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『鉄屑の城、そして四華の休息』

学園の喧騒から切り離された、廃棄物集積場。かつてはボロ小屋だったその場所は、今や鈍い銀色に輝く堅牢な『魔鋼の砦』へと変貌を遂げていた。

「……ふぅ。これで断熱処理は完璧だ。シュウ、これならどんな高熱の魔物料理を作っても、外には一切匂いが漏れねえぞ」

 ガストンが額の汗を拭い、巨大な換気ダクトを指差した。彼は日々、シュウが持ち帰る未知の素材を加工することで、職人としての腕を極限まで磨いていた。

【ガストンの成長:固有スキルが『深淵の鍛冶アビス・フォージ』の片鱗を見せ始める。ステータス 1,150】

「……助かる、ガストン。……ミーニャ、今日は少し風が強いな」

「……ん。……シュウ、毛布。……寒い」

 影から現れたミーニャは、当然のようにシュウの隣に座り込むと、彼の上着の裾をぎゅっと掴んだ。感情の起伏が少ない彼女だが、シュウと目が合うたびに、制服の下で太い猫尻尾がパシパシとリズミカルに地面を叩いている。それは彼女なりの、最大限の「甘え」の表現だった。

 そこへ、騒がしい足音が近づいてくる。

「ち、ちょっと! 何よこの無骨な建物は! 王家の離宮とは正反対の趣味ね!」

 顔を真っ赤にして現れたのは、王女フィオナだ。その後ろには、大きな古文書を抱えたエレインも控えている。

「べ、別にあなたの顔が見たくて来たんじゃないわよ? ただ、この地下に眠る『古の封印』について、調査が必要だと思っただけなんだから! ついでに……その、お腹も少し空いたし……」

 フィオナはぷいと横を向くが、その耳たぶは火が出そうなほど赤い。典型的なツンデレな態度だが、彼女の『王威』のスキルは、シュウの隣にいる時だけ最も安定し、安らぎを感じていることを本人は認めようとしない。

「……ふん。フィオナに付き合ってあげてるだけよ。でも、この『魔導炉』の構造は興味深いわね。……あ、あそこの椅子、座ってもいいかしら? 立ち話は疲れるの」

 エレインもまた、ツンとあごを引いて椅子に深く腰掛ける。しかし、シュウが「ああ、ゆっくりしてくれ」と声をかけた瞬間、彼女の尖ったエルフ耳が嬉しそうにぴくぴくと小刻みに震えた。

「……あらあら、賑やかでよろしいですわね」

 狐耳のリィネが、扇で口元を隠しながら優雅に現れる。

「シュウ様。最下層に眠る『悪魔』の鼓動……。まだ微かですが、確かに震えています。……今の私たちは、まだその爪先にすら届かない。……だからこそ、今はこうして、力を蓄える時間が必要なのでしょう?」

 リィネがシュウの背後に回り込み、耳元で囁く。彼女の豊かな狐尻尾が、ドレスの裾から覗いてゆらゆらと、けれど激しく左右に振られた。彼女の知略は、今やこの「秘密基地」をいかに快適な、自分たちの『テリトリー』にするかに注がれつつあった。

【リィネの調査:『古の悪魔・アスモデウス』は最下層(第20層付近)に封印されていると推測】

「……そうだな。……あいつを止めるには、今の俺じゃまだ足りない」

 シュウは静かに、ガストンが打ち直した『漆黒の包丁』を研ぎ始めた。

 アルトリウスのような華やかな特訓ではない。

 仲間たちと火を囲み、魔物の肉を喰らい、少しずつ、けれど確実に「人間」を超えていく地道な時間。

 学園の四華たちが、それぞれの理由(言い訳)を抱えて、この鉄屑の城に集まり始める。

 最下層で目覚めを待つ悪魔の影など、今のこの温かな空気の中では、遠いお伽話のようにすら感じられた。

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