『十層の双頭、絆の交叉点』
学園の迷宮、その折り返し地点となる第十層。
そこには、これまでとは比較にならない威圧感を放つ巨大な黒金の門がそびえ立っていた。
「……来たわね。十層の番人、……『双頭の守護騎士』」
エレインが杖を構え、鋭い視線を送る。
門の前で待ち構えていたのは、身長四メートルを超える二体の鋼鉄騎士。一方は魔法を完全に弾く鏡の盾を持ち、もう一方は物理攻撃を無効化する霊体の剣を振るう。
平均ステータスは『5,000』。本来、複数のAランクパーティが命懸けで挑む絶望の壁だ。
「……シュウ。……右、私が止める。……左、お願い」
ミーニャが影の中に溶け込みながら、銀色の猫尻尾をシュウの腰に一瞬だけ、力強く巻き付けた。「任せて」という彼女なりの無言の誓いだ。
「べ、別にあなを助けるためじゃないんだからね! 私が王女として、この門を開く必要があるだけよっ!」
フィオナが黄金のオーラを纏い、剣を抜く。彼女の『絶対君主の審判』が発動し、守護騎士たちの動きが目に見えて鈍る。
「……ふん。私が魔法を叩き込む隙くらい、作ってあげてもいいわよ。……一回だけ、特別なんだからね!」
エレインの尖った耳が、シュウの「頼んだぞ」という一言で、パタパタと激しく、嬉しそうに跳ねた。
「……ふふ。……シュウ様、私が『最良の糸』を編みましたわ」
リィネが扇を広げると、彼女の豊かな狐尻尾が、勝利を確信して優雅に、かつ力強く左右に振られた。
「――行くぞ。……ガストン、合図を」
「おう! ……野郎共、ぶちかませッ!!」
シュウを起点とした、初めての五人連携技が炸裂した。
フィオナが重力で騎士を地面に叩きつけ、リィネが「攻撃が通る一瞬の因果」を固定する。
そこへエレインの無詠唱極大魔法が魔法騎士を焼き、ミーニャの影の刃が霊体騎士の核を正確に抉る。
「……トドメだ」
シュウが、ガストン特製の『金剛晶入りの漆黒二連包丁』を抜き放った。
物理と魔法、二つの特性を併せ持つ一撃が、守護騎士たちの首を同時に跳ね飛ばす。
ドォォォン!!
静寂が訪れる。
数分前まで絶望の象徴だった番人は、今やただの鉄屑へと成り果てていた。
「……やった、わね。……ふ、ふん! まあ、私がいればこの程度、当然の結果だわ!」
フィオナが肩で息をしながら、真っ赤な顔でシュウをチラリと見る。
「……シュウ。……私、役に立った?」
ミーニャが影から現れ、シュウの腕を独占するように抱きついた。
「な、なによ! 私の方が魔法で貢献したわよ!」
エレインが慌ててシュウの反対側の腕を掴む。耳は真っ赤だ。
「……あらあら。皆さん、独占欲が強すぎますわね。……シュウ様、報酬として、今夜は私の尻尾を枕にしておやすみになります?」
リィネが妖艶に笑い、自分の大きな尻尾をシュウの顔の前に持ってくる。
「……ああ。……全員、強くなったな。……今夜は、十層到達の祝杯だ」
シュウが静かに微笑むと、乙女たちは一瞬で黙り込み、それぞれの方法で顔を赤らめた。
【パーティの成長:第十層を最短記録で踏破。全員のステータスが大幅上昇】
【ガストンの報告:『十層の魔鋼』を回収。次なる深層用装備の着手へ】
第十層の門が開き、その先に続くのは、未知の領域。
そして、二十一層の底に眠る悪魔・アスモデウスは、自らの番人があっさりと屠られたことに、暗い悦びを感じていた。
「……素晴らしい。……育っている。……その絆ごと、……喰らわせてくれ……」
ゆっくりと、けれど確実に。
シュウたちの日常は、最深部へのカウントダウンを刻み始めていた。
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