表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/8

ルーク


----本当に人間?----


ローブの男は面白そうに笑った。


レイラは無言で視線を向ける。


男は椅子へだらしなく座ったまま、ひらひらと手を振った。


「警戒すんなって。食ったりしないから」


「……お前は?」


「ルーク。しがない魔術師」


全くしがなく見えなかった。


纏う魔力の気配が異常だ。


レイラは僅かに目を細める。


(強いな)


少なくとも、辺境にいるレベルではない。


ルークはそんなレイラを見て、さらに笑みを深くした。


「へぇ。すごいねぇ。」


「……何がだ」


「……いやぁ?」


セレナは黙る。


ルークは愉快そうに肩を揺らした。


「ますます面白いなあんた」


その時だった。


「面白くありません!!」


受付嬢が机を叩いた。


涙目だった。


「測定器二台も壊れてるんですよ!? 経費どうするんですかぁ!!」


「すまない」


レイラは素直に謝る。


受付嬢は少しだけ勢いを失った。


どうやら真正面から謝られると弱いタイプらしい。


「……はぁ。まあ、故意じゃないのは分かりますけど」


「うむ」


「あと多分、魔力制御できてませんよね?」


「努力はしている」


「……」


受付嬢は疲れ切った顔で書類をめくる。


「とりあえず測定不能なので、実技形式へ変更します」


「実技?」


「簡単な模擬戦です。戦闘能力確認も兼ねます」


ギルド内がざわついた。


「誰がやるんだ?」


「死ぬだろ」


「森吹き飛ばす奴だぞ?」


酷い言われようだった。


レイラは少し傷付く。


すると。


「じゃ、俺やる」


ルークがひょいと手を挙げた。


一瞬で空気が変わる。


「あ?」


「おい待て」


「ルーク、お前正気か?」


冒険者達がざわめく。


どうやら有名人らしい。


受付嬢も顔を引き攣らせた。


「ルークさん!? また問題起こす気ですか!?」


「またって何」


「先月ギルド半壊したでしょうが!!」


「事故事故」


「説得力ゼロです!!」


レイラは思った。


人のことを言えない男だ、と。


ルークは立ち上がる。


背はレイラより少し高いくらい。


細身だが隙がない。


「安心しろって。死なない程度にやるから」


「本当に!?」


受付嬢が悲鳴を上げる。


しかし周囲の冒険者達は逆に盛り上がり始めていた。


「お、模擬戦か!」


「久々だな!」


「賭けるか?」


「どっちに?」


「ルークじゃね?」


「いやあの女やばいぞ」


完全に観戦モードだった。


レイラは静かにルークを見る。


「……私に戦えと?」


「嫌か?」


「別に」


即答だった。


騎士時代、模擬戦など嫌というほどやった。


問題は。


(加減だな)


そこだった。


数分後。


ギルド裏の訓練場。


円形の広場を囲むように冒険者達が集まっている。


ノアは最前列で大興奮だった。


「頑張れレイラ姉ちゃんー!!」


「死ぬなよー!」


「いや多分死ぬの相手側だろ」


好き放題言われていた。


レイラは中央へ立つ。


向かいにはルーク。


彼は杖を肩へ担ぎながら笑った。


「ルールは簡単。場外か降参で終了」


「分かった」


「武器使う?」


レイラは少し考える。


本来の愛剣は当然ない。


なら素手でいい。


「必要ない」


「へぇ」


ルークの目が細くなる。


「じゃ遠慮なく」


その瞬間。


彼の姿が消えた。


「っ」


レイラが横へ跳ぶ。


直後。


――ドゴォォン!!


彼女のいた場所へ炎が炸裂した。


地面が抉れる。


観客が悲鳴を上げた。


「うおっ!?」


「いきなり本気かよ!」


「ルーク容赦ねぇ!」


炎の向こうで、ルークが楽しそうに笑う。


「避けるかぁ」


「……速いな」


レイラは正直に言った。


魔術の発動速度が異常だった。


普通の魔術師ではない。


するとルークは肩を竦める。


「そっちこそ。今の初見で避けるとか何者?」


「旅人だ」


「森壊す旅人?」


「事故だ」


「便利な言葉だな事故」


会話しながら、再び魔法陣が展開される。


今度は氷槍、数十本。


普通の騎士なら回避不可能。


だが。


レイラは一歩踏み出した。


ズドンッ!!


地面が陥没する。


その勢いのまま、氷槍の間を突っ切る。




「うおっ!?」


ルークが初めて驚く。


次の瞬間。


レイラの拳が目の前にあった。


「しまっ――」


止めようとした。


本当に寸前で。


だが。


――ゴォッッ!!


衝撃波だけでルークが吹き飛んだ。


「ぶへっ!?」


数十メートル先まで転がる。


訓練場の壁へ激突。


土煙。


沈黙。


観客全員が固まった。


レイラも固まった。


(……やってしまった。直したんじゃないのか……)


加減した。


したはずだった。


だが明らかに吹き飛びすぎている。


受付嬢が青ざめる。


「ル、ルークさん……?」


土煙の向こう。


しばらく静寂が続き。


やがて。


「――っはは!!」


笑い声が響いた。


ルークだった。


彼は壁の瓦礫をどかしながら立ち上がる。


口元から血を流しながら、楽しそうに笑っていた。


「ははははっ!! なにそれ!!」


「……無事か」


「めちゃくちゃ痛ぇ!」


元気だった。


観客達がどよめく。


「ルークが吹っ飛んだ!?」


「しかも素手で!?」


「なんだあの女!?」


レイラは困惑した。


「……死んでいないな」


「いや殺す気だったの!?」


ルークが笑いながら叫ぶ。


「違う。かなり加減した」


「怖っ!!」


本気で引かれた。


だがルークは、むしろ楽しそうだった。


彼は口元の血を拭う。


そして。


「いいねぇ」


にやりと笑った。


「気に入った」


嫌な予感しかしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ