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第6話:【体育祭】障害物競走と「境界」の踏破

聖クロイツ学園の広大な競技場。年に一度の体育祭は、魔法と身体能力を競い合う過酷な戦場と化していた。メインイベントである「魔導障害物競走」では、強力な結界や魔導生物が配置されたコースを、自らのスキルを駆使して突破しなければならない。

「……はぁ、はぁ。……邪魔よ、そこを退きなさい!」

 先頭を走るのはフィオナだ。黄金の魔力を足元に集中させ、重力を操作することで地面を滑るように進んでいる。彼女の背後では、他の生徒たちが派手な爆破魔法や束縛魔法を放ち合い、脱落者が続出していた。

 その混沌とした集団の最後尾から、一人だけ全く異なる動きで迫る影があった。シュウだ。

「……ふん。……魔力の流れが、雑すぎる」

 シュウは腰の包丁を抜き放つと、前方に展開された巨大な氷の壁――本来なら高火力の魔法で打ち砕くべき障害物――に対し、最小限の動きで刃を振るった。

 カキィィン、と硬質な音が響く。

 次の瞬間、巨大な氷壁は「自重」に耐えきれなくなったかのように、綺麗に二つに割れて道を開けた。

「なっ、何をしたの!? 魔法も使わずに、あの結界付きの氷を……っ!」

 驚愕するフィオナの横を、シュウが風のように通り抜ける。

 だが、コース終盤には学園が放った「泥沼の魔導生物」が待ち構えていた。足を踏み入れれば最後、底なしの沼に引きずり込まれる。

(……シュウ。……ここ、通れる)

 ふわりと、シュウの足元に濃い影が伸びた。

 コース脇の木陰にいたミーニャが、音もなく地面に手を触れている。彼女の影が、底なし沼の表面を薄く、しかし鋼のように硬い膜となって覆い尽くした。

「……助かる、ミーニャ」

(……ん。……ご褒美、あとで)

 シュウは影の道を一気に駆け抜け、ゴールテープを切った。

 観客席は静まり返る。派手な魔法の応酬を期待していた者たちは、ただ包丁一本と「影」の助力だけで、あらゆる困難を『解体』して見せた少年の異質さに言葉を失っていた。

「……もう! 私の重力魔法を、あんな風に無視するなんて!」

 二位でゴールしたフィオナが、肩で息をしながらシュウを睨みつける。

 一方で、ゴール地点で待機していたエレインは、翡翠色の耳をパタパタと小刻みに動かし、複雑な表情でシュウを見つめていた。

「……あんな無茶苦茶な魔力操作、精霊たちだって見たことないって言ってるわよ……。……バカじゃないの、本当に」

 そう言いながらも、彼女の手にはシュウのための「魔力回復水」がしっかりと握られていた。

次回予告

第7話:【保健室】サボりと、影の添い寝

激闘の疲れ(?)で保健室のベッドに潜り込むシュウ。しかし、そこには先客がいた。影から這い出してきたミーニャ、そして「視察」に来たはずのフィオナまで加わり、静かなはずの保健室が修羅場と化す。

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