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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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兵器の中身。

「何者だ」

『……』

「加減をしたのか。そもそも伝説を使えないのか、どちらだ」

『……』

「黙りか」


 返答はない。兵器なのだから当然とも言える。

 しかし……なんだ、この気配は。


「そ、そいつは俺の武器だ!」

「黙れ、お前には聞いていない」

「ぐっ……」


 もう2、3発殴るべきだろうか。いや、死んでしまっては元も子もない。

 魔法は使い慣れているが、肉体での戦闘はあまり得意ではないからな。

 ほしびとと戦うように殴ってしまって、頭が割れたらたまったもんじゃない。


 また兵器と向き合おう――と目線を戻した時だった。

 視界の端に、少しだけ光を見た。光源は、あの男。

 頭が「まずい」と理解するよりも先に、その光――雷撃は私の体を撃っていた。


 焼けるようだが、雷撃による刺すような痛みも伴ったそれが、私の全身を覆い尽くす。


「使えないなら、俺自身で――」


 もう一撃を放とうと、魔力を練っている。

 しかし、男の攻撃よりも、私の魔法のほうが早く出た。


 床から突如として生成された――ツタ。意思を持つかのようなそれは、器用に男を床に縫い付けた。

 しっかりと頭部まで地面に抑え込み、動きを封じている。

 首元にも1本、ツタを行き渡らせれば動かなくなった。

 少しでもこちらを見ようと顔を上げれば、喉にツタが食い込むのだ。流石に生命の危機を感じれば、阿呆男とて動きを止める。


「あっ……グッ……」

「黙れ、と私は言ったのだぞ」

「うぐっ……」

「そもそも兵器の力はお前の力ではない。作ったのならばまだしも、そうでもないだろう。それに――」


 ――それに、私の体はもう回復が済んでいる。

 受けた瞬間は痛みを感じたが、それだけだ。長い間苦しめられない。

 魔法使いとしては、たしかに優秀だろう。あの雷撃であれば、多くの魔獣や、敵を屠れるはず。

 だが私を殺すなら、甘い。弱い。

 先程の瓦礫のほうが優秀だったと言ってもいいだろう。


「この程度の魔法しか使えん人間が、世で最も強いとはよく言えたものだ」

「おまぇ、だっで……」

「ほう。この期に及んでまだ勝つつもりでいるのか。その心意気やよし」


 一生の短い人間としては、向上心、探究心の強さを褒めてやろう。

 しかし、他の種族と比べて弱い人間種にしては、危機感や警戒心、猜疑心が薄すぎるな。

 あとは慢心か。そこを改善するべきだな。

 この点を伸ばしていけば、きっと男の言う『最強の魔法使い』とやらになれるはずだ。

 ……ふむ。そう考えると、伸びしろの有る魔法使いか。


 おっといけない、弟子を一気に2人持ったせいで色々と考えてしまう。

 今はこの兵器について知りたいのだ。


「……高純度の魔力だ。中から溢れている」


 観察していれば、異様な気配が魔力だと感知できた。

 しかし人間の魔力とは違う。澄んでいて、余計なものが混ざっていない。

 それにこの兵器、人間の形を取っているが、構造的に人間が入れるサイズではない。

 ところどころ人間らしからぬ細さをしている部分もあるし、デザイン的にも中に人間が入って動けるはずがない。

 ではこうしてみよう。


 ――〈盗賊の神の秘技〉。

 神域魔法たる鍵開けの魔法を用いれば、兵器の胸部が開いた。

 中にいたのは――


「……妖精?」


 中にいたのは、3匹の妖精だった。

 透明な羽根に、整った顔立ち。エルフを小さくしたようなその姿。

 文献で見た通りの容姿であり、前世のアニメや映画で見るようなあの妖精と似ている。

 違うところがあるとすれば、弱々しく座り込んでいるところだろう。


『……みて、開いたわ!』

『外よ……!』

『わぁ……!』


 普通の妖精なら、人間を見つけるなり周りを飛び回る。それだけで飽き足らず、くすくすと笑いながら飛ぶのだ。

 だが兵器の中にいる彼女たちは、中にある柱や支えにもたれかかり、ぐったりとしている。


「お前達はなぜここにいる」

『わたしたちの言葉がわかるの? 今の人間って、妖精語も理解できるのね』

『300年よ! 暗くて狭くて、ずっとずーっといたの!』

『時折、体が痛くなるの。指示された魔法を使わないと、とても苦しいの』


 なんて素直なんだろう。

 本を読んだだけでも、相当ないたずらっ子だと分かる妖精たちだが、この兵器の中に閉じ込められていた3匹は違う。

 長い間閉じ込められ、魔法を強要され、精神が崩壊した――といったところだろうか。

 一体誰が、こんなむごいことを。


 とにかく、このまま中に居てはならない。


「抱えても構わないか」

『ええ!』

『優しい人間!』

『外の空気だわ!』


 私は3匹をそっとすくい上げて、兵器の中から取り出した。

 妖精がここまで弱ることなど、文献でも滅多に見ない。今の今まで強制労働をさせられて疲れている。

 壊れないように、苦しくならないようにと、優しく腕の中におさめる。


 近くで見れば、この兵器の異常性がよりはっきり分かった。

 本来いるべき場所にいる妖精は、たっぷりと魔力と神聖な力を浴びて、健康的だ。

 この3匹は、いわば栄養失調。

 がりがりにやせ細り、魔法を放ち続ける激務で肌もボロボロ。きらきらと光るはずの羽根すら、霞んで見える。


「お前達が嫌でなければ、我が家で療養してから精霊の森に連れていく」

『……家に、戻れるの?』

『嬉しい……』

『嬉しい、嬉しいわ!』


 ……素直すぎる。ここまで純粋に笑顔を向けてくる妖精がいるのか。

 私が知らないだけならばいいのだが、これがこの兵器による影響ならば考えものだ。

 これを作った人間、もとい出どころを調べねば。

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