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75 割り込み


「馬車を追っているのはデスサイか!?」


 慌てて駆け寄ってきた騎士の報告を聞き、現場には再び緊張が走る。


「はい! 先ほどの2匹よりも一回り大きく、恐らく群れのボスかと思われます!」


 なんという事でしょう。デスサイとは群れる魔獣だったようです。


 Aランク魔獣が群れるとか卑怯すぎじゃね?


 とにかく、追われている馬車を助けなければ。


「エヴァン、俺達でデスサイを止めよう。その間に騎士団には馬車を誘導してもらえば助けられる」


 何とか相手の気を引き、その間に馬車を安全な場所へ。これが基本的な考えだろう。


「だが、デスサイは走り出すと手が付けられん。どうする?」


 デスサイの突進力は凄まじく、分厚い壁すらも突破するとエヴァンは言う。


「俺が土ロックと身体強化を駆使して間に入るよ」


「ばっか! 無茶言ってんじゃねえ!」


 俺の提案を一蹴したのはレッドだった。


 だが、自信があった。俺の中には確かな自信と確信が。


「俺が間に入って少しでも時間を稼ぐ。その間にエヴァンとレッドが何とかしてくれるだろ?」


 訓練を経て、俺は2人の事をよく理解できた。


 彼らは強い。強く、頼れる友達だ。


 2人になら命を預けられる。そう胸を張って言える。


 まさかハタチ過ぎてこんなにも頼もしい友達が出来るなど思ってもいなかったが、自分の運命に感謝すべきだろう。


「お前……」


 俺が笑って言うと、レッドは拳を強く握る。


「その信頼に応えてみせよう」


 トン、と俺の胸にグーパンチしたのはエヴァンだった。彼もニヤリと笑って、俺の目を見る。


「ああ! ちくしょう! わかったよ! 任せとけ!」


 レッドがガシガシと頭を掻きながら叫んだ。だが、レッドが俺を見る目はエヴァンと同じ。瞳の中には炎が宿る。


「今すぐ街道の封鎖を解け! 馬車を通過させた後、デスサイを止める! 騎士団はその間に馬車を安全地帯まで護衛しろ!」


 エヴァンが作戦を告げ、俺達は街の方角にある封鎖地点で待ち構える事となった。



-----



 封鎖地点に赴き、街道を封鎖する為のバリケードを撤去。


 あとは馬車が通るのを待つだけだ。


「もうすぐ通過します!」


 馬車の様子を見に行っていたケンタウロス族の騎士がこちらに駆けて来ながら告げる。


「向こうで矢を撃って、多少距離は稼ぎました!」


 3人のケンタウロス族は矢を持って馬車に近づき、並走しながら後ろにいるデスサイへ牽制を行って距離を稼いでくれた。


 両者の間にあるのは50メートル弱。間に割って入るには十分だ。


「来たぞ!」


 エヴァンが指差す先に、2頭の馬が牽引する馬車の姿が。


 キャビンには金や銀の装飾がなされ、一目で商人が使う商業用の馬車と違うと分かった。


「あれはエリオス王国の貴族馬車か」


「旅行中に巻き込まれたか?」


 なるほど。ああいった装飾されたキャビンは貴族用の馬車か。


「通過します!」


 ドドド、ドドド、と馬の全力疾走。


 一瞬だけ見えた馬の表情は焦っているようにも見えた。まぁ、当然か。後ろからヤベーのが追って来るんだ。


「ユウキ!」


 馬車が封鎖地点を通過するとエヴァンの合図で俺は街道に飛び出す。


 前方には先ほどよりも大きいデスサイ。


「土ロック!」


 追って来るデスサイの足を狙い、土の拘束を仕掛ける。


 土が動き、デスサイの足を絡め捕るが、トップスピードに乗ったデスサイの勢いは土の拘束をそのまま突き破った。


 しかし、これで良い。一瞬拘束した事で相手のスピードが少し落ちた。


 俺は身体強化を全力で起動。


 剣の腹を相手に向けて、やや体を前に突き出しながらどっしりと構える。


「ブモォー!」


 相手が吠える。


 どけどけ、死にてえのか! と言わんばかりに。


 次の瞬間には俺の構える剣と相手の頭がぶつかった。


「おおおおッ!」


 割り込む事に成功したものの、とんでもないパワーだ。


 きっとダンプカーやらトラックに轢かれて異世界転生してしまう主人公はこんな衝撃を生身でモロに食らったに違いない。


 そりゃ死ぬわ。


 割り込み停車を仕掛け、剣の腹で相手を受け止めるが、踏ん張る足はガリガリと地面を削りながら後退していく。


 そのまま押し込まれるように後退し続ける俺の体。


 少しでも力を抜けば足が縺れてバランスを崩せば、たちまち踏み殺されてしまうだろう。


「ブースト!」


 ここで新たに開発した魔法を投入。


 魔法名は『ブースト』


 プじゃない。ブだ。濁点だよ。


 それは以前使ったケツから風を出して推進力にする魔法だ。


 前は悪戯に風を生み出すだけで、ケツから180度方向に風をぶっぱなすだけであったが今は違う。


 魔法をブラッシュアップさせ、噴射方向を狭める事によって無駄を省き効率化。そして、より強い推進力を得た。


 高速移動にも、今のように相手と力比べする時にも使える便利な魔法だ。


 ブアアアッと風の大噴射が俺の体を支える。 


 すると、相手の勢いに押されて後退していた俺の体は徐々に止まり始め――デスサイの突進を完全に止める事に成功した。


「エヴァンッ! レッドッ!」


 俺はデスサイと近距離で睨み合う中、2人の名を叫ぶ。


「応ッ!」


「ナイス!」


 エヴァンの大剣とレッドの剣がデスサイの首元に突き刺さる。


「ブモォォッ!!」


 だが、巨体すぎるが故に2人の攻撃だけでは仕留められなかった。


 2人が武器を引き抜き、2度目の攻撃を加えたところで――


「英雄様に続けえええ!」


 エリオス王国とルーベンス王国の騎士が武器を手にデスサイへ殺到。


 ザクザクと剣や槍を突き刺し、その巨体を地面に倒した。


 ドスンとデスサイが地面に倒れると、エエヴァンは大剣を掲げる。


「やったぞ! 我々の勝利だッ!」


「「「 おおおおッ!! 」」」


 割れるような戦士達の雄叫びが街道のど真ん中で木霊した。


ストックが残り僅かなのであと2話で毎日投稿は終了します。

終了後は3日に1度程度の投稿となる予定です。

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