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希望の物語 演義  作者: よむよみ
第二章 文明発展コンテスト

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第十九話 ホープ

「また、雪女の調査依頼が来てる……」私はそう言って、新規の依頼書を貼り出した。

 雪女だから冬に依頼が来るのならまだわかる……。

 でも今は春。まだ寒さは多少残るものの、雪はほとんど溶けて、雪が残るのは山頂ぐらい。

「雪女さん……、季節を間違えているんじゃないかしら……」


 依頼書に掲載された雪女の想像絵は、どこか私の姿に似ていた。

 そんな絵を眺めながら、以前にも似たようなことがあったことを思い出す。

 私が以前観察していた地球。雪女の話は、地球でも存在した。


 もちろん、この星と地球は存在する生命は大きく異なる。

 星が異なると生命の進化の方向性は変化するものだ。

 この星には地球のウサギは存在しない代わりに、地球には存在しないパメがいる――という具合に。

 その生命の違いが文明に大きな影響を与え、作り出す物語は全く異なった。


 でも、白い民族衣装を身にまとった雪女だけは両方の星に存在した。

 もしかして、人類の文明の発展のどこかに“雪女”という存在が隠れているのかしら……!?

 今まで私が観察できなかった人類の記憶の奥深くに“雪女”がいるってことかしら!?

 これは、何か重要な発見かもしれない。いつかしっかり調査したいな……


「でも……、不思議なのよね……。雪女は、私がお休みを頂いた次の日ばかりに見つかる気がする……。

 ま、いっか。そんなことよりも……。新規のこの依頼を誰かにお願いしなきゃ」

 私はそう口にして、特殊な依頼を一番目立つ場所に貼り出した。

 天界からの依頼――オルドレムの討伐依頼。


 そんな時、ギルドの扉がカランと誰かが来たことを告げる。

 私は扉に目を向けた。


 誰に依頼するか、そんなこと、随分前に既に決めていた。

 この文明で一番華がある若い冒険者、今ちょうど入ってきたアルクだ。


 私はもちろんホープ。

 この文明では、いろいろ考えたけれど、ギルドの受付として世界に関わることにした。

 ギルドの受付であれば、多くの人と自然に接することができる。

 10年前に6才の女の子としてこの世界に降り立ったが、今では16才。

 たった10年間でこんなに大きくなるなんて、成長が早いというか、寿命が短いというか…。

 神である私には新鮮に感じられた。


 当然、この辺りの地理、鉱石分布はしっかりと調査した。

 その上で、食料が不足しそうだと感じたら肥料の情報を流したり、感染を予防する初等医療をこっそり普及させたり、技術進化に必要な鉱石の場所を重点的に鉱石発掘依頼を出した。

 ここはギルド。情報が収集できるだけじゃない。噂話として自然と発信もできた。

 そのおかげだろう。鍛冶屋は、より強度の高い武器防具を自然と生み出していた。

 作られた武器防具は国に買い取られ、市場はとても潤っている。

 この国は自然と大きく成長している。


 人々だって、大きく変わった。

 最初のうちは小難しそうな依頼書を、多くの人がただ心配そうに見るだけだった。

 そんな時、私は依頼書をお勧めしてみた。

 小さい子供の姿をしていた私からの頼み事は断りにくいみたいだ。

 少し不安そうではあったけれど受領した。

 そしてどの依頼も達成された。

 何十億年という単位で人類を観察してきた私が、相手に合わせて選んだ依頼。

 文明発展の流れも人の性格までも考えて選んだおススメの依頼、失敗する事なんて無かった。

 初めは、できるのかと半信半疑だった人たちも、無事に依頼を達成し笑顔で帰ってくる。

 この国の人々は、皆、自信に満ちあふれているように感じられるようになった。


 そんな異世界生活も今日で終わり。

 天界からの特別な討伐依頼――オルドレム討伐依頼が届いた。


「あっ。アルク!今日はその依頼がおすすめかも」

 とアルクにオルドレム討伐の依頼を勧めた。


 アルクは今でこそ立派な好青年だけれど、10年前はどこか弱弱しいただの子供だった。

 でも、冒険者としての資質はあった。

 私が適度な依頼を渡していると、腕も体も心も急成長した。

 今では18才。このギルドで一番と言っても問題ない。立派な冒険者だ。


 アルクにオルドレム討伐の依頼を渡すと、私のコンテストなんだから、当然、私もモンスター討伐に向かう。

 何度も危ないんじゃないかと断られたけれど、危険なモンスターみたいだからと言って、無理やり向かった。

 今はアルクと一緒に雪解け山の中腹。オルドレムの発生場所に来ている。


「地震!?いや、ゴーレムだ。隠れて!」

 アルクの警戒に私は岩陰に隠れた。

 地割れの中から、厳かにゴーレムが現れる。


 ゴーレムに対し、基本的にはアルク一人で戦ってもらう。

 10年のうちにこの時代には貴重な火薬を十分集めた私は、爆弾で時々サポートした。

 爆弾自体は、大して効果は無いと思う。

 どちらかというと、大きな音を出して、天界の注目をあびることが目的だ。

 どんなに魅力的な戦い方であっても、誰も見ていなければ意味は無い。

 そういうコンテストなのだ。どこかで派手な演出が必ず必要だ。


 アルクはたった一人で戦闘している。

 けれど、強化された武器防具のおかげで十二分に戦えているようだ。

 ゴーレムは足をつき、手を振り下ろす攻撃から、岩を投げる攻撃に変えた。


 そろそろ戦いは終わる。いや、終わらせる。


 私は“わざと”岩にぶつかり、悲鳴を上げた。

「ホープ!!大丈夫か?」

 アルクは私に駆け寄ってくる。

 ゴーレムはすでに足にダメージを受けており、すぐにはこっちに来れない。

「ごめん。しくじっちゃった……。

 ゴーレムは額のクリスタルをかばってる。きっとクリスタルが弱点よ。

 大丈夫、アルクなら絶対勝てる!」とアルクに伝えた。


 再び、アルクはゴーレムに対峙する。

 アルクは左右に体を揺らしフェイントを入れ、大きく飛び上がり、私の言葉通り額のクリスタルに切りかかる。

 その瞬間、私は、特別製の銃を取り出した。


 始まる前から、どんなモンスターだろうと考えていた。

 文明に見合わないモンスターを作るとき、もし私なら弱点を用意し、工夫で倒せる方法も用意しておく。

 その弱点がランダム性を作り出し、ゲームや物語をより面白くするから。

 額のクリスタルをみた時、ピンときた。

 間違いない。クリスタルが弱点だ。


 銃を作っておいてよかった。


 銃――この文明にはまだ早い武器。

 鍛冶屋に設計書を渡し、製作してもらった。

 恐らく鍛冶屋はこれがそもそも何なのか、どう使うのかなんて理解していないに違いない。


 私は、額のクリスタルに狙いを定めた。

 ゴーレムの動き、アルクの動き、風による誤差修正、計算完了、命中率99.9%。

 神の99.9%は絶対――命中率としては必中を表す。


 ごめんね、アルク。

 多分アルク一人でも十分倒せる。

 ただ、私には時間制限がある。

 今の文明の発展度では、一人でクリスタルを壊すことは難しい。

 だからガンナーとして私は、勇者のサポートをする。


 私は引き金を引いた。銃はサイレント機能がついており、誰にも気づかれない。

 時間がゆっくりと動いているように感じられる。

 銃弾は計算通りにゴーレムの額に向かっているのがわかる。

 私はアルクの背中を見つめながら、少しだけ思った。もっと見ていたかった。

 アルクの剣の刃が額のクリスタルに当たる直前に、私の弾丸がクリスタルを貫いた。


 私は役目を終えた自分の姿を、この星から消した。

 この星から私の存在の記憶が消えていく。


 ありがとう、アルク。さようなら。


 天界の大広場へ戻りながら、私は勝利を確信していた。


 マスクルの文明も素晴らしい。

 大勢でド派手な演出は、確かに大衆を魅了する。


 私が見てきたどの文明でも、ド派手な演出には人気が集まっていた。

 でもその後、王道ものと言われるストーリーが必ず定着した。

 爆発で注意を惹き、全く効果がなく絶望、ヒロインの負傷、そして覚醒した勇者による一撃。


 それが定番――進化した演出、王道よ。


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