第十八話 冒険者アルク
天界では、ストラテスよりもマスクルの方が注目されているみたいだった。
ド派手な音、豪快な一撃、目を見張るものがあった。
それに多少けがを負う方が、見ている分にはハラハラして面白いようだ。
その意味ではストラテスの文明は、芸術的ではあったが、スリルは無かった。
私は、四つの星の様子の観察が一通り終わり、ホープ様の様子を見ることにした。
今はアルクという少年がモンスターと対峙し、ホープ様は岩陰に隠れていた。
星の様子から推察すると、ホープ様は無策ではなさそうだ。
私は黙って見守ることにした。
◇
僕はアルク。冒険家になってはや10年、今年で18才になった。
植物採取ばっかりしていたころが懐かしい。
それから少しずつ仕事の幅を広げ、次は鉱石採取。
重いつるはしを必死に振り回していたっけ。
まめがつぶれてばかりで辛かったけれど、めちゃくちゃ体力がついた。
今では、モンスター退治や護衛がメインになっている。
「今日の敵は強敵らしいぞ」
いつも飲んでばかりのダジャレ好きな客にそんな事を言われ、少し感傷的になって昔を振り返ってしまった。
でも、弱かったあのころとは違う。俺は強くなった。
今日のモンスター退治の相手はゴーレム。オルドレムという名がついている。
ギルドの張り紙上では、見たことのない強さのランクだ。
今までの討伐依頼よりもずっと困難だという事だ。
ただ、どんな強敵だとしても、心配は全くしていない。
この依頼がギルドの紹介だから。
ギルドで紹介された依頼はなぜかいつもうまくいく。
少し難しそうだと思っていても、終わってみればいつも成功している。
オルドレム討伐の依頼書を眺めていた時だった。
唐突に受付の娘から声をかけられた。
「あっ。アルク!今日はその依頼がおすすめかも」
「ああ、わかった」俺はそう言って依頼書を手に取った。
ギルドの娘に勧められて、いつも通り深く考えることなく依頼を受けていた。
「でも、Sランクか……。今日は私もついていこうかしら……」
「危ないよ。俺一人でも大丈夫だよ。それに仕事あるだろ」
「今日はその依頼が一番大事だから、やっぱり私もついていくわ。
まあ私はサポートするだけだし大丈夫よ。
それに、いざとなったら助けてくれるでしょう?」
「ああ、もちろんだ」
危険だからと断ろうとしたが、強引についてきた。
……いいところをみせたい。
ギルドから紹介された依頼は必ずうまくいく。
だから心配は全くしていない。
お昼前には山の中腹にたどり着いた。いつも通りの岩肌だ。
しばらく様子を伺っていると、地響きが鳴りだした。
地面からゴーレムが現れる。
「ゴーレムだ。隠れて!」
受付の娘には隠れてもらって、自分がゴーレムと対峙する。
ゴーレムの大きさは、自分の3倍はあるだろう。
事前に話していた通り、サポートとして受付の娘が爆弾が放つ。
大きな爆発だ。無事ではないだろうと思ってみていると、爆発の中からゴーレムが姿を現す。
爆弾はまったく効いていない。とても頑丈なようだ――心してかかる必要がありそうだ。
ゴーレムの動きは遅い。
時折、振り上げて重力を利用して攻撃をしかけてくる。
落ち着いて対処すればダメージを受けることはない。
それよりも、ゴーレムの体の大きさが問題だ。上半身への攻撃が届かない。
一旦、手の届くゴーレムの右足に攻撃を集中させることにした。
最近の武器の進化はすごい。
さっきから岩のように固い体を叩いているにもかかわらず、剣は刃こぼれせず、徐々にダメージを与えているようだ。
右足を集中して攻撃していると、時々深くまで攻撃が刺さる。
やはり可動域には装甲の隙間がある。狙いをさらにしぼっていく。
数回の攻撃を繰り返すと、ゴーレムは膝をついた。
動きはさらに遅くなり、自重を利用した攻撃も威力半減。
ゴーレムは岩を投げつける攻撃に変更したようだ。
問題はない、すべて避けられる。
後ろから悲鳴が聞こえてくる。しまった…。
ゴーレムの狙いは俺だけではなかったみたいだ。
「ホープ!大丈夫か?」自分はすぐにダメージをうけた受付の娘に近寄った。
ホープは膝を押さえながら、笑っていた。
彼女の顔を見た瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
こんなときこそ、冷静にならないと…。
「ごめん。ちょっとしくじっちゃった。……」
笑顔を作りながらホープは話し始めた。
その笑顔に自分は少し安心し、心に落ち着きが戻ってくる。




