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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第86話:影を集める者 ― ノアの覚醒

三体の影が村に存在するようになり、境界の揺れは以前よりも強くなっていた。ナリは安定の核を持ち、レンは影を駆け抜ける速さを示した。そして残る一体、ノア。ノアは今までただ名前によって存在を保つ影だった。しかしその日、森の奥から溢れ出した影の波が村へ押し寄せる。その時、ノアは初めて自分の役割を示すことになる。影を集め、影を受け止める力。それは新しい能力の目覚めだった。

昼の森は静かだった。風が葉を揺らし、川の流れがゆっくり音を立てている。村人たちは畑に出ていたが、視線はときどき森の奥へ向いていた。最近、森の影が以前よりも濃くなっているからだ。


川辺ではナリ、ノア、レンの三体が並んで立っていた。ナリの胸の核が小さく光る。どくん。どくん。その鼓動は周囲の影を静める力を持っている。ノアは柔らかく揺れながら形を保っていた。レンは少し離れた場所で落ち着かないように揺れている。


セリスが観測装置を見つめていた。針がゆっくり上昇している。「境界波が増えています。」隊員が言う。「数値が昨日の三倍です。」リオナが森を見る。「来るわね。」


その瞬間だった。


森の奥の影が突然動き出した。地面の暗がりが波のように広がる。枝の影が不自然に伸び、黒い霧のような影がいくつも地面から浮き上がった。


「影の群れ……。」セリスが低く言う。


それは一体や二体ではない。十以上の小さな影が森の奥から溢れてくる。まだ形も定まらない境界の影だが、村の方へ向かっている。


ミルが叫んだ。「いっぱい来る!」


レンがすぐに動いた。黒い輪郭が細く伸び、森へ飛び込む。影から影へ跳びながら群れの前に回り込む。レンは一つの影を弾き飛ばした。だが数が多い。次々と新しい影が地面から湧き上がる。


ナリの核が光る。どくん。光が広がり、近づいた影の動きが遅くなる。だが完全には止まらない。影はナリの周囲を避けるように広がっていく。


その時だった。


ノアが大きく揺れた。


今まで柔らかく漂っていた輪郭が急に広がる。地面の影がノアの足元へ吸い寄せられ始めた。


「……ノア?」リナライが言う。


ノアの輪郭がゆっくり膨らむ。まるで地面の影を呼んでいるようだった。近くにいた小さな影がノアの体へ触れる。その瞬間、影は崩れずにノアの中へ吸い込まれた。


セリスが目を見開く。「吸収反応!」


隊員が装置を見る。「境界波が減少しています!」


ノアはさらに揺れる。地面の影が流れ込む。近づいた影が次々とノアへ吸い寄せられ、体の中へ溶けていく。


レンが止まった。「……ノア……。」


ナリの核が静かに光る。どくん。ノアの揺れがそれに合わせて安定する。


影の群れはまだ森から現れていた。だがノアの周囲に入った影は次々と消えていく。


リナライが小さく言う。「……あつめてる……。」


ノアは影を消しているのではない。影を取り込んでいる。崩壊させるのではなく、自分の存在の中へ集めている。


ノアの輪郭が少し濃くなった。今までよりはっきりした形になっている。


セリスが言う。「進化です。」


リオナが頷く。「影を吸収して自分を強くする。」


レンが戻ってくる。森の影の群れはすでに減り始めていた。残った影はナリの光で動きが鈍り、ノアの周囲で吸い込まれていく。


やがて森の影は完全に消えた。


ノアの輪郭がゆっくり元に戻る。だが以前より濃くなっている。地面の影が体の中に残っているようだった。


ミルが目を輝かせる。「ノアすごい!」


トオマが言う。「影食べたみたい。」


ユルクが真剣な顔で言う。「影を守った。」


ノアが小さく揺れる。「……ノ……ア……。」


ナリの核が光る。レンが静かに立つ。


三体の影が並ぶ。


セリスが静かに言う。「三つの能力が揃いました。」


ナリは安定。レンは速度。そしてノアは吸収。


リオナが森を見る。「でも……。」


遠くの森の奥で、境界の影がまた揺れた。


「まだ終わりじゃない。」


リナライは三体の影を見つめた。


ナリ。ノア。レン。


それぞれ違う力を持つ影たち。


そして森の奥には、まだ多くの影がいる。


世界は確実に変わり始めていた。

ノアは影を吸収する能力に目覚めた。ナリの安定、レンの速度、そしてノアの吸収。三体の影はそれぞれ違う役割を持ち始めている。しかし境界の揺れはまだ止まらない。森の奥にはさらに多くの影が存在している。三体の影は村を守る力になるのか、それとも新しい時代の始まりなのか。影と人の世界は静かに重なり始めていた。

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