第十一話 「砂丘での話」
向かう場所は同じ。名も知らぬ彼女はそう言った。
リーとシエンは同じ思いを持っただろう。
何故この女は私達の情報を知っているのか、と。
「ん?何か不審感を抱かれているな?そりゃそうか。そうだよなぁ、あははははは」
「…」
「お前らは借金返済の為にレンの所で教育されてからここに来てんだろ。…ん。ますます警戒心が強くなったな」
「……どこで情報を得た?」
「得るも何もずっとあいつと繋がってたんでな。常に情報を貰っていたさ。奴からは迷宮攻略にあたっての保護者になれって言われたからお前らを追って来たって訳」
「だからあんたらの名前も知っとるよ。白の美人ちゃんがリー・センオウ。黒の地味な方がシエン・センオウ。合っとるやろ?」
「地味だと…」
「信用して良いんですか?」
「あぁ。別にずっと信用してくれなくても良いんだぜ?どうせ迷宮攻略したら無くなる関係だしな」
「まぁなぁ。リーちゃんは可愛いから迷宮攻略した後もお眼鏡にかかりたい感じあるんやけどな」
リーがその言葉を聞いた後に露骨に嫌そうな顔をした。それを見て、女がハオと呼ばれた男に拳を振り下ろす。
「いってぇ!?」
「お前は色目を向け過ぎだ。シエンもリーも引いてるぞ」
「ぬー…。良い女に目移りするのは男としては普通やろがい!なぁシエン!」
「俺は目が見えなくなってからそういうのは無くなったな」
「兄様、それだと目が見えていた時は女の人をジロジロ見てた事になります」
「間違ってはいない」
「え?」
シエンの裏切り発言によってリーの顔がさらに険悪になる。その様子を見て、女が吹き出した。
「はははははははっ!そんな所に居たら男の性のせいで汚れるよ?おいでリー」
「何が汚れるやバカタレがっ!儂ら男にとっちゃこれが正常やわ!」
「あーはいはい。もういいよ。取り敢えずシエンとリー」
ひらひらと手を払いながら呼ばれたので二人は返事をする。
それを聞いた後、女が言った。
「一緒に行ってくれるのか?」
「えぇ。保護してくれるのならそれで」
「俺も構わん」
「ふぅん。なら私の名前を教えよう。私の名前はチィ。チィ・ファン。んでそっちで難癖ぶーたれてたヤリチン男がハオ・ベイ。よろしく」
「だぁれがヤリチンじゃアホ!儂は一度も女を抱いた事ないわ!」
「あはは…知らない言葉が横行してますね…」
「知らなくていい……お前は純粋でいろ」
「あぁ……はい」
そんなこんなで砂丘の真ん中でギャン騒ぎが始まり、その騒ぎについていけていなかったリーとシエンはしばらくの間二人ポツンと取り残されたのだった。
その後日が傾いてきた為移動する事になったものの、見渡す限り砂景色なため、休む場所もなく、仕方なくチィが簡易的なキャンプを作り上げ、そこで一夜を明かす事になった。
「なぁリーちゃん一緒に寝ようさ!」
「いえ、遠慮しておきます…」
「お前はシエンと寝とけ。リーは私の腕枕で寝るんだ」
「あっお前!おいコラ男女テメェ!ズルいぞ!」
「ズルくねーし。女同士で寝て何が悪いってんだ。なぁ、リー」
「リーは人気者だな」
「嫌な人気者なのです…」
リーは溜息を吐いて肩を落とした。この数時間で心から疲れ切ったようだ。
そんなリーの様子を察して、シエンが頭を撫でていると、喧嘩が終わった二人が、それを見て。
「やっぱり兄妹で寝かせようや」
「そうだな。お前でもまともな思考回路があってよかった」
「お前、絶対許さへんからな」
「いつもの事だろぉ?」
という事で結果的に兄妹で寝る事になって、リーの身の安全は保障された。
リーは美人の人って辛いんだなぁ、と今日初めて痛感したのだった。




