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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第87話:外の世界 ― 影を知る者たち

ナリ、ノア、レン。三体の影が村に存在するようになったことで、境界の揺れは確実に広がり始めていた。森の奥ではまだ多くの影が揺れている。そしてその変化は、ついにこの村だけの問題ではなくなっていた。遠く離れた都市でも境界波の異常が観測されていたのである。影が人の世界に定着し始めている。その事実を知った者たちは動き出す。村はまだ知らない。外の世界が影を見つめ始めていることを。

王国の北部都市アルディア。石造りの塔が並ぶ研究院の最上階で、一人の男が観測水晶を見つめていた。水晶の中では、淡い光がゆっくり波打っている。普通なら境界の揺れはここまで届かない。だが今、光の波は明らかに強すぎた。


「異常です。」若い研究員が言った。「北方境界の数値が三倍を超えています。」男は腕を組んだ。「三倍か……。」彼は王国境界研究院の主任観測官、アルヴェンだった。


水晶の光がまた揺れる。影の波だ。しかも規則性がある。「これは……。」アルヴェンは眉をひそめた。「共鳴している。」


研究員が驚く。「共鳴?境界がですか?」アルヴェンは静かに頷いた。「違う。境界の向こう側じゃない。こちら側だ。」


つまり、人の世界に影の核が存在しているということだった。


「場所は?」アルヴェンが聞く。研究員が地図を広げる。水晶の波形を重ねると、北方の森に一点の光が現れた。


「この位置……。」研究員が言う。「小さな村です。」


アルヴェンはしばらく黙った。「調査隊を出す。」その言葉で部屋の空気が変わった。「影がこちら側に固定されているなら、それは王国の問題になる。」


その頃、村ではいつもの朝が始まっていた。川辺にナリ、ノア、レンが並んでいる。ナリの核が静かに光る。どくん。どくん。その鼓動は森の影を落ち着かせていた。ノアはゆっくり揺れ、周囲の影を吸い寄せる。レンは落ち着かない影のように地面を滑っている。


ミルが笑った。「レン、また動いてる。」トオマが言う。「止まれないのかな。」ユルクが真面目な顔で言う。「走る影。」


リナライは三体を見て微笑んだ。「みんな……ここ。」


ナリが小さく声を出す。「……ナ……リ……。」ノアも揺れる。「……ノ……ア……。」レンはまだ言葉が不安定だが、小さく音を出した。「……レ……。」


その時、セリスの観測装置が小さく震えた。針がゆっくり上がる。「また境界波です。」隊員が言う。だが数値はそれほど大きくない。


リオナが森を見る。「今日は弱いわね。」


しかしセリスは違う場所を見ていた。「これは……。」針の揺れが別の方向から来ている。「外側からの観測波。」


リオナが顔を上げる。「誰かが見ている?」


セリスは頷いた。「王国の観測院です。」


その言葉に空気が少し重くなった。村の人々はまだ知らないが、王国は境界の研究を長く続けている。もし影の存在を知れば、放っておくはずがない。


リナライは首をかしげた。「……だれ?」


リオナは静かに答える。「遠くの人たちよ。」


その時、森の奥で小さな影が揺れた。境界の影が一つ現れる。レンがすぐに動く。影から影へ跳び、森の奥へ滑り込む。影はすぐに散った。レンは戻ってくる。


村人たちはその様子を見て少し安心する。影はもう恐れる存在ではなくなりつつあった。ナリは安定させ、ノアは吸収し、レンは追い払う。


三体の影が村を守っているように見えた。


しかしセリスは遠くを見ていた。「時間の問題です。」


リオナが小さく言う。「来るのね。」


セリスは頷く。「ええ。影を見つけたら、王国は必ず来ます。」


川辺でナリの核が光る。ノアが揺れる。レンが静かに立つ。三体の影はまだ何も知らない。ただこの村で生まれ、この村で存在しているだけだった。


だが遠く離れた都市では、すでに影の波が記録されている。観測水晶の光が揺れ、研究者たちが地図を広げ、王国の使者が準備を始めていた。


影はもう、村だけの秘密ではなくなっていた。


森の奥で、境界の影がまた一つ揺れる。


そして遠い都市で、アルヴェンが静かに言った。


「見つけた。」

村の外の世界も動き始めた。影の存在は境界研究院によって観測され、王国は調査隊を派遣しようとしている。ナリ、ノア、レンはまだ自分たちが世界の注目を集めていることを知らない。だが影が三体存在するという事実は、王国にとって見過ごせない出来事だった。村の静かな日常の外で、大きな物語が動き始めている。

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