表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫡出の兄、妾腹の妹  作者: 紅月となり
第一部 妾腹の妹
10/67

1-10. オパール流・恋の進め方



 そわそわしていたオパールに声をかけると、彼女は待ってましたと言わんばかりに勢い込んで口を開いた。


「シュゼイン家の分家に、シュゼール侯爵って素敵な人がいるの!!」


 どうやら、意中の相手がいるらしい。

 既に両親と跡取りである兄の了承は得ており、今は婚約を打診している段階だという。



 年齢は、なんとウルスラたちの親世代。



 驚くウルスラたちを尻目に、にこにこと続ける。

「若い頃に奥さんと娘さんを亡くして、それ以来ずっと独り身を貫いているんだって。後妻なら、子爵令嬢でも大丈夫でしょ?」

「まあ……だろうけど」

「オパールって、歳上好きだったんだ?」

「うん!」


 オパールは、遅くにできた子だったらしい。父親は「若い祖父」と言ってもギリギリ通る年齢で、兄とは十歳ほど歳が離れている。

 下に兄弟もいない。子どもの人数が少ない一族で、他家との交流もほぼなく、友人といえば一つ上の主家のご令嬢くらい。オパールは、男性に関して言えば、完全に歳上ばかりの環境で育ったのだ。


 そのせいか、一般的に釣り合うとされる年齢の男は精神的に幼く、話していて物足りなく感じてしまうのだそう。ちょっと驚いた。

(意外……)

 男女問わず人気の高い彼女のことだから、アプローチしてくる誰かの中から選ぶのだと思っていた。


 フィフィが遠い目をして呟く。



「追われる恋より、追う恋……」


「あ……ああぁ〜……」



 そう言われると、ものすごく納得できる気がする。

 

「パパとママも、『大きな問題がなくて貴族なら、誰と結婚しても良いよ』って言ってるからね!頑張るよ!」

「その年齢差を『大きな問題はない』と言い切れるご両親、すごいわね」

 ソフィアが扇子で口元を隠しながらぼやくと、誇らしげに親指を立てる。

「伊達にシュゼイン公爵領の一切を任されてないよ!!いて」

「親困らすなって言ってんのよ」

 輝く笑顔のオパールの脳天に、イレーネがすこーんとチョップを落とした。確かに、まともな親なら一度は頭を抱えそうな話だ。



 よくよく聞くと、問題のシュゼール侯爵は、年齢差を理由に打診から逃げ回っている状態らしい。常識的な対応で安心したが、苦い気持ちになる。

(自分以外に好きな人がいる相手、かあ……)


「……オパールは、それでいいの?」

 


 すると、オパールはきょとんとした顔でこう答えた。



「良いに決まってるよ? ちょっと若い女に迫られたくらいで愛した人と娘を忘れるなんて、不誠実じゃない」



 そう言って、鈴蘭のように微笑む。

「オパールは、前の奥様と娘さんの次くらいに愛してもらえば、それで良いの」

「オパール……!」

 そして、目を、す、と細めた。




「というわけで、それまでにシュゼール家に来た縁談、全部潰すんだけど」




 しん……と静まりかえる裏庭。元気よく手を上げるオパール。



「誰か、手伝ってくれる人ー!」



「流れが変わった」


 抱きしめようとした手を、サッと引っ込めるウルスラ。オパールは珍しく真顔になって言った。

「死んだ人には勝てないし、戦う気もないけど、生きてる人間と争わないとは言ってないよ? 使えるものは友達でも使うよ?」

「そっちが本音か……」


 目が、目が怖い。


 扇子で顔の下半分を隠したソフィアは、思いっきり眉を顰めた。

「嫌よ。シュゼール侯爵家とシュゼイン一族に睨まれたくないもの」

「シュゼインのおじさまから許可もらってるから、そこは大丈夫!」

 なんでも、双方の主家であるシュゼイン家は、現侯爵の実子に家を継いでほしいらしい。「オパールが彼のことを好きなら、ちょうどいい」とのこと。いつも通りのにこにこ笑顔でオパールが言うと、イレーネが思わず仰け反った。


「うわっ、上のご意向入った」

「絶対逃げられないやつ!!」

「ひえええ」

 悲鳴を上げたフィフィが、化粧道具を放り出してウルスラにしがみついた。フィフィにくっつかれたまま、そばにいたイレーネの肩に縋り付くウルスラ。

「じゃあ二人の結婚は、ほぼ確定事項ね」

「他候補の排除は、オパールの侯爵夫人としての覚悟と能力を確認したいということかも……」

「えげつなぁ……」

 恋を知らないウルスラは、そんなことのためにそこまで頑張れる理由が、よく分からない。



「大丈夫大丈夫。本人にとっても家にとってももっと良い縁談を持ちかけるってだけだから。ね?」

「『ね?』じゃないわよ」

「にじり寄るな、怖い」

 じりじり近づくオパール、じわじわ逃げるソフィアたち。そんな中、ヘレンがぱん、と本を閉じた。

「いいわよ、手伝っても」

 そして素早く膝でにじり寄り、両手でオパールの手を握る。



「その代わり、ストーン家の影三人ほど貸して♡」

「ヘレンらしいね!オパールが預かってる分ならいいよ♡」


「交渉成立」



 話がまとまってしまった。悲鳴のような声を上げるソフィアとイレーネ。


「ヘレン!!」

「だから嫌なのよ、この腹黒不穏組ッ!!」


 フィフィがとうとう泣き出した。

「貴族、怖いぃぃぃ……」

「聞かないフリくらいできるようになりなさい、こういうのがアンタの未来の顧客よ!!」

「ヤダー!!」




 とりあえずウルスラには「シュゼール侯爵、頑張って……」としか言いようがない。



お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ