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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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収束。

「おい」

「ぁい……」


 男を問いただそうと見やれば、苦しそうに返事をした。

 そういえば随分静かだったが、首を軽く絞めたままにしていた。……うん、生きてはいるから、大丈夫だろう。

 少しだけ緩めてやると、途端に呼吸を荒らげる。

 いやもう少しで死にそうだったんだな。危ない危ない。


「この兵器はどこで手に入れた」

「……」

「……はあ」


 さっきまでうるさかったのに、今度は黙ったのか。

 確かに私は黙れと何度も言ったが、それは無意味に喚き散らすなという意味だ。

 こういう質問を投げたときに黙っていろと言う意味じゃない。

 この男は本当に、真逆を行く。人の神経を逆撫でする才能があるらしい。


「いいか。私はわざわざお前の口から、お前の意思で言えるように尋ねている。やろうと思えば廃人にして情報を吐かせる方法もあるのに、お前の意思を尊重しているのだぞ」

「……うっ」

「兵器の中身も知らず、神聖な妖精を疲弊させてまで頂を見たかったのか? ん?」

「わ、分かった、言う! 言うから!」


 完全な馬鹿ではないようだ。少しの脅しで口を割るとは。

 まともな人生を歩んでいて、性格も歪まなければもっといい人生を選べただろうに。

 それは私には関係がないか。


 男はまだモゴモゴと言い淀んでいるが、覚悟を決めたのかボソボソと呟く。


「……立入禁止の廃屋だ。呪いの家とも呼ばれた、郊外にある館だよ。そこに魔法書もあった」


 ――呪いの家。

 たしか、我が家も似たような呼称で呼ばれていた。

 廃屋と言っているくらいだ。うちとは違って、誰かが居着いている様子もないのだろう。


 しかし、我が家と境遇が似ている。

 人が近付かない恐ろしい場所。人の領域を軽く凌駕した、魔法や知識、技術。

 ……まさかとは思うが、私と同じような人間がいるのか。

 転生した人間が。


 妖精は、300年閉じ込められていたと言っていた。

 300年といえば、私も研究に没頭していた時代だ。完全に力やこの体、魔法という異文化にも慣れきっていて、新たな魔法を生み出していた。

 妖精兵器も、私と同じ環境に居た者による〝作品〟であるのならば――


「先生!」

「リサ様!」


 2人の声がして、はっと意識を戻す。気付けば同じ空間に、テナとブラムウェルが居た。

 しかし、もう到着したのか。学者に頼ったのか?

 ウィッシュの3人はいないようだが、置いてきたのだろうか。スラム街にすら怯える子供たちだ、いい判断とも言える。


「お前達。来たか」


 顔を見れば、テナは酷くホッとした様子だった。

 私がやられることはないというのに、面白い弟子である。

 一方でブラムウェルは、項垂れていた。がっかりといった調子だろう。

 私が魔法を使っている様を見れなくて、落ち込んでいるといったところか。本当にこいつは弟子なのか?


 たいした戦いはしていないし、私も不死に甘えて適当にやり合っていたからな。

 ブラムウェルがいたら、それこそもっとがっかりしていただろう。


「ご無事で何よりです」

「早かったな」

「地下への階段があったので」


 テナの感じから、割と近くに階段が生成されたようだな。

 そもそも男の使った魔法も、ただ建物を広くするだけの魔法の一種に過ぎない可能性だってある。

 やつは私とテナ達を分断するのに利用したが、本来の能力は狭い空間を広くするだけなら――脇道が出来るのも当然だ。


 となると、やつは効果を理解できていない場合も考えられる。

 禁忌魔法の件もそうだが、人間にはまだまだ理解できない知識のようだな。


『ねえ、恩人さん……』

『ちょっと疲れたわ……』

『眠たいわ!』


 腕の中の妖精が、小さな声で訴える。兵器から出して、余計に疲弊している。

 衰弱している妖精をこのままにして、談笑している場合じゃない。


「先生、それは……?」

「これは妖精だ。話よりも、まずは上に戻ろう」


 この地形を元に戻すのが一番早いだろう。確か、魔導書みたいなものを読んでいたな。


「おい、この地形を戻す魔法は何だ」

「……しらない」


 流石にこれは嘘じゃなさそうだな。さっきあれだけ脅しておいて、まだシラを切るつもりならば別だが。

 だが困った。私の知る魔法では、綺麗に元に戻せる自信が無い。

 専門家に頼るのがいいだろう。


「テナ、学者を呼べ」

「はい。……魔技の学者さん、聞こえますか?」

『どうした』

「きゃあ!?」


 呼んだとはいえ急に現れた学者に、非常に驚くテナ。

 少し飛び跳ねたと思えば、そのまま私の胸へと飛び込んできた。

 これぞまさに愛いやつである。

 しかし、この学者はそろそろ、人間と指導者との違いを、きちんと理解するべきだと思うぞ。


「急に現れるな」

『俺は普通に出てきただけだ』

「なんか、こう……もっと光るとかないのか。魔法陣とか、門とか」

『面倒だな』

「だ、大丈夫です。私が慣れれば……!」


 ソーマの意思を受け継ぐテナならば、普通に慣れそうな気もする。

 逞しさの表れなのだが、少し寂しい。


『おい、用もないのに呼んだのか?』

「そうだったな。この地形を戻す魔法は分かるか。もしくは戻せるか」

『ああ。――ほら、戻したぞ』


 またこいつは一瞬で……。

 テナもブラムウェルも、言葉を失っている。

 そんな性格だから、占い師と進展しないんだ。頭はいいはずなのにな。


「な、何がおきたわけ!? 急に現れたんだけど! ねえ、ジュリー、どういうこと!?」

「わ、わかんないって……」

「えっと、これ、えっと……?」

「……はあ、またあの人の仕業か?」


 研究施設の入口付近には、ウィッシュの3名がいた。

 急に部屋が現れて、大困惑している。

 それにその後ろで大きなため息を漏らしたのは、アレックスじゃないか。

 ちょっと待て、今このスラムにどれだけの知人がいるんだ?


「何故アレックスも?」

「スラムで事件だ、と騎士団が呼ばれてな」

「……ふむ」


 それにしても来るのが早すぎる。

 即座に連絡を取れる手段は、テナも持っていないだろう。となると、犯人は学者だな。

 騎士団がいれば後片付けは楽だろうし、これは感謝するべき事柄だな。


「ああ、行方不明者なら発見して保護してある。ギルドの仕事を取って悪いな」

「そ、そんなぁ」

「わたしたちのお給料が……」


 容赦がない対応だ。被害者からすればどちらであっても、救ってさえくれればいいだろうが。

 これも騎士団が新参者(ギルド)を気に入っていないからなのか。

 アレックスがまだ好意的でも、所属している他の騎士はまた別だからな。


「それで、それが犯人か」

「ああ」

「身柄は――」

「悪いが、暫くは私の方で預かってもいいだろうか」

「うん? 構わないぞ」


 欲しい情報は多い。廃屋のことも根掘り葉掘り聞きたい。

 ブラムウェルが知らないような、非合法な魔法に関する知識も多く有していそうだ。

 男の知識が枯れるまでは、吸い尽くしてやりたい。


「それじゃ、後処理は任せてくれ。リサ殿」

「私も加わりますので、リサ様はごゆっくり」

「む。それでは甘えるとしよう」


 気が利く若者だな。ここは無下にせず、年寄りは早々に立ち去ることにしようか。


「疲れたな。帰るか」

「はい!」

この章は完結です。

また、しばらくお休みになります。

(違うのを書いてしまっています…)

一応ネタがあるのは、

・精霊の森編

・学術都市編

のふたつです。

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