4話 届く瞬間
角の先を少し進むと、青い線が見えた。
その向こうにも同じ線があり、中央あたりには若い男が立っている。第一関門の時と同じ構成だな。
歩きながら右肩を回す。まだ少し、じんじんするが、動かすのに支障はない。
区画の中央の男を改めて見る。
背はエドガーと同じくらい。髪も同じブロンドだ。顔立ちも似ているような気もするが、こっちはずっと眼光が鋭い。
なにより顔の右側に大きな傷がある。
強そうだ。
エドガーの親戚かなんかかな、とは思う。ただ、あの優男顔とこれだけ印象が違うと、気軽に聞く気にはなれない。
軽口をたたいた瞬間、めちゃくちゃ睨んできそうだ。バッドコミュニケーションにならないように気を付けよう。
「レイヴン…」
セラが驚いたようにつぶやいた。
ほう、かの某はレイヴンというのか。
ん、待てよ?レイヴンだって?
その名前は俺も知ってるぞ。
3年前、王都から離れたファルマス地方で起きた「魔物暴走」を止めた男の名前だ。
そこは普段魔物が出るようなところではない。外敵も少ないため常駐兵は多くなく、とても「魔物暴走」を止めれるほどの戦力は、そろっていなかった。
そんな戦力差をひっくり返したのが、当時ファルマス地方の筆頭騎士だった、レイヴンというわけだ。
まあこいつがそのレイヴンかどうかはまだわからんが。
別のレイヴンさんという可能性もまだある。それでも、強いことには変わりないだろうが。
「よく来たね。ここが第二関門だ。僕の名前はレイヴン。奥の線を二人とも越えれば通過だ。」
「まさかレイヴンが試験官とは…。気をつけて、ダン。この人の強さは折り紙付きよ。」
「だよな、そんな感じがする。それと、このレイヴンって3年前の「魔物暴走」の人か?」
「ええ、そうよ。」
「なるほど。そりゃ手ごわい」
やはり、本人らしい。めちゃくちゃやばいじゃねえか。
しかし、セラとは知り合いなのか。
エドガーにも似ているし、家同士の付き合いとかあるのかもしれない。通過したら聞いてみるか。
今はそれどころではない。
「僕は初級の魔術と身体強化のみを使う。身体強化を除いて、魔術は一度に一つまで。もちろん、固有能力も使わない。それと、この輪をつけている。説明はもう必要はないよね。」
持ち上げた手首に、ボルドーのときにも見た輪があった。足首にも同じものがある。
輪一つにつき、本人の体重分。本人合わせて5人分の体重を支えているわけだ。
ただし、こっちは魔術も使うらしい。
初級魔術だからと言って、安心はできない。使い手によっては、俺の中級魔術など簡単に超える威力を出せるだろう。
安心はできない。
「では、いつでもどうぞ。」
そう言うと、レイヴンは区画の中央で構えた。
こちらを急かす様子も、近づいてくる様子もない。
「セラ、あの人の戦い方は知ってるか?」
「魔術と剣術を組み合わせた高速戦闘を得意とするわ。ただ、今は素手だし、輪のおかげでだいぶ動きづらいはず。」
「なるほど。それに魔術も初級のみだしな。」
「ええ。ただそれにはあまり期待しない方がいいわ。」
やっぱ初級というだけで、安心はできないんですね。
もしかしたら、と思い言ってみたが、真顔で訂正されてしまった。
俺は区画の中を見渡した。第一関門と同じ、土の地面に、両側はレンガの壁だ。
そういえばさっきは、耐魔レンガかどうかわからなかったな。これも後で聞いてみるか。
さて、この形なら、抜けるのは左右、もしくは上を越えるか。さっきは足元を崩して抜けたが、こいつ相手にも通じるだろうか。
「どう攻める?また俺が前に出てみるか?」
「そうね…。いえ、まずは堅実にいきましょう。さっきの一回目と同じやり方で。」
「わかった。様子見だな。」
方針が決まった。
セラが後ろからサポートしながら俺が近接戦を仕掛け、どんな対応をするのか、実際に確かめるやり方だ。
もしそのまま突破できたら、それはそれでよし。
*
「じゃあ行くか。」
俺たちは身体強化を巡らせ、青いラインを越えた。
セラは俺の少し後ろにつく。
レイヴンはまだ仕掛けてこない。
俺たちもゆっくり歩みを進める。
20m、15m。
距離が縮まっても、レイヴンは自然体のまま、中央に構えている。
10mほどになったところで、立ち止まった。
この距離なら一歩で詰められる。
俺の間合いだ。
「くるかい。」
俺は答えず、術式を組みながら、一気に飛び出す。
後ろから風の音が重なる。
セラが風初級魔術、風刃を左右へ一発ずつ放った。
二つの刃が俺の両側を抜けていく。
奴はまだ動く気配がない。
セラが『偏向』を使った。
二つの魔術が向きを変え、左右から一気にレイヴンへ迫る。
その直後、レイヴンが片手を横へ払った。
風属性の初級魔術、風動。
一気に噴き出した突風が、2つの刃を散らした。教科書にも載っているような、風刃に対する基本的なレジストだ。
まあ、ここまでは想定内だ。
その間に、俺はもう懐へ入っている。
ただの打撃では、効果は薄いだろう。組み上げた術式へ多めに魔力を流し、斜め上へ向けて発動した。
土属性の中級魔術、土穿槍。
地面から突き上げた土の槍が、鳩尾へ迫る。
レイヴンが腕を交差させた。
鈍い音が響く。
当たった。
穂先が砕け、土塊が弾ける。
槍は折れたが、その衝撃でレイヴンを上空へ吹き飛ばせた。
よし。
ただでさえ5人分の重さを支えている今、初級魔術しか使えないやつには空中で機動力を確保する手段がないはずだ。着地して追いついてくる前に、奥の線を越えられる。
「セラ!今だ、走るぞ!」
踏み込む。
セラも身体強化の出力を上げ、一気に加速する。
レイヴンの下を抜ける。
奥の青い線が見えた。
もう少しだ。
「危ない!」
セラの叫び声がした。
次の瞬間、視界の上から黒い影が落ちてきた。
レイヴンだ。
なぜ、と考える間もなく、蹴りが飛んでくる。
俺は慌てて腹へ強化を寄せた。
蹴りが食い込み、息が止まった。
体が浮く。
そのまま後ろのセラにぶつかり、巻き込みながら入り口側へ吹き飛ばされた。
土の上を転がる。
何度か跳ねた後、ようやく止まった。入口の青いラインがすぐそばに見える。
「外へ!」
その声に従い、俺は地面を蹴った。
二人とも線の外へ出る。
顔を上げると、レイヴンは追ってきていなかった。
何事もなかったかのように歩き、元の位置へ戻っていく。
「く、そ…。すまん。大丈夫か、セラ。」
「ええ。あなたは?」
「ああ。いける。」
ゆっくり息を吸う。痛みはあるが、手足は動く。
隣でセラも体を起こし、防護服についた土を払った。
「なんで急に目の前に。あいつには空中で動く方法はなかったはずだ。」
「空中で風動を使うのが見えたわ。それで、自分の体を一気に押し出したのよ。」
なるほど。そんな使い方があるのか。
だが、ただの初級魔術でそれだけの威力が出せるとは。レイヴンは今、輪を付けられているから、実質5人分の重さだぞ。
「あれだけ浮かせれば、十分いけると思ったんだが。」
「私も。」
二人そろって見通しが甘かったか。
俺は膝についた土を払い、立ち上がった。
先ほどと同じように、レイヴンはこちらを見ている。
「どうする?浮かせるのはだめだったな。第一関門みたいに「崩すなら足元」作戦でいってみるか?」
「近づければね。でも足をとってもさっきみたいに動かれたら、止めきれないかもしれないわ。」
「ああ。あれが厄介だな。」
ボルドーは、足場を崩せば一瞬だけ動きを止められた。
だが、こいつは空中からでも戻ってきた。足をとっただけで、同じように止まってくれるとは限らない。
接近するなら、あの魔術を使わせる隙もなくす必要がある。
さて、どうするか。
*
「試験時間は、残り10分です。」
声が響いた。
残り10分、あと半分か。
ここを抜けた後には、箱まで行かなければならない。
「次は、先に魔術だけで攻めてみないか?どう防ぐか、少し見てみたい。」
「そうね。今度は穿風を使うわ。」
風属性の中級魔術、穿風。
圧縮した風の塊を弾丸のように放ち、風圧で相手を打ち抜く術だ。
「俺は土穿槍でいく。」
「よし、合わせるわよ。」
さっき、セラの魔術はレジストされた。
ただ今回は、属性の違う2種の魔術だ。これに対し、どう動くのかを見てみたい。
俺たちは、青い線の前へ戻った。
*
レイヴンまで10m。
一回目と同じ距離だ。
俺たちは横に並び、それぞれ術式を組んだ。
「合わせるわよ。」
「ああ。」
セラが手を挙げる。
その動きに合わせ、俺も魔術を放った。
2つの魔術が飛ぶ。
先に届いたのは俺の魔術のほうだった。
レイヴンが右へ一歩動く。
槍が脇を抜け、背後の地面に突き刺さる。
左が空いた。
俺は踏み込んだ。
セラは『偏向』を使い、穿風の向きを変える。回避先へ向かわせたのだ。
レイヴンの掌が、その風へ向いた。
風動。2つの風がぶつかり、土ぼこりが巻き上がる。
穿風がレジストされた。
レイヴンがこちらを見る。
一気に踏み込み、こちらへ向かってきている。
速い。
俺は前へ進もうとしていた足を止める。
掌底を構えているのが見える。
慌てて腕を上げた。
一撃を受け、後ろへよろめく。腕がしびれた。
さっきみたいに腹にもらうよりマシだが、喜んでいる場合ではない。
「ダン、下がって!」
セラはまだずっと後ろにいる。
あの距離では、障壁が届かない。
追撃の一撃を避け、後ろへ跳ぶ。
レイヴンも追ってくる。拳をかまえ、さらなる一撃を叩き込もうとしている。
「くっ」
受けるしかない。
俺はさらなる一撃に備えようとした。
しかし、目の前にオレンジがかった半透明な壁が現れた。
物理障壁。
セラがこちらへ走り、届く距離まで近づいてくれたのだ。
拳が障壁を叩く。
その衝撃で物理障壁は割れたが、その隙に俺たちは、一緒に下がった。
入口の青いラインを越えたところで、足を止める。
腕を振る。指も動く。
よし、まだいける。
「どうして先に行ったの?」
「悪い。左が空いたから、いけると思って。抜けるぞ、と言うべきだった。」
「いえ。私も声掛けすべきだったわ。」
危なかった。
俺のミスで、痛手を負うところだった。
魔術を使って、相手の対応を見る。
そう決めたのは俺のはずなのに。
気を付けよう。
*
「2つとも同時に撃ったよな。」
「でも、あなたの魔術のほうが先に届いたわ。」
セラはそう言い、地面に刺さった槍を指す。
「一つずつになったから、順番に対処された。」
「ええ。合わせるのは、撃つ瞬間より届く瞬間ね。」
レイヴンが使う魔術は、一度に一つ。
風には風動を使ったが、土の槍は避けていた。
二つが同時に来れば、さっきと同じ手順では間に合わないはずだ。
「もう一度、同じ2つでいこう。今度はセラが先に撃つ。俺は少し遅らせる。」
「穿風は少し変えるわ。魔力を多めに込めて、範囲と威力を上げる。さっきみたいな小さい動きだと、避けられないくらいに。」
「ああ。魔術を撃ったら俺はあいつに向かって駆け出す。セラは俺の近くを走ってくれ。」
「わかったわ。ただ、突っ込んでどうするの?」
痛い思いはあまりしたくないんだがな。
仕方ない。
「爆土を使う。ただし、通常よりさらに魔力をこめて威力も範囲も引き上げる。」
爆土。
火と土の混合魔術で、土塊をまき散らしながら爆発を起こす術だ。
「範囲を広げるのは避けられないようにするためね。でもそんな威力出したら私たちまで…ああ。だから、私はダンと一緒に走るのね。」
「そういうことだ。爆発が起きた瞬間、セラは魔術障壁を張ってくれ。ただ走りは止めずにな。」
前日に、火魔術は使わないだろう、なんて考えていたんだが。結局使うことになりそうだ。
「魔術障壁だけでいいの?魔術による石とかは止めれても爆発で巻き上げられた土とかが防げないわよ?」
「そりゃどっちも防げた方がいいけど、二枚を広さと強度を保った状態で張るのは難しいだろ。特に今回、魔術障壁のほうはかなりの強度がいる。」
「なら混合障壁でいいじゃない。これならどっちも防げるでしょ?」
「え、使えんの?」
「ええ。」
こいつもかよ。だが、ありがたい。
「よし、それなら混合障壁でいこう。
それと、かなり魔力を込めて爆土を使うつもりだ。奥まで走るだけの魔力は残すが、もし追撃が来たら防ぐ余裕はない。」
「そこは大丈夫よ。私が守るわ。」
やだ、かっこいい。
俺がヒロインだったら、これを機に恋に落ちて、「セラと二人で紡ぐ恋愛生活~学院編~」を開幕させてしまうところだ。
いやしないが。
「ただやっぱり、もうちょい慎重に行った方がいいか?自分で言った作戦だけど、爆土まで使って失敗したら、俺は魔力がほぼなくなってしまうし。」
「そうね。その可能性はあるけれど…。」
そのとき、声が響いた。
「試験時間、残りは5分です。」
え、まじで?
もうあと5分しかないのかよ。
「いえ、この作戦でいきましょう。時間もないのだし。魔力が空になることを気にしてうじうじしても仕方ないもの。」
「それもそうだな。」
んじゃ、いくか。
*
3度目は、先の2回よりも少し近づいたところまで進んだ。
距離が近い方が魔術のずれが起きにくい。それに少しでも走る距離を短くしたいしな。
レイヴンがこちらを観察している。
次はどうする、といった表情だ。
セラがおもむろに手を上げる。
空気がゆがみ、先ほどより大きな穿風が飛び出す。
一拍。
俺も土穿槍を放ち、そのまま地面を蹴る。
セラはもう走り始めている。
穿風は斜め上方向に進み、やつの顔付近を目指しながら迫る。
その下から、土の槍が胴へ迫る。
奴が地面を蹴る。
右に避けた。
「左!」
俺はそう言い、空いた左側へ飛び込む。
セラも同じ側へ寄る。今度は、ちゃんと隣にいる。
レイヴンがこちらを向き、片手を上げた。
俺も術式を組み上げながら、右手をやつの足元に向ける。
早かったのはレイヴンのほうだ。
風動がとんでくる。
俺が術式を完成させるよりも早く、もう撃ってきやがった。
風動が目前に迫る。
それを間一髪でかわした。
そしてついに、術式が完成する。俺は残りの魔力ほぼすべてを込め叫んだ。
「くらえ!!」
魔術が放たれる。
それと同時にセラが混合障壁を発動する。
二人が入るくらいの大きさの、紫がかった透明な障壁が背後を覆った。
そして、レイヴンの足元で爆土がさく裂する。
視界が白く染まる。
次の瞬間、腹の底まで突き抜けるような音が響き、障壁が大きくたわんだ。
土の地面が裏返った。
吹きあがった土塊を火炎が押しのけ、左右のレンガの壁まで一気に埋める。
障壁に、砕けた石がいくつもぶつかった。
その向こうにいたレイヴンの姿はもう見えない。
俺は足を動かした。
セラも障壁を解除し、隣を走っている。
耳鳴りがする。
全身が痛く、煤だらけだ。
だが、爆発の直撃は防ぎ切った。
あの距離の爆発を、ここまで防ぎきるのか。
いくら準備していたとはいえ、恐るべき完成度の魔術だ。
少し先の上空に、空気のゆがみが見えた。
最初の穿風だ。
避けられてしまったから、そのまま進んでいたのだろう。まあもう少しもすれば、霧散するはずだ。
二人で、まっすぐ走る。
煙を抜けると奥の青いラインが見えた。
そのとき、背後から鋭い音がした。
肩越しに振り返ると、土煙の奥で光がまたたいた。
あれは魔術発生時の光だ。
その直後煙を裂き、石の塊が飛び出してきた。
土属性の初級魔術、礫弾だろう。
拳大の石が、次々に迫ってくる。
まだ、撃ってくるのか。
セラが振り向きざまに手を上げる。
俺たちの後ろへ、等身大の魔術障壁が現れた。
一発目。
重い音が響き、石がはじけた。
二発目。三発目。
同じように受け止める。
四発目。
面の中央へ細いひびが走った。
土煙の中からレイヴンが飛び出してきた。
煤まみれで、頭から血を流している。
それでも動きは全く鈍っていない。猛然と向かってくる。
まじかよ、こいつ。
だが線はもうすぐそこだ。
この距離なら、追いつかれる前に抜けられる。
そう思った瞬間、背後で破裂音がした。
振り向くと、障壁が砕けているのが見えた。
五発目の石が、障壁を突き抜けてくる。
まずい。
新しい障壁を張る魔力はない。
セラも、今から張り直していては間に合わない。
「セラ!!」
俺は叫び、彼女の頭をつかんでその場に一緒に伏せる。
礫弾が頭上をかすめ、飛んでいく。
何とか避けた。
だが、こんなとこで寝ている場合ではない。
跳ね起き、青い線の向こうに急ぐ。
肩越しに振り返ると、レイヴンがもうすぐそこまで迫っていた。
伏せている間に、距離を詰められたのだ。
俺たちよりも、奴のほうが速い。
もう、魔術を撃ち直す暇などない。
くそ!
あと少しだったのに。
「ダン、頭を下げて!」
俺は反射的に身をかがめた。
頭上で風がうなる。
『偏向』。
最初の穿風が、出口側から戻ってきた。
俺たちの頭上を越え、レイヴンへ斜めに落ちる。
レイヴンが足を止めた。
俺へ伸ばしかけていた手を引き、両腕を交差させる。
その腕へ、風の塊が叩きつけられた。
レイヴンの靴が土を削った。
体が、入り口側へ数歩分押し戻される。
セラが腕を引いた。
今度こそ、前へ。
俺は最後の一歩を踏み込んだ。
青い線を越える。
隣で、セラも線の向こうへ出た。
「第二関門、通過。」
その声を聞いてから、ようやく足を止めた。
息が苦しい。体中が痛い。
極端な魔力不足によるひどい倦怠感もある。
それでも、立っているのは入り口側ではない。
振り向くと、レイヴンは線の手前に立っていた。
服にも髪にも土がついている。片腕についた土を払い、ゆっくり息を吐いた。
「よく残していたね。最初の一発を。」
セラが大きく息を吐き、頭を下げた。
俺も体を起こし、どうにか一礼する。
「これで第二関門は終わりだ。試験時間は残りわずかだ。急ぐことをすすめるよ。」
そうだった。
箱をとらないと完了ではない。
「ダン。箱までは走れる?」
セラがこちらを見る。無理と言ったら、おぶってくれるのだろうか。
言わないが。
「ああ。走ろう。」
俺は、セラと並んで通路の奥へ走り出した。




