表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
145/215

第2章 第94話:吸い込む影 ― ノアの暴走

巨大影の残響は消えたはずだった。しかし境界に近い森の奥では、まだ微かな影の波が残っていた。その影は弱く、普通ならすぐに消えてしまうものだった。だが三体の影が存在することで、境界の影はこの世界に留まりやすくなっている。特にノアは影を吸収する力を持っている。そしてその日、巨大影の残した“影の欠片”がノアの力に触れた瞬間、予想もしなかった出来事が起きる。

森の奥の空気はまだ重かった。

巨大影が現れた場所には、普通の森にはない静けさが残っている。


セリスは観測装置を持って歩いていた。

針はゆっくり揺れている。

完全な境界反応ではない。

だが、残響は確かに残っていた。


「まだ影が残っています。」


リオナが言う。

「巨大影の痕跡ね。」


アルヴェンも森を見回していた。

「この規模の反応は王都でも観測できるかもしれない。」


その時だった。


ノアが突然止まった。


柔らかく揺れていた輪郭が、急に広がる。


地面の影がノアの足元へ集まり始めた。


リナライが驚く。

「ノア……?」


ノアは何も言わない。


ただ影を吸い込んでいる。


最初は小さな影だった。

木の根元の暗がり。

石の下の影。

草むらの黒い隙間。


それらがゆっくりノアへ流れ込む。


セリスが装置を見る。


「反応増加!」


隊員が叫ぶ。

「吸収量が増えています!」


リオナが眉をひそめる。

「止めないと。」


だがノアは止まらない。


吸収が強くなっていく。


ノアの輪郭が濃くなる。


黒が深くなる。


まるで影そのものになっていくようだった。


レンが素早く近づく。


影が細く伸びる。


レンはノアの周りを高速で回る。


だが止まらない。


ナリの核が光る。


どくん。


どくん。


ナリはゆっくり近づく。


「……ノ……ア……。」


ノアの輪郭が一瞬揺れた。


だが次の瞬間。


森の奥の影が一斉に動いた。


巨大影が通った場所から、黒い霧のような影が立ち上がる。


それがすべてノアへ流れ込む。


セリスが叫ぶ。


「巨大影の残響です!」


ノアが吸収しているのは普通の影ではない。


境界の奥の影。


巨大影の欠片。


ノアの体が膨らむ。


影が広がる。


木の影。

岩の影。

森の暗がり。


すべてがノアへ流れ込む。


リナライが叫ぶ。


「ノア……やめて……!」


ノアの声が聞こえた。


「……ノ……ア……。」


その声はいつもより低い。


深い。


影の奥から響く声。


アルヴェンが息を呑む。


「影が……変化している。」


ノアの輪郭が巨大になる。


三体の影の中で一番大きくなっていた。


レンが止まる。


レンの速度でも追いつかない。


ノアの影は広がり続けている。


ナリの核が強く光る。


どくん。


どくん。


ナリはノアの前に立つ。


「……ノア……。」


その瞬間。


ノアの影が一気に広がった。


森の地面が黒く染まる。


リオナが杖を掲げる。


「結界!」


光の輪が広がる。


だがノアの影は止まらない。


セリスが叫ぶ。


「暴走です!」


隊員が震える声で言う。


「吸収限界を超えています!」


リナライはナリを見る。


ナリの核が激しく光っている。


どくん。


どくん。


ナリはゆっくりノアに近づく。


レンも止まる。


三体の影が向き合う。


ノアの声が再び響く。


「……ノ……ア……。」


その声は苦しそうだった。


リナライが叫ぶ。


「ノア……ひとりで……しなくていい……!」


ナリの核が強く光る。


どくん!


光がノアに届く。


その瞬間。


ノアの影が大きく揺れた。


吸収が止まる。


森の影が少しずつ元に戻る。


ノアの輪郭がゆっくり小さくなる。


セリスが装置を見る。


「反応低下……。」


隊員が息を吐く。


「止まりました……。」


ノアの影は元の大きさに戻った。


だが以前より濃くなっている。


ノアは小さく言った。


「……ノ……ア……。」


リナライが静かに近づく。


「……だいじょうぶ……?」


ノアの輪郭が小さく揺れた。


ナリの核がゆっくり光る。


レンが静かに立つ。


三体の影が再び並ぶ。


だがアルヴェンはその光景を見ていた。


そして静かに呟いた。


「……影は……兵器になる。」

ノアは巨大影の残響を大量に吸収し、暴走寸前まで力を膨張させた。ナリの核の力とリナライの言葉によって暴走は止まったが、その出来事は王国の調査隊に大きな印象を残した。影はただの存在ではない。使い方によっては強力な力になる。王国はそれを理解し始めていた。影を守る村と、影を利用しようとする王国。二つの考えが静かにぶつかり始めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ