


 マモルは、窓の外を眺めて納得した。

 閑古鳥の鳴いていた広場には、多くのテストプレイヤーが戻って来ていた。店から漂う匂いに釣られ、全員が、昼食の話で盛り上がっているに違いない。


「そう言えば、三人は、北に向かってたみたいだけど、町に戻っていいの?」


 シンが思い出したように聞いた。


「ああ。しばらくこの町にいる事にするよ。」


 マモルは、フォークとナイフで丁寧に食べ、皿を空にすると、皿を重ねてテーブルに空きを作った。

 カゲミチは、額に手を当てて、嫌な事を思い出したかの様に顔を振る。


「おれもだ。修行しないとな。」


「うん、うん。」と、ナッチは、大きな鼻を揺らし、顔を縦に振った。


 そこで、ホノカが、珍しく話に入ってきた。


「北の街に向かった人は、大丈夫でしょうか?」と、シンに顔を向けて聞いてくる。


「確かに……あんなのが、わんさかいたら……。」


 シンは、想像しただけでゾッとした。

 ダンが左腕をテーブルに乗せて、端末を開き始めた。


「もしかすると、掲示板か、アムリタ通信(記事の投稿アプリ)に、近況が書かれてるかも。」


「そういや、しばらく端末見てねーな。」


 カゲミチも口休めに、端末を開き始めた。


「まだ、戦闘中なんじゃないか?」


 マモルも端末を覗いていた。

 トールだけが、端末に興味を示さず、ムシャムシャと、料理を食べ続けている。


 そこに、ジュリが、巨大な肉の載った皿を、逞しい腕に抱えて運んで来た。店内の客たちが目を丸くして、その様子を目で追った。


「ほーら。とっておきが来たわよ!」


 シンたちは、ジュリの持つ皿の大きさに驚愕しながらも、急いでテーブルに空きを作り始める。マモルは、何枚も重なった空の皿を、両手に抱えて立ち上がった。


 ドンッ。と、テーブルを揺らして、皿が置かれた。丸々とした大きな肉が、縦にスライスされて並んでおり、タレと香辛料が、ジューシーな脂と共に上から滴っている。

 ジューっと、鳴る音と香ばしい匂いに、店内の人達も、ヨダレを我慢して見守った。


「やべぇ!食いきれるか、これ?」


 カゲミチは、肉の大きさを見て叫んだ。


「でっか!うまそっ!」


 シンは、ヨダレが止まらない。

 ダンも肉を見て、目を輝かせている。


「こんな分厚い肉に噛み付くとか、やった事ないよ!夢みたいだね!」


「ここは、夢みたいなもんだろ?がっはっは。そうだな。まずは、齧り付いてみるのもありだな!っはっは。」


 トールは、肉の皿に付いてきた大きなナイフで、切り分け始めた。そのままでは、取り皿に載せきれない程に大きい。

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