表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/59

第7話:【保健室】サボりと、影の添い寝

体育祭の喧騒が遠く響く中、学園の保健室は白いカーテンが午後の風に揺れる、穏やかな静寂に包まれていた。

 障害物競走で魔力の「結び目」を断ち切り続けたシュウは、心地よい疲労感に身を任せ、誰もいないはずの最奥のベッドへと潜り込んだ。

(……少し、寝るか。……夕飯の仕込みまでには、まだ時間がある)

 目を閉じ、意識がまどろみに沈みかけた、その時。

 シーツの下から、ひやりとした、しかし柔らかな感触がシュウの腕に触れた。

「……ん。……シュウ。……ここ、落ち着く」

 影から染み出すように現れたのは、ミーニャだった。彼女は既にベッドの中に潜り込んでおり、銀色の猫尻尾をシュウの足に絡め、当然のように定位置を確保していた。

「……ミーニャ、お前、いつからそこに」

「……ずっと。……シュウの匂い、……お腹空くけど、安心する」

 無機質な瞳を細め、喉を微かにゴロゴロと鳴らすミーニャ。その銀色の耳が、幸せそうにピクピクと跳ねた瞬間――。

「ちょっと! ガラ空きの受付を放置して何をしているのよ、……って、なっ、何なのよその状況はぁぁ!!」

 勢いよくカーテンが開け放たれた。そこに立っていたのは、救護班の視察と称して現れたフィオナだった。

 彼女の顔は、ベッドの中で密着する二人を見た瞬間、茹で上がったタコのように真っ赤に染まった。

「不純! あまりにも不純よ! 王立学園の保健室を、そんな……そんな添い寝の場にするなんて! いますぐ離れなさい、この泥棒猫ぉ!」

「……やだ。……フィオナこそ、うるさい。……シュウが、起きちゃう」

「な、ななな……! 誰のせいで起きたと思っているのよ! ……大体、シュウもシュウよ! なんでそんなに平然としているのよ!」

 憤慨するフィオナだったが、シュウが「……騒ぐなら、あっちのベッドへ行け。……眠いんだ」と力なく手を振ると、彼女の動きがピタリと止まった。

「……そ、そうね。……あんたがそんなに疲れているなら、風紀委員長代行として、……隣で監視してあげる必要があるわね!」

 結局、フィオナは反対側の隙間に強引に割り込み、シュウを挟んでミーニャと火花を散らすことになった。

 外から様子を見に来たエレインが、カーテンの隙間からその光景を目撃し、翡翠色の耳を真っ赤にしてパタパタと震わせる。

「……もう、バカばっかり……。……あんなに狭いところに三人で入るなんて、……暑苦しくないのかしら……っ」

 そう呟きながらも、エレインは自分が入る余地がないことに、ほんの少しだけ唇を噛んでいた。

次回予告

第8話:【放課後】廊下での「味見」の攻防戦

買い出しに向かうシュウを、リィネが「因果の導き」で待ち伏せる。しかし、そこへフィオナが「風紀の乱れ」を察知して乱入! 結局、三人で夕暮れの市場へ向かうことになり……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ