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夢紡ぎの街 ―感情と日常の異世界スローライフ―  作者: たむ


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第2章 第85話:走る影 ― レンの能力

三体の影が村に存在するようになってから、境界の揺れは以前よりも強くなっていた。ナリは安定の力を持ち、ノアは影を吸収して形を保つ。そして三体目の影レンは、まだ自分の性質を完全には理解していない。だがその日、レンは初めて自分の力を示すことになる。それは今までの影とは明らかに違う能力だった。影はただ存在するだけではない。世界に影響を与える存在へと変わり始めていた。

朝の川辺は静かだった。霧がゆっくり流れ、太陽の光が水面に反射している。ナリはいつもの場所に立っていた。胸の核が小さく光り、一定の鼓動を刻んでいる。どくん。どくん。その光は周囲の影を落ち着かせるように広がっていた。


ノアはその隣で柔らかく揺れている。輪郭は少し曖昧だが、名前によって安定している。地面の影がゆっくり集まり、ノアの形を保っていた。


そしてレン。レンは少し離れた場所に立っていた。輪郭が細く、常にわずかに動いている。落ち着かない影だった。


ミルがそれを見て言った。「レンっていつも動いてるね。」トオマが頷く。「ナリは動かないのに。」ユルクが真面目な顔で言う。「違う種類の影。」


その時、森の奥で影が揺れた。小さな影が地面を滑るように動く。境界から漏れた不安定な影だった。まだ形を持たない弱い存在。だが村の方へ近づいている。


セリスが装置を見る。「境界漏れです。」リオナが言う。「小さいけど放っておくと増えるわね。」


ナリの核が光る。どくん。その光で影の動きが一瞬止まる。だが完全には止まらない。弱い影が森の中を滑るように逃げる。


その瞬間だった。


レンが動いた。


黒い輪郭が一瞬で細く伸びる。影が地面を滑る。まるで矢のように森へ飛び込んだ。


「速い!」トオマが叫ぶ。


レンは木々の影を踏むように進む。足が地面につく前に次の影へ移動している。影から影へ跳ぶような動きだった。


森の奥の小さな影が逃げようとする。だがレンはその前へ回り込んだ。影がぶつかる。黒い輪郭が交差する。


次の瞬間、小さな影が弾かれた。影が崩れ、地面に広がる。


レンは止まる。輪郭がゆっくり戻る。


リナライが森へ駆ける。「レン……!」


レンは静かに立っていた。逃げていた影は完全に崩れて消えている。


セリスが装置を見る。「速度波形……。」隊員が言う。「今までの影にはありません。」


リオナが静かに頷く。「能力ね。」


ナリは安定。ノアは吸収。レンは――移動。


レンがゆっくり歩いて戻る。ミルが目を輝かせる。「レン速い!」レンの輪郭が少し揺れる。まるで照れているようだった。


ナリの核が小さく光る。ノアが柔らかく揺れる。三体の影が再び並ぶ。


だが森の奥ではまだ影が揺れている。


セリスが静かに言う。「三体それぞれが役割を持っています。」リオナが腕を組む。「つまり……。」


「境界に対抗する力になる。」


リナライは三体の影を見る。ナリ。ノア。レン。それぞれ違う存在。それぞれ違う力。


レンがもう一度小さく動く。影が地面を軽く滑る。その動きは確かに速かった。


村人たちは驚きながらもその光景を見守っていた。影は恐れる存在だったはずだ。だが今は違う。影は村を守る存在になり始めている。


ナリの核が静かに光る。ノアが影を集める。レンが前へ出る。


三つの影がそれぞれの力を持って立っていた。


そして森の奥で、境界の影がまた一つ揺れた。

レンは初めて自分の能力を示した。それは影から影へと移動する驚くべき速さだった。ナリは安定、ノアは吸収、レンは速度。三体の影はそれぞれ違う役割を持ち始めている。だが境界の揺れはまだ止まらない。森の奥にはまだ多くの影が存在している。三体の影はこの村を守る存在になるのか、それとも新しい変化の始まりなのか。物語はさらに大きく動き始めていた。

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