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第12話:【図書室】禁書の解読と、狐の甘い罠

深夜。学園の図書室は、月明かりが差し込む巨大な迷宮と化していた。シュウは手元の小さな魔導ランプだけを頼りに、古い棚の奥深くへと指を滑らせる。

「……あった。……『境界の彼方に眠る、幻の香草録』」

 魔物の臭みを消し、その魔力を芳醇な旨みに変えるという失われたレシピ。それを手に取ろうとした瞬間、背後の暗闇から、ふわりと甘い花の香りが漂った。

「……ふふ。シュウ様、夜更かしは肌に毒ですわよ?」

 現れたのはリィネだ。彼女は豊かな狐尻尾をゆらりと揺らし、狭い書架の間でシュウを追い詰めるように一歩踏み出した。

「リィネか。……ここにある確率は、百パーセントだったか?」

「ええ。……そして、ここで私と二人きりになる確率も……計算通りですわ」

 リィネはシュウの手から古書を取り上げると、胸元に抱え込んだ。

「この本の解読、私がお手伝いしましょうか? ……その代わり、報酬をいただきたいのですけれど。……例えば、そう……」

 リィネが黄金の瞳を細め、シュウの耳元に顔を近づける。熱い吐息が触れ、彼女の指先がシュウの襟元に掛かろうとした、その時――。

(……やらせない。……影、捕まえた)

 天井の梁から、逆さ吊りになったミーニャが音もなく降りてきた。彼女の銀色の猫尻尾が、リィネの手首をピシリと叩き、シュウを背後から抱きしめる。

「……ミーニャ!? あなた、いつからそこに……っ!」

「……ずっと。……シュウの影の中に、いた。……リィネ、……ずるい。……独り占め、ダメ」

 ミーニャは無機質な表情のまま、シュウの肩に顎を乗せ、リィネをじっと見つめる。

 狐と猫。暗い書庫の中で、二人の乙女の視線が激しく交差する。

「……おい。……本を返せ。……明日の仕込みに間に合わなくなる」

 シュウが呆れたように手を伸ばし、リィネの手から本を回収する。

「……リィネ、報酬は今度の新作の試食でいいか。……ミーニャもだ」

 二人の耳が、喜びでピクりと跳ねる。

「……約束ですわよ、シュウ様。……私の計算に、狂いはありませんもの」

「……ん。……一番大きいやつ、……食べる」

 深夜の図書室。禁書を抱えた少年と、それを取り合う二人の乙女。

 静寂の中に、どこか浮き足立った足音が三つ重なり、闇の奥へと消えていった。

次回予告

第13話:【学園祭準備】看板娘たちの衣装選び

模擬店の準備が始まる学園。給仕服の試着会で、フィオナのフリフリ、ミーニャのミニ丈……。そこへ現れたガストンのデリカシー皆無な一言が、乙女たちの逆鱗に触れ……?

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