第13話:【学園祭準備】看板娘たちの衣装選び
学園祭を間近に控え、校内は色とりどりの装飾と浮き足立った熱気に包まれていた。シュウたちのクラスが出し物とするのは、ガストンが改造した移動厨房車『テツクズ号』を核とした、魔物料理の模擬店だ。
「……おい、シュウ。味はいいが、見た目が華やかじゃないと客は寄ってこねえぞ」
ガストンが持ち込んだのは、近隣の服飾ギルドから力ずくで(?)借りてきたという、山のような給仕服の試作図と現物だった。
「ちょっと! なぜ私がこんなフリルだらけの服を着なきゃいけないのよ!」
フィオナが顔を真っ赤にして、手元の衣装を突き返す。それは王女の威厳など微塵も感じさせない、可愛らしさを極振りにしたエプロンドレスだった。
「……ん。……短い。……尻尾、出ない」
ミーニャが手に取ったのは、機動性を重視しすぎたのか、極端に丈の短いミニスカートだ。銀色の猫尻尾をイライラと左右に振り、不満を露わにする。
「……ふふ。皆様、お似合いですわよ? ちなみに私は、この『因果を惑わす深紅のドレス』を……シュウ様、いかがかしら?」
リィネが優雅に、スリットの深く入った衣装を体に当て、計算高い上目遣いでシュウを見つめる。
「……何でもいい。……動きやすければな」
シュウが寸胴鍋の火加減を見ながら無関心に答えると、そこへガストンがデリカシーの欠片もない一言を放った。
「ガハハ! 姫様、そんなに顔を赤くしてちゃ、せっかくの衣装も『茹で上がったトカゲ』みたいだぜ! ミーニャも、その短いのでシュウを誘惑するにゃ、まだ『肉付き』が足りねえんじゃねえか?」
静寂。
直後、フィオナの周囲に黄金の重力波が渦巻き、ミーニャの瞳が獣のように細まり、リィネの笑顔が氷のように冷え切った。
「……ガストン。……今、何て言ったの?」
「……消す。……影の中に」
「……ふふ。……ガストン様の未来、真っ暗に塗りつぶして差し上げますわ」
「お、おい! 冗談だって! シュウ、助けろ!」
「……無理だ。……自業自得だろ」
シュウは呆れ顔で、激怒する乙女たちに追い回されるガストンを横目に、包丁を研ぎ直した。
結局、衣装はシュウが「機能美」の観点から一人一人に合うよう調整することになり、それが後に『境界線の晩餐』で彼女たちが纏う、伝説の制服の原型となるのだった。
次回予告
第14話:【学園祭当日】境界線の「出店」パニック
ついに始まった学園祭。シュウが振るう魔物料理の香りに、全校生徒が吸い寄せられる。押し寄せる客の波に、フィオナが「王家の接客」で応戦し、ミーニャの影が注文を運び……。




