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第03話 お食事中でも待ったなし!②

 気を取り直して、まずは怪獣探しである。

 オレはベンチから立ち上がると、周囲を見回した。

 怪獣を見つけるのは簡単だ。場所はすぐに特定できる。


 どうやるのかって?

 それは、ドームの外にいる群衆の反応を見ればいい。


 人々の会話や行動、ときには悲鳴が情報源となり、怪獣のおおよその位置を教えてくれるのだ。


 以上のことを踏まえた上で、耳をすませて、周囲を観察する。

 ふむふむ……なるほどね……。


 市民の反応から察するに、どうやら今回の怪獣は、駅の近くにある家電量販店のビルに貼りついているらしい。


 というわけで、チョイチョイッと移動して……

 あ、やってきました犯行現場。


 おー、いたいた。こいつね。

 これは前に図鑑で見たことがあるぞ。


 名前はたしか『プニコーン』だ。

 プニプニとしたゲル状の身体に、かわいらしい目玉がふたつ。額には、これまたゲルでできた角が一本生えている。

 大きさは、ワゴン車をまるまる一台飲みこめるくらいのサイズ。それがビルの外壁にへばりついて、ウニョウニョと壁を登っていた。

 まあ簡単にいえば、ファンタジーの世界によく出てくるモンスター「スライム」の超デカいバージョン。それに角がニョキッと生えた感じ。一角獣のユニコーンにちなんで、プニコーンと命名されたらしい。

 でもこいつら、ときどき二本、三本と角が生えてる個体に遭遇するんだよなァ……。怪獣専門家の命名もわりと当てにならないと思う。


 ちなみに、プニコーンの脅威レベルは「小」、強さランクは「チワワ級」。

 正直これ、ヒーローの出る幕ではない。警察の対怪獣部隊でも十分に対処できるザコモンスターなのだ。

 だから、そう……。こんなヘッポコ相手でも、いちいち身体が反応してしまう自分が情けない。

 いっそのこと、オレのヒーローネームを『敏感仮面びんかんかめん』とかに変えちまおうかな?

 で、名乗り口上は……


「怪獣の気配をビンビン感じて、グングン巨大化! 即登場! 今日もアンテナ、ビンビン! 敏感仮面、参上!」


 うーん……。

 面白いけど、あんまりカッコよくないので……却下ッ!


 ――とオレは、家電屋のビルに貼りついていた緑色のプニコーンをつかみ取ると、それを両手で「バチュンッ!」とにぎりつぶした。

 プニコーンが黒い霧と化して、空気中にサラサラと消えていく。

 とたんにドームの外の群衆から悲鳴が上がる。

 みんな「かわいそう!」だとか「もっとやさしく倒して!」なんて、ムチャクチャなことを口にしているが、知ったことか。こいつは怪獣だぞ?


 おっと、そういえば……。

 最近このプニコーンがキーホルダーになって販売されたって聞いたな。

 見た目がかわいいと評判で、街なかでもカバンにつけてる人を見かけたことがあるし……。

 まったく、人間ってヤツは……。

 なんでもかんでもキャラクターにしやがって。

 こんな調子じゃ、そのうち怪獣愛護団体なんてのができるんじゃないのか?

 そうなったら、群衆のヤジがさらにめんどうなものになりそうである。


 さて、変身が一向に解除されないので、オレはさらに付近の捜索をつづけた。

 すると、家電屋のビルの裏手。そこの駐車場で、車にかじりつく二体のプニコーン(黄色と赤色のヤツ)を発見。

 「緑、黄色、赤……。おまえらは信号機か!」と心のなかでツッコミを入れつつ、二体とも車ごと足で踏みつぶしてやった。


 首の後ろのピリピリとした感覚が消えた。

 どうやらこいつらで最後のようだ。


 よーし、終わった。

 これでようやく飯にありつける。


 ……とここで、変身が解除される前に、最後のヤジが飛んできた。

 タワマンでしゃべっていた三人のご婦人方の会話だ。


「車ごと踏むなんて。野蛮なヒーローね」

「きっと野菜を食べないせいよ。それでイライラしてるの」

「いいえ、牛乳よ。あれは間違いなくカルシウム不足が原因だと思うわ」


 相変わらずの言いたい放題め……。

 あのなァ! 牛乳なんてのは、オレは一番飲んでるんだよ!

 今朝だってプロテインと混ぜて飲んだし!

 オレはぜんっぜん、カルシウム足りてますから!

 あーもう、なんか腹立つなァー!


 その刹那せつな、変身が解除される。

 身体が縮み、もとのサイズにもどった。


 人間にもどると、オレはプニコーンを倒した駐車場の上に立っていた。

 うっかりしていた。変身解除前のタイムラグで移動しておけばよかったな、と少し後悔しつつ、ダッシュで公園へと引き返す。


 空を見ると、ヒーロードームが発光していた。

 この発光により、ドーム内の様子が外から見えなくなる。おかげで、ヒーローは顔バレせずにすむのだ。

 ドームは発光しつつ、壊れた建物や車の修復を行う。その様子は、まるで時間が巻きもどっていく感じだ。

 建物の周囲に散らばるガレキが、壊れた外壁に吸い寄せられるようにして飛んでいくし、つぶれた車は風船をふくらませるような動きで、本来の曲線を取りもどしていく。

 そして修復作業が完了すると、街の住民たちがもどってくるのだ。かれらは、自分がもといた場所に、ランダムな順番で転送されることになる。


 なので、ヒーローはこの時間的余裕を使って現場から撤収する。

 もちろん急いで動かないといけない。最初の変身地点に、興味本位で野次馬が集まってきたりすると、いろいろとめんどうなことになるからね。

 まあ、なかには戦闘後にわざわざサイン会を開いたりする目立たがり屋もいるけど、オレはそういうのはゴメンだ。

 だって身バレなんかしても、いいことなんてひとつもないからなァ……。


 公園にもどり、バッグとクロスバイクを回収する。

 もうここでは弁当は食えない。オレが公園にいたことはバレている。

 いったん自宅にもどって、そっちでゆっくり飯を食ったほうがいいだろう。

 そう考えて、オレは公園をあとにした。


 こうして、今日もビッグマスクの活躍により、広守市の平和は守られたわけだが……。

 なんだか今日はやけにイライラする怪獣退治だった。

 もしかすると、あのマダムたちの言うとおり、オレには栄養が足りていないのだろうか?

 いやいや、そんなわけはない。普段からできるだけ野菜を食べてるし、牛乳だって飲んでるつもりだし……。

 ……途中コンビニでサラダと牛乳買ってから帰るか、うん。



 ◇



 さて、つぎのお話は――


 街にたたずむ全裸の巨人。

 股間には、タオル一枚を巻きつけて、怪獣と対峙し仁王立ち。

 あの巨大ヒーローはいったい、だれなのか?

 頼むからオレじゃありませんように……。

 正解は……残念! 「ビッグマスク」でした!

 って、ウソだろ! 勘弁してくれ~!

 警察がにらみをきかせるなか、果たしてポロリをせずに怪獣を倒せるのか?

 ここでミスれば最終回だぞ! がんばれ、ビッグマスク!

 いや、マジで。


 次回、第4話「お風呂はさすがに待ってくれ!①」


 つぎもぜったいに見てくれ……とは言いがたいな!

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