【第1章本編 完結】学園帰還、そして騒動の幕開け
迷宮十層の悪魔アウモデウスを討伐してから三日後。テツクズ号は迷宮入口のゲートを抜け、聖クロイツ学園の敷地へと戻ってきた。
――その瞬間。
「きゃああああああああああ!!」「帰ってきたぞ!! 生きてる!!」「十層攻略パーティだ!!」「英雄だ!! いや、怪物だ!!」
学園中が、爆発した。生徒たちが押し寄せ、教師たちが走り回り、騎士団が慌てて道を開ける。テツクズ号の周囲はあっという間に人だかりになった。
ガストンが豪快に笑う。
「ガハハ!! 歓迎されてるじゃねぇか相棒!!」
「当然よ! 十層の悪魔を倒したのよ!? 王族として誇らしいわ!」
フィオナが胸を張る。エレインは耳を押さえながら呟いた。
「……うるさい……でも……まあ、悪くないわね……」
ミーニャはシュウの袖を掴んだまま離れない。
「……シュウ、人気……嫌」
「ふふ……騒がしいですわね。でも、これが”英雄の帰還”というものですわ」
リィネが扇を開き、優雅に微笑む。シュウは静かに言った。
「……騒がしい」
――
学園長室。学園長バルドは、シュウたちの報告書を読みながら震えていた。
「十層……アウモデウス……討伐……? いやいやいや……そんな馬鹿な……あれは王国級の災害だぞ……?」
「ですが……証拠の核も……魔導炉の記録も……すべて本物です……」
副学園長が震える声で言う。バルドは頭を抱えた。
「……平民特待生シュウ……お前は一体……何者なんだ……?」
――
一方その頃、学園の中庭ではとんでもない光景が広がっていた。
「シュウ様!! 握手を!!」「サインください!!」「弟子にしてください!!」「結婚してください!!」「いや結婚はダメだろ!!」「ミーニャちゃん可愛い!!」「フィオナ様も美しい!!」「エレイン先輩の魔法すごかった!!」「リィネ様の未来視かっこよかった!!」
四方八方から歓声が飛び交い、シュウたちは完全に囲まれていた。フィオナが胸を張る。
「ふふん! 当然よ! 私たちは十層攻略パーティなんだから!」
「……ちょっと……近い……触らないで……」
エレインは耳を真っ赤にしながら言う。ミーニャはシュウの腕にしがみつき、低く唸った。
「……シュウは……渡さない……」
「人気者ですわね、シュウ様。でも……あなたの未来は、私たちが守りますわ」
リィネが優雅に微笑む。シュウは静かに言った。
「……帰る」
「えっ!? どこに!?」
「……秘密基地」
全員が笑った。
――
秘密基地(テツクズ号の横)。シュウは包丁を研ぎ、ミーニャは影の中で丸くなり、フィオナは王家の法典を読み、エレインは魔導書を開き、リィネは茶を淹れ、ガストンは新しい装甲の設計図を書いていた。
そこへ――
「シュウ!!」
怒鳴り声が響いた。振り返ると、騎士道部の団長と教師たちが勢揃いしていた。
「貴様!! 十層の悪魔を倒しただと!? そんな馬鹿な!! 証拠を見せろ!!」
シュウは静かに包丁を置き、テツクズ号の炉を開いた。中には――アウモデウスの核を浄化した魔力結晶があった。教師たちが青ざめる。
「こ、これは……本物……?」「十層の悪魔の核……?」「浄化されている……? どうやって……?」
団長は震える声で言った。
「貴様……何者だ……?」
「……料理人だ」
全員が固まった。
「……シュウ、最強」「そうよ! 私たちのリーダーなんだから!」「……本当に……料理人なのよね……?」「ええ。未来を越える料理人ですわ」「ガハハ!! 相棒は相棒だ!! それ以上でも以下でもねぇ!!」
ミーニャが誇らしげに言い、フィオナが胸を張り、エレインが呆れ、リィネが微笑み、ガストンが豪快に笑う。教師たちは顔を見合わせ、そして――
「……学園に……残ってくれ……!」「君の力が必要だ!!」「いやむしろ教員になってくれ!!」「研究室を一つ丸ごと渡す!!」「王国に推薦状を書く!!」
「……断る」
全員が固まった。
「な、なぜだ!?」
「……料理がしたい」
「……シュウは……料理人」「そうよね。あなたはそういう人よね」「……まあ……そこがいいんだけど」「未来を越える者は……自分の道を選ぶものですわ」
ミーニャが頷き、フィオナが笑い、エレインが微笑み、リィネが扇を閉じる。教師たちは頭を抱えた。
「……どうすれば……この怪物を……学園に繋ぎ止められる……?」
「簡単だろ!! 飯がうまけりゃ残る!! まずは食堂を改装しろ!!」
ガストンが笑う。教師たちが走り出した。
「食堂を改装しろ!!」「厨房を増設しろ!!」「食材予算を十倍にしろ!!」「シュウ専用の調理場を作れ!!」
学園は、とんでもない方向へ動き始めた。
――
その夜。テツクズ号の屋根の上で、シュウは静かに空を見上げていた。ミーニャが隣に座る。
「……シュウ。これから……どうする?」
「……料理をする。強い食材を探す。仲間と食べる」
ミーニャは微笑んだ。
「……ん。それが……シュウの未来」
フィオナ、エレイン、リィネも屋根に上がってくる。フィオナが言った。
「第二章ね。…始まるわよ」
「……騒がしくなるわね」
「未来は白紙ですわ。でも……あなたとなら、どんな未来でも構いません」
エレインが頷き、リィネが微笑む。シュウは静かに言った。
「……行くぞ。次の晩餐のために」
テツクズ号の灯りが揺れ、夜風が吹き抜ける。
――第二章、開幕。




