バンケット(4)
大皿にキャベツなどの野菜がたんまりと盛られ、その上に、とろりとした輪切りのお肉が湯気を立てて載っている。
「お〜。」と、全員が唸り、「前菜ってヤツか?」と、トールは、口からヨダレを垂らす。
ホノカは、「いい匂い。」と、可愛い鼻を、ひくひくとさせて、味を想像していた。
各々が皿に取り分け、食事を始める。バディーの為に、皿に取り分けている者もいる。
「シャキシャキ、とろとろで旨いな。」
カゲミチは、口の中を一杯にして同意を求めた。
「この香辛料なんだろう。」と、シンは、もぐもぐと、噛み締めながら上を向いて想像した。
次に、大きな唐揚げとポテトサラダ。
そして、てんこ盛りのパンとスープがやって来る。
「ヤバいな……現実より美味そうで、旨い!」
トールの舌が唸った。
「このスープも美味しいですよ。出汁は、何だろう?」と、ナッチは、笑顔でスープの入ったボールを掲げた。
ダンは、カブトの皿にエールを注ぎながら、雰囲気に酔っていた。
「ファンタジーって感じがしますよね〜。あっ。店員さん。こんなにいっぱい良いんですか?」
ボルト用に、小さなストローの刺さった丸い果実を運んで来た店員に聞いた。大きなテーブルの上は、沢山の料理で埋め尽くされている。
「私は、ここのオーナーのジュリ。お代は、バーチルさんから頂いているから、たんまりお食べ。」
「えええ!?そうなんですか!?」
ダンが立ち上がる程に驚いた。テーブルの上の皿が揺れた。
トールが、漫画肉を食い千切る。
「今度、お礼しなきゃだな。」
「そうですね。」
ナッチは、小皿に盛ったサラダを床に置き、トールを見上げて言った。ジビエは、嬉しそうに、そのサラダを貪り始める。
ボルトが、ストローを吸って、ピカピカと七色に光り始めた。
それを確認したジュリは、カウンターに戻って行く。
「まだまだ持って来るから、テーブルを空けといておくれよ。」
「「ふぁい!」」と、シンとカゲミチが口を一杯にして、同時に返事をした。
ナッチが、椅子に座り直して染み染みと言う。
「なんか、黙々と食べちゃいますね。」
「さっきまで、誰もいなかったのに、客が増えて来たな。」
カゲミチが行儀悪くフォークを天井に向け、店内を見渡した。
彼の言う通り、店内の客席が埋まりつつある。今も、キョロキョロと店内の様子を窺いながら、店に入って来るテストプレイヤーがいる。
それについて、シンは、知ったような口振りをする。
「そりゃ、広場ってか、町中に、この美味しそうな料理の匂いが漂っていたら……気になって来ちゃうでしょ。」
「なるほどな。広場にも人が増えて来たみたいだ。強ち間違いじゃないかもな。」
マモルは、窓の外を眺めて納得した。
閑古鳥の鳴いていた広場には、多くのテストプレイヤーが戻って来ていた。店から漂う匂いに釣られ、全員が、昼食の話で盛り上がっているに違いない。
「そう言えば、三人は、北に向かってたみたいだけど、町に戻っていいの?」
シンが思い出したように聞いた。
「ああ。しばらくこの町にいる事にするよ。」
マモルは、フォークとナイフで丁寧に食べ、皿を空にすると、皿を重ねてテーブルに空きを作った。
カゲミチは、額に手を当てて、嫌な事を思い出したかの様に顔を振る。
「おれもだ。修行しないとな。」
「うん、うん。」と、ナッチは、大きな鼻を揺らし、顔を縦に振った。
そこで、ホノカが、珍しく話に入ってきた。
「北の街に向かった人は、大丈夫でしょうか?」と、シンに顔を向けて聞いてくる。
「確かに……あんなのが、わんさかいたら……。」
シンは、想像しただけでゾッとした。
ダンが左腕をテーブルに乗せて、端末を開き始めた。
「もしかすると、掲示板か、アムリタ通信(記事の投稿アプリ)に、近況が書かれてるかも。」
「そういや、しばらく端末見てねーな。」
カゲミチも口休めに、端末を開き始めた。
「まだ、戦闘中なんじゃないか?」
マモルも端末を覗いていた。
トールだけが、端末に興味を示さず、ムシャムシャと、料理を食べ続けている。
そこに、ジュリが、巨大な肉の載った皿を、逞しい腕に抱えて運んで来た。店内の客たちが目を丸くして、その様子を目で追った。
「ほーら。とっておきが来たわよ!」
シンたちは、ジュリの持つ皿の大きさに驚愕しながらも、急いでテーブルに空きを作り始める。マモルは、何枚も重なった空の皿を、両手に抱えて立ち上がった。
ドンッ。と、テーブルを揺らして、皿が置かれた。丸々とした大きな肉が、縦にスライスされて並んでおり、タレと香辛料が、ジューシーな脂と共に上から滴っている。
ジューっと、鳴る音と香ばしい匂いに、店内の人達も、ヨダレを我慢して見守った。
「やべぇ!食いきれるか、これ?」
カゲミチは、肉の大きさを見て叫んだ。
「でっか!うまそっ!」
シンは、ヨダレが止まらない。
ダンも肉を見て、目を輝かせている。
「こんな分厚い肉に噛み付くとか、やった事ないよ!夢みたいだね!」
「ここは、夢みたいなもんだろ?がっはっは。そうだな。まずは、齧り付いてみるのもありだな!っはっは。」
トールは、肉の皿に付いてきた大きなナイフで、切り分け始めた。そのままでは、取り皿に載せきれない程に大きい。




