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『墜ちた聖剣、不純なる境界』

 第15層、灼熱と極寒が入り混じる『混沌の間』。ガストンの『テツクズ号』が猛然と進む中、学園の地上では、かつてない異変が起きていた。

「……ありえん。あのようなゴミが、フィオナ様やエレインを侍らせ、深層を闊歩するなど……!」

 学園の訓練場。アルトリウスは血走った眼で、自らの聖剣を睨みつけていた。

 シュウが10層の番人を瞬殺したという報告を受けて以来、彼のプライドは修復不可能なまでに砕け散っていた。その心の隙間に、最下層から漏れ出した「悪魔の囁き」が入り込む。

「……力が欲しいか、……選ばれし者よ……。……その剣を、……真の絶望で染めろ……」

「……ああ、欲しい。あいつを……シュウを、塵にする力が……!」

 アルトリウスが叫んだ瞬間、聖剣の輝きがどす黒く変質した。

 それは、聖なる力を喰らい尽くす『魔剣・アスモデウスの残滓』。

 彼の背後から黒い翼が生え、学園の結界が内側から崩壊を始めた。

「……っ!? この禍々しい気配は……!」

 15層を巡航中のキャンプ車内で、エレインが立ち上がった。彼女の尖ったエルフ耳が、恐怖でピンと直立し、小刻みに震えている。

「……シュウ。……上、嫌な匂い。……血と、壊れた鉄の匂い」

 ミーニャがシュウの背中にしがみつく。銀色の猫尻尾は、逆立ってボサボサになり、警戒心で激しく左右に振られていた。

「……千里眼が、真っ黒に染まっていますわ。……未来の糸が、何者かに食いちぎられている……」

 リィネの狐尻尾も、不安げに力なく垂れ下がっている。彼女の予測を超えた「不確定要素」が地上で暴れているのだ。

「……アルトリウスか」

 シュウが短く呟く。彼はガストンが新調した、龍の牙を練り込んだ『漆黒の龍鱗包丁』を手に取った。

「……フィオナ。お前はどうする。あいつは、お前の婚約者候補だった男だ」

「……ふん! あんな無様な男、私の記憶にはもういないわよ!」

 フィオナが黄金のオーラを激しく放つ。彼女の瞳は、迷いなくシュウだけを見据えていた。

「……私は、私の信じた『王』に従うだけよ。……私がこの手で叩き潰してあげるわ! ……感謝なさいよね、あなたの手を汚させないんだから!」

 彼女はツンと澄ましてみせるが、その指先は「シュウのために戦える」という歓喜で熱く火照っていた。

「ガハハ! 面白くなってきたぜ。シュウ、キャンプ車の出力を最大にするぞ! 地上まで最短でぶち抜いてやる!」

 ガストンがレバーを引き、テツクズ号が岩盤を砕きながら急浮上を開始する。

【緊急事態:アルトリウスの『悪魔化』。地上にて無差別破壊を開始】

【シュウの決意:悪魔アスモデウスの前に、その『先触れ』を掃除することを決定】

「……行こう。……不味いものは、今のうちに片付けておく」

 シュウの冷徹な一言に、ヒロインたちはそれぞれの方法で応えた。

 耳を伏せ、尻尾を震わせ、あるいは黄金の光を灯し。

 彼女たちの絆は、悪魔の魔力ですら侵せないほどに、強固な一つの「家族」へと昇華していた。

 キャンプ車が地上の光を捉えた瞬間。

 そこには、黒い霧に包まれ、かつての面影を失ったアルトリウスが待ち構えていた。

「……来たか、シュウ。……死ね、……私の未来を奪った『境界線』のゴミめ……!!」

 決戦前夜の嵐。シュウの包丁が、偽りの聖剣と激突する。

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