ミートアップ(4)
ホノカは、地面に着地すると、勢いを殺す為に、ぐるりと、一回転して体勢を整える。綺麗な髪が後を追う様に流れ、刀が暴れない様に片手を添えた。
「凄いよ!今の見た?ゲームみたいに飛んだよね!ゲームなんだけど!」と、ダンが興奮して、バタバタ、キョロキョロとし始めた。
驚くのも当然だ。2m近く跳んだと思えば、また更に2m上昇したのだ。二人の想像の範疇を超えてしまっていた。
「このくらいなら、二人にも出来ると思いますよ。」
ホノカは、平然と言ってのける。
「いやいや、ホノカさん?」
そんな簡単に出来るのなら無理など無いと、シンは両手を振って否定した。
「ホノカでいいって言いましたよね。」
ホノカは、怒ってシンに顔を突き出した。
シンは、突き出された顔に対して、体を引いて顔を背けた。正直なところ、ホノカが美人で照れ臭かったのだ。
それに、初対面の女の子を相手に、馴れ馴れしく話し掛けるのも、如何なものかと考えてしまっていた。
同じバディーでも、カブトには、気さくに話し掛けていた。だが、良く考えると、角があるからと言って、カブトがオスだとは、限らない。可愛い見た目をしているが、『設定年齢』が凄く高い可能性だってある。
これからバディーたちには、ざっくばらんに対応するのが一番だと、シンは、心の中でそう決めた。(見た目で判断するのも、どうかと思うが)見た目で分からないのだから、仕方がない。
「ホノカ。人にはさ、向き不向きってものが、あるんだよ。」
シンは、腕を組んで偉そうに言い直した。
すると、ホノカは、全身の力が抜けた様に腕を降ろした。
「はぁ……シン。向き不向きって言うのは……。」
ホノカは、腰を低くして、刀に手を添え――居合の構えを取ると、一気に刀を引き抜いた。
「――こういう事を、言うのです!」
ホノカが、腕を振り切った勢いで、爽やかな風が駆け抜ける。その優しい風は、草花の葉を泳がせ、シンの髪をも掻き上げた。
ホノカは、風が通り過ぎたところで、刀をカチッと、鳴らして鞘に納めた。
音が鳴ると同時に、空中に漂う複数枚の木の葉が、パッと、真っ二つに斬れた。倍の数となった木の葉は、ゆらゆらと、地面に揺れ落ちる。
「「おおー!」」
男二人は、大興奮だ。まるで、大道芸を観ている客の様に、手を叩いて場を盛り上げる。
「ホノカ!火は出せない?バーッとさ!」
「居合切りなんて!初めてみたよ!」
ホノカは、目をギラギラさせて、捲し立てて来る二人の勢いに戸惑う。
「火なんて、出せませんよ!これを見て、なぜ火が出せると思うのですか?」と、怒った口調で言うものの、照れ臭そうな顔をしていた。
「じゃあ、水は?」と、シンは、ホノカの腕を掴んで強請った。
「出せませんよ!もう、ダン。この人を、どうにかして下さい。」
ホノカは、くっ付いて来るシンを引き剥がす為に、ダンに助けを求めた。
すると、シンは、思い付いた様な顔をして、標的を変えた。あっさりとホノカを離し、次の標的に狙いを定める。
「カブトは?何か出来たりしないの?」
カブトは、少し離れた木に、くっ付いて止まっていた。
それを見て、ダンが困った顔をして言う。
「カブトは、樹液に夢中みたい。」
「……。」
シンが呆気に取られていると、カブトを眺めつつ、ダンが続けた。
「バディーと絆を深めることで〜っ的なことを言ってたから、仲良くなると、何かしら出来るようになるかもね。」
「でも、出来そうな事って、何も思いつかないよな。ホノカは?」
ホノカは、首を横に振った。
プレイヤーとバディーの間には、エーテルと呼ばれるエネルギーが循環している。仲が深まる程、エーテルの流れは、スムーズとなり、量も自然と増える。その流れるエーテルが多ければ多い程、『絆力』が強くなるという。
その為か、バディーは、替えが利かない。世界にただひとつ、唯一無二の相棒なのだ。
「この世界では、『絆力』は、大事な要素なんだよ。もし、相棒を失ったら……。」
ダンは、美味しそうに樹液を舐めているカブトを見つめ、再び重い口を開く。
「僕たち自身が、弱体化するはず。逆もまたしかり……かな。」
「一心同体か。なら、ちょっと。頑張らないとだな。」
シンは、少し重くなった雰囲気を、断ち切る様に歯を見せるようにして笑った。




