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この仕事も初めて長い。
たかだか血塗れの人間ひとりやふたりに慄く程の肝の小ささでもない。
だが、この地面に横たわる、緋鋸、と思われる(首が丁寧に残っているので間違いはないだろうが)その体のパーツには、俺が踏んでしまったとはいえ違和感がある。
そのどれもこれも、緋鋸の体に収まるには小さすぎる。
転落でできるような外傷ではない。明らかな第三者の犯行、切り裂かれたような痕。
この状況で疑うとなれば錦海か帯雪だが、話を聞きに行った限り、錦海は緋鋸を殺す動機が無い。帯雪もこの場に戻ってくるような間抜けでは無さそうだが、帯雪が殺人の依頼をしている可能性は高い。
しかし、殺すなら転落死のように見せかけるか切り裂くだけでいいはずだ。何かしらの技術、あるいは違法物品で臓器を収縮させる必要は無い。
とりあえず、峯子と牙鳥がここに着くまではそのままにしておきたいが、一応、掃除の依頼を対応庁に送信する。これでしばらくすれば他の対応家も調査と清掃に現れる。
「宇由先ぱーいって、うおあ!」
びちゃちゃちゃ
飛び降りながら綺麗に吐くな!
「ぇ…っほ。こんなの見て平気なんすか…う、」
「おい、現場を汚すな。このくらい慣れろ。」
「見慣れている俺たちが異常だと理解すべきだ牙鳥。」
とりあえず、二人に状況を話す。
「臓器を収縮させた…。」
「うー、気持ち悪い…。」
気味悪がりつつもそこらに散らばる緋鋸の遺体に近づく。
「…。うん?あっ」
「おい、吐くならあっち行け。」
「いや、吐きたいのは山々なんすけど、さっき食べてきたカレーは全部出ちゃって。って」
そうじゃなくて、と。
峯子が遺体の写真を並べる。
「これ、臓器の数が足りないっすよ。」
「潰れてなくなったとかじゃないのか?」
「まさか踏んだのかお前。」
「…。」
「それもありそうなんすけど、ちょっと違うかもっす。」
捻れた紐のような体内の何かを写した写真を2枚並べる。
「ここ、間の箇所が千切られてんすよ。意図的に切らねーと出来ねーっす。」
「これ、体のどこなんだ?」
「ここら辺っすね。」
とんとん、と、腰の上あたりに指を当てる。
「腸?」
「外部アダプターっすね。本来なら着いてない臓器なんすけど、消化器官の治療用だったり、薬の作用を強めるために使われたりするんすけど、緋鋸さん、なんか病気してた…ことは無いっすね。なんでつけてんだろ。」
「麻薬の効果増幅にも使えたりするんじゃないか、峯子補佐官。」
牙鳥が清掃をしに来た対応家を引き連れてこちらにやって来た。
「あー…、出来なくはー、ないとは。」
「なんだ、曖昧だな。」
「分からないこともあるだろう、補佐官、君のOLDで調べられそうなことは調べておいて欲しい。」
「ういす。」
「さあ峯住、後は清掃班に任せよう。」
「殺害方法と容疑者の足跡は?」
「個人は特定できなかったが、血痕の位置から足跡を特定できた。追うことは出来る。」
よし、行くか。
くぅ
「…へへ、」
「吐いたらすぐ空腹になるのか、便利な体だな。」
「いやー、いくら人体が進化しても、腹の虫は変わんねーっす。」
足跡を辿りつつSELFYでも探すか。




