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しょうもない小悪党の掃き溜めに居たのは、重要参考人、帯雪 参覚ではなく
助手、峯子の爆破実行犯、緋鋸 香。
「こっちには気付いてねっすね。」
「よし。しかしどう近づくかな。」
「今、追跡と消音の許可を申請した。少し待ってくれ。」
牙鳥め、技術にすぐ頼るのは二流のやることだ。」
「お前だってどうやって追うつもりなんだよ。ほら、許可が出たから行くぞ。」
緋鋸の進む位置が、これまで端末から見ていた足跡ではなく、線路のように視認される。
歩いて追う、が、音のしない自分の歩行は普段と違った違和感がとてつもなく、当然音がしないと気配も感じ取られづらいため、通行人にぶつからないよう気をつけて歩かなければならない。
技術は時に便利だが、普段通りの生活に支障をきたす事があるから嫌いだ。
掃き溜めを出、都市の大通りに出る。
「なんだかまとまりのない動きっすね。ここの道来んなら、さっきの曲がりだと遠回りっすよ。」
「気付かれてる可能性もあるかもしれない。峯住、何時でも捕えられるようにはしておいてくれ。」
「こんな人目の着く場所で騒ぎは起こしたくないんだが。」
緋鋸は道を曲がる。線路に続き、後を追う
が。
線路は途切れ、いや、線路の部品だろうか、細長い金属の柱が幾重にも積み重なり、向かいのビルにも届きそうな程の塔を築いている。
「緋鋸は跳躍の技術をよく使うんだったな。」
「飛んで移動した時の追跡って、こんな挙動なんすね。初めて見たっすよ。」
「そんなこと言ってる場合か二人とも。」
ああ、そうだ。路上のショートカットにしても、ビルを飛び越えてまでの移動は不自然だ。
どうやら、気づかれていたみたいだな。
「どうする牙鳥?」
「歩行に梯子を申請してくれ。」
「おい、いくらなんでも頼り過ぎだ。」
「俺はお前みたいに何もしなくても何とかなる奴じゃ無いんだ。峯子補佐官。」
「出来てるっすよ。その組み合わせならビルの素材的にも磁力に歩行の方がエコかもっすね。」
はぁ、軟弱者共が。
「行くぞ峯住。線路はまだ続いてる。」
ビルの屋上からは(ビルの壁を歩く道中には、いくらかの曲がり道、つまりは跳躍の方向を変えた跡があった)、屋上同士を伝ってなお続く線路と、遠目に見える緋鋸の影が見えた。
「いちおー、跳躍に調整を加えておくんで。」
峯子が申請を送る。
「俺はいい。これ以上頼ってたまるか。」
「全く古い人間だな峯住は。落ちても知らんぞ。」
なんとでも言え、技術に頼って一人じゃ何も出来ない奴に、この幅すら飛べないんなら話にならん。
数棟の屋上を伝って線路を辿る。
再び線路は途切れ、今度は真下に向かって突き刺さるように金属柱が連なる。
気づけばビルの高さは15階も無い、一般家屋のような小ささになっていた。
この程度ならまだ飛べる。
「先に行くぞ。」
降りるための技術を申請している二人をよそに、地上へ降りる。
ぬち
ん、廃棄所か?」
何かを踏んだ。柔らかで、沈むような感覚に襲われる。
足を離して踏んでいたそれを見る。
ぬち
足を離してもまだゴミが埋め尽くされているようだ。足の踏み場に困る。
いや、
違うな。
「緋鋸…?」
二回目に踏んだのは、何かの中身だ。それが何かは想像したくはないが、この光景を前に想像は難くない。
体内のあらゆるものを吹き出し、血潮に塗れ横たわる緋鋸の姿が、地面に転がっていた。




