もう一度
朝奈さん視点
「露ちゃん……」
「え!? ゆかなん、どしたん!? なんか元気ないやん」
柏木君とのカラオケの後、私は露ちゃんに電話した。今日のことを露ちゃんに話すことで、自分の中のモヤモヤを晴らしたかった。
他愛のない話を少ししてから、本題に入る。
「……露ちゃん、実は私、柏木君のことが好きで……」
「でしょうね。ほんで?」
「うっ……今日ね、カラオケ終わって帰ろうとしてる時に、柏木君に告白しようとしたんだけど……」
「えっ!!? 告白!? その感じ、まさかゆかなん振られたん!?」
「ふっ、振られてないよ! ……でも、最後まで言えなかったの。カラオケの部屋の電話音にびっくりしちゃって」
「好きですって言えんかったん?」
「うん……」
モヤモヤする。そして残念な気持ちが、私の心を渦巻く。柏木君に好きだと伝えられなかったこと。あと少しだったのに。
「ゆかなん振る男なんかおらんと思うけどなぁ。カラオケも二人きりで歌ってたんやろ?」
「うん。あと、急に抱きしめられた……」
「はぁ!!?」
ガン!! と通話の向こう側で、何かがぶつかる音が聞こえた。私はびっくりして、スマホを落としかけた。露ちゃんの語気が荒くなる。
「んなもん、告白したらいけるやろがい!!」
「ううっ! お、怒らんとってよぅ、露ちゃん。うちなりに頑張ってるもん……」
「次、柏木さんといつ会うん!?」
露ちゃんは怒ってるような勢いで、私に聞いてきた。露ちゃんを知らない人がこの声を聞いたら、怒ってるに違いないと思うだろう。決して怒ってるわけではないことは、露ちゃんと長年の付き合いのある私にはわかる。
露ちゃんは感情が昂ぶると、ちょっと言葉が乱暴になりがちなのだ。
「こ、今週末」
「ゆかなんの家やんな!?」
「そうです……」
「次は、ぜっったい伝えるんやで、ゆかなん!! 絶対、告白成功するから!! うちのお墨付き!!」
耳がぐわんぐわん唸るほどの大声で、露ちゃんは私にそう言う。
「ほ、ほんま?」
「あったりまえやん!! 失敗したら、うちのことしばいてもええからな!!」
「し、しばかへんよ」
「告白するんやで! 絶対!!」
「……わかった……露ちゃん、うち頑張るな」
「うん!! 頑張って、ゆかなん!!」
露ちゃんの励ましで、私はまた告白できる勇気をもらえた。頑張ろう。好きな気持ちを、もう一度柏木君に伝えるんだ。
「ありがとう、露ちゃん」
「うん!! また結果聞かせてな!」
ばいばいして、露ちゃんとの通話を切る。ベットで寝転んで、天井を見つめた。柏木君に告白することを考えると、頬が赤くなる。ドキドキする。
「……うん、頑張ろう」
スマホをぎゅっと握って、そう呟いた。




