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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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お披露目。

 一体ここは、地下何階分だろう。

 施設は随分と地下の地下まで落ち、テナの姿も見えず、声も届かなくなってしまった。


「こんなギミックがあったとはな」


 返答はない。無視されている。

 そもそも対話を求めてはいないし、できる相手だとも思っていないが、腹が立つ。


 私は私で、乏しい知識を活用して考えてみようか。

 土地を作り替える魔法があったはずだが、あれは伝説を上回る力が必要だ。

 低い位の魔法でも発動はできるが、土を盛り上げたりなどの簡素なもの。

 この目の前の男が、はたしてそんな力を持っているのか。

 あれだけ用意周到に、禁忌魔法を売っていただけあって、下手すれば初めて出会う強者なのかもしれない。


 私は死なないと確信していたが、もしかするとそれを上回る圧倒的な力を持っている可能性もある。

 ああ、そう思うと心が躍る。

 不安もあるが、未知への楽しさが強い。


「――……ふふふ、ふははははっ、アハハハハッ!」


 急に男が、高らかに笑いだした。


「気でも触れたか」

「ふっ、お前には分かるまい! 低脳な人間が!」

「……」

「この力を見たからには、生かしておけない! お前はこれから、最初で最後の〝伝説魔法〟を見ることになる! 地獄への土産にな!」


 訂正しよう。

 この男は、私を殺せない。

 少なくとも、私よりも上位の存在であるという可能性は消えた。

 伝説魔法程度でこんなに自信満々になれる人間が、私よりも強いはずがない。


 このガッカリ感。私が頭の中で想定していたよりも、期待していたらしい。

 軽いショックで立ち尽くしていると、また高い笑い声が聞こえる。


「怖くて動くことすら出来ないか!」


 楽しそうだな。私をガッカリさせておいて。

 それに私が動こうとしないのは、死なないからだ。死ねないからだ。

 さらに言えば、これから見られるのは知らない魔法かもしれない。

 であれば一度、この目で見てこの体で受けるべきである。

 魔法を見て覚えれば、使えるかもしれない。


「さあ、あの女をやれ!!」


 そう言った瞬間、兵器が光った。

 放たれた光線は破壊力を帯びており、私を含む、背後にあった壁を諸共破壊した。

 一瞬しか見えなかったが、男には光の膜の保護がなされていた。奴は気づいていなかっただろうが。

 術者もとい、主人を守る機能だろうか。


 それに、炎や氷などの攻撃魔法と違い、光線はあっという間に〝着弾〟する。

 光の速度の素早さは誰もが知っているが、やはり私にも対応しきれなかった。

 私はすっかり瓦礫の下に埋もれ、身動きが取れない。


「は、はははっ、やった! やったぞ!」


 降ってきていた壁や天井で視界は塞がれているが、楽しそうな笑い声はハッキリと届いた。


 ふむ。手足、頭までもが痛い。

 おそらく死亡を数えると、光線で1度、〝落石〟で2度、この激痛でまた数度死んでいることだろう。

 ごほっと咳込めば、口から大量の血液が漏れ出た。内臓も幾つか死んでいるようだ。

 どこも折れているし、どこも潰れている。

 気分がいいとは言えないな。


「……死体の確認も、せず、追撃もない……。たった一撃で……ごほっ、勝利の余韻に浸れるとは。単純な頭だ……」


 さすがの私も、これでは完治するのにも時間がかかる。

 体の一部は瓦礫に押しつぶされ、回復と負傷を繰り返しているくらいだ。

 内臓が戻ったら、無理矢理出るほかないだろう。

 この間に、さっきの魔法を思い出すとでもするか。


 魔法は英雄級だった。あいにくだが、知っている魔法。

 しかし、火力は伝説魔法と張り合えるほどの強いものだった。

 であれば変だ。兵器――つまり、命令通りにしか動かないものならば、そんなおかしな魔法を繰り出すはずがない。

 伝説魔法をそのまま発動すればいいだけの話だ。

 何かが欠けている、何かが間違っている――あの兵器は、一体何だ。


「俺が最も強い魔法使いだ!」


 ……まだ騒いでいるようだ。

 私が必死に考えているのが馬鹿らしくなるほど、清々しい頭の悪さ。

 こんな相手に、何を警戒していたのだろう。


 さて、そんな間にやっと腹の中の感覚が戻ってきた。

 吐血する回数も減り、手足の血肉も安定してきた。相変わらず、潰れたままだが。

 そろそろ復帰してやるか。


「……っ、ふん!」


 少し魔力を放出すれば、瓦礫は耐えきれずに高い音を立てて破裂した。

 他の細やかな石となったものも、さらさらと砂状にまで砕け散る。

 窮屈な瓦礫の下から出てこれた私の体は、待ってましたと言わんばかりに回復を進めた。

 砂埃が少し残っているが、私の気に入っている肉体が元に戻る。


「は……?」


 困惑している男に対して、丁寧に説明してやるほど私は優しくはない。

 ブラムウェルだったらまだしも、ここまでの能無しでは話も通じまい。


 私は男を無視し、兵器へと近付いた。

 近付くほど不思議だ。どこの技術で作られたのか、全くわからない。

 ただひと目見ただけでは、女性の形をとった鎧としか見えないだろう。しかも表面はキラキラと輝いている。

 まるで宝石だ。

 新しい技術なのだろうか。


「おま、おまえっ、なんで死な――な゛い゛ッ!」


 黙っていればいいものを。

 うるさかったので、右手を強く握りしめ、そのまま振りかぶった。

 予想していなかったのか、ただただ運動神経がないのか。男は私の拳を、顔面のど真ん中で受け止めてくれた。


「うるさい」

「ひっ、う、はなぢ、いだ……っ、いだいっ! おま、殴っ……」

「……」


 黙らせるために殴ったというのに。

 今度誰かに、人を気絶させるための殴打方法でも学ぶべきか。


 とはいえ殴られたことにより、萎縮している。態度が大人しくなっただけ、まだましだろう。

 私は改めて、兵器に接近した。

 すると兵器は、一歩後ろに下がった。まるで逃げているように。


「……意思があるのか?」


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