『断絶の聖剣、偽りの王の終焉』
学園の地上庭園は、もはや見る影もなかった。
黒い霧が空を覆い、狂気に取り憑かれたアルトリウスが、禍々しく変質した魔剣を振り下ろす。その一振りごとに学園の校舎が崩れ、悲鳴が上がる。
「……ヒヒ、ハハハ! 見ろ、シュウ! これが『選ばれし者』に与えられた真の力だ!」
キャンプ車『テツクズ号』から降り立ったシュウは、無言で腰の『漆黒の龍鱗包丁』を抜いた。
「……汚いな。……アルトリウス、お前の剣にはもう、何の味もしない」
「黙れッ! 貴様のようなゴミに、私の高潔さが理解できるものかぁぁ!!」
黒い翼を羽ばたかせ、アルトリウスが突進する。
だが、その刃がシュウに届くことはなかった。
「……動くな。……王の命令よ」
フィオナが黄金のオーラを全開にする。
『絶対君主の審判』。
アルトリウスの周囲の重力が数万倍に膨れ上がり、彼を地面へと叩き伏せた。
「なっ、フィオナ様!? なぜ……なぜ私ではなく、あんな男を……!」
「……ふん。……勘違いしないで。私は、ただ『本物の王』を選んだだけよ。……今のあなたなんて、見てるだけで虫唾が走るわ! ……感謝なさい、私がその醜い夢を終わらせてあげるんだから!」
フィオナはツンとあごを引くが、その瞳にはかつての仲間への、哀れみと決別の涙が微かに光っていた。
「……逃がさない。……影の檻」
ミーニャが影から無数の触手を生やし、アルトリウスを拘束する。彼女の猫尻尾は、逆立って太くなり、怒りと共に激しく空気を打っていた。
「……精霊たちよ、不純なる闇を焼き払え!」
エレインの無詠唱魔法が、魔剣の黒い霧を霧散させる。彼女の尖った耳は、恐怖に打ち勝ち、シュウを守るという決意でピンと天を指していた。
「……シュウ様。……未来の糸は、今、あなたの手の中にありますわ」
リィネが扇を広げ、勝利の因果を固定する。彼女の豊かな狐尻尾が、信頼と愛を込めて、優雅にシュウの背中を後押しするように揺れた。
「――終わりだ、アルトリウス」
シュウが、因果の隙間を縫って肉薄する。
龍鱗の包丁が、魔剣の核を正確に貫いた。
カキィィィィン……!!
黒い霧が晴れ、アルトリウスの翼が崩れ落ちる。
正気に戻った彼の瞳に、かつての傲慢さはなかった。
「……あ、ああ……。……私は……何を……。……シュウ……。……アスモデウスは……21層の……さらに下……『虚無の胃袋』に……」
アルトリウスは、最後にそう言い遺し、力尽きた。
シュウは折れた剣の破片を拾い、ガストンに投げ渡した。
「……ガストン。こいつを溶かして、最後の仕上げを頼む。……あいつに引導を渡すための、一番『硬い』やつだ」
「……おう、任せろ。……最高のやつを打ってやるよ、相棒!」
【アルトリウスの撃破:学園の解放。最下層への道が完全に開く】
【ガストンの最終錬成:『聖魔融合・断絶の包丁』の製作を開始】
21層の底。
アスモデウスは、自らの駒が失われたことに、初めて「恐怖」に似た震えを感じていた。
「……来るか、……『境界線』の捕食者よ……。……ならば、……この世界の絶望を……全て飲み込ませてやろう……」
第21話、最終決戦。
シュウと四人の乙女、そして鉄屑の職人。
彼らの歩みは、今、世界の運命を喰らい尽くす最後の一歩へと刻まれる。
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