第十七話 戦術のストラテス
私の名はストラテス。
天界の外敵に対し戦術的に対抗し、殲滅を狙う総司令官。
殲滅を狙う、それはすなわち大量の外敵と相対することを意味する。
十や百ぐらいの敵であるならば普通に倒せばいい。
倒す数よりも増える数の方が多い、そんな時に私は呼び出される。
だから私は、力任せに突っ込むマスクルとは違い、頭脳で戦う。
敵を分析し、弱点を突き、最小の手数で最大の成果を得る――それが私の役割だ。
この星に降り立ち10年の月日が経過した。
私は、当初、冒険家をしていた。
多くの仕事は危険な動物やモンスターの駆除だった。
いつも通りに外敵を分析し、事前に罠をしかけ、駆除していた。
いつしか被害がなくなり、その功績が認められ都市防衛も任されることになった。
私は早速、都市防衛隊を組織し、皆と共に都市の防衛について検討を重ねた。
防衛隊の兵士や冒険者と共に、敵の分析、弱点から生態まできっちり調査した。
調査するだけでは価値がない。全体に共有され実践されてこそ、調査に意味が生まれるというものだ。
だから、新人からベテランに至るまで全員が知識を共有できるようなシステムを構築した。
今では、分析方法、弱点のつき方、生態の活用術に至るまで皆に共有されている。
そのおかげだろう、都市は近隣の都市につながる街道を含め、安全が確保された。
近くへの旅ぐらいであれば護衛不要で往来するようになっている。
「いよいよ明日ですね」
部下の一人が声をかけてくる。
「なに、いつも通りやるだけさ」
いつも通りの自信に満ちた返答に、部下も安心したようで、静かに持ち場へ戻っていった。
翌日、部下たちと共にオルドレムの現れる山の中腹へ向かう。
地面が鳴り、巨大な人影が現れる。
オルドレム――ゴーレムだ。
「皆の者。落ち着いて、いつも通り対応せよ!」
爆弾、弓、剣、槍、ハンマー、水、火炎瓶、投石、油。
部下たちは距離をとって慎重に試していく。
ゴーレムの攻撃はどれも強烈ではあったが動きは遅い。
落ち着いて安全な距離をとっていればあたることはない。
「見た目通りどの攻撃も有効打とはならんか。しかし、私の目はごまかせん」
有効打のない長期戦の様相だが、次第に弱点もわかってくる。
額のクリスタルをかばう動きをしている。
巨大なだけあって足への攻撃に弱い。
それに動きに癖があるようだ。
後ろからの攻撃には、必ず右足を一歩下げ左手で反撃してくる。
私は、分析班とともに計画を立案する。
後ろから弓による攻撃。
右足に罠をしかけ動きを止め、左手の反撃の勢いを利用し転倒させる。
転倒して下がってくる額のクリスタルを狙い槍を事前に配置。
岩を兵器で投げつけ頭部に攻撃、槍との挟撃でクリスタル破壊を狙う。
計画は直ちに隊全体に共有され実行される。
そして、実行された瞬間、勝負は決していた。
計画が鮮やかに実行され、まるでそれが必然であるかのように完了していた。
クリスタルを壊されたゴーレムは、砂となって溶けていった。
「敵が一体では盛り上がりにかける。
せめて、百体、いや十万体は用意しとかんかい!」
近くにいた部下たちは苦笑するが、私は本気だ。
天界では、いつも十万体以上の外敵を相手にしている。
これが戦術の美だ。派手さは不要。計画通りの殲滅――それこそが美しい。
◇
「あれっ?いつの間にか終わってる……」
それぐらい静かに討伐が完了していた。私は天界の反応を確認した。
あっさりとした討伐に、天界の観覧者はとても静かだった。
ただ、観覧者の一部――戦術を嗜む者たちは、つばを飲み込んで黙ってうなずいているようだ。




