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74 3人連携


 2匹のAランク魔獣の姿が目撃されたのはエリオス王国とルーベンス王国の国境沿いにある街から、やや南に向かった街道であるという。


 所属領土で言えばエリオス王国国内。


 街道沿い東には廃鉱のある山があり、騎士の話ではその廃鉱を住処にする魔獣が街道まで降りて来たのではなか、との事だ。


 最初のコンタクトは2日前。


 2匹の魔獣は街道を行く街道警邏騎士団に襲い掛かり、警邏騎士達は2名の負傷者を出しつつも何とか追い払う事に成功。


 魔獣は北東へと駆けて行き、山に戻ったと思われたが再び街道沿いに姿を現したのが数時間前。


 数日前から街道警備を厚くしていた騎士団と再び遭遇するも、彼らを無視して真っ直ぐに街道を北上。


 国境沿いの街の手前にある林の中――Eランク魔獣が多く生息し、初心者ハンターの狩場になっている場所で弱い魔獣を喰らっているとの追加報告がなされた。


 Aランク魔獣の強さは凶悪の一言に尽きる。


 ジャック爺さんやガウルさん、スレイさんやエヴァン達のような猛者でなければまともに相手できない。


 それも2匹となれば人族の猛者達でも手に余る。


 国境沿いに常駐している両国の騎士団総出で掛かっても勝てるかどうかは賭けとなり、王都にある本隊も加えなければ確実とは言えず。


 よって俺達に援軍要請が入ったという訳だ。


 現在は目的地に向かう馬車の中で、俺達は両国の騎士団隊長を加えて作戦会議を行っていた。


「2匹か。……我々が先に突撃し、騎士団はバックアップしてくれ」


「承知致しました」


 両国の騎士団隊長から詳細を聞き、Aランク魔獣を何度も倒した経験のあるエヴァンすらも悩みに悩んで結論を出した。


「最悪、ユウキの結界をアテにしてしまうが良いだろうか?」


「ああ。勿論だ」


 エヴァンの提案に俺は頷く。こういう時にこそ使うべき力だ。出し惜しみは無しでいこう。


 まずは最初の当たりを決め、大まかな流れを騎士団に伝える。


 その後は俺達がどう戦うか。


「相手はデスサイだ。突進が一番の脅威となる」 


 エヴァンに魔獣の特徴を問うと、デスサイ――鋭利な一本角を生やしたサイで肉厚な体を持つ魔獣だそうで、騎士の人が持っていた魔獣図鑑の挿絵を見たら日本にいたサイと同じフォルムであった。


 違いとすれば、とっても大きいって事かな。


「ユウキが1匹を抑えている間に俺達が1匹を仕留めるか?」


「この前のイノシシとどっちが強い?」


 レッドの作戦を肯定する前に、俺はこの前に戦った2つ頭のあるイノシシと比較するべく問う。


「どっちもどっちだな。突進力で言えば、今回の方が強い」


 なるほど、と俺は頷いた。


「高出力の土ロックを2匹同時に初手で使う。少なくとも10秒は抑えられるはずだよ」  


 やれるという確信があった。


 俺の中にある莫大な魔力をつぎ込めば足止めは容易に行えるはず。


「じゃあ、キモは俺達か」


「どれだけ早く1匹仕留められるかだな」


 今回の一番難しい点は、相手が2匹だという事。


 1匹になれば総攻撃で仕留められる確率はグッと上がる。


「最速か。前にやった作戦で良いんじゃないか?」


 俺は訓練中に遭遇した複数の魔獣を相手にした時に編み出した連携を頭に浮かべて提案。  


「うむ。そうしよう。ダメだった時は相手の足を重点的に狙い、動けなくする作戦に変えよう」


 エヴァンも俺の提案を肯定。


「よし、じゃあ準備するぜ」


 レッドは足のナイフ入れにある短剣を2本抜く。


 抜いた短剣の刃に騎士団から支給された毒を塗り込んで刃を紙で包んだ。


 俺は馬車の奥で魔力水を生成。コップ一杯分掬い取ってエヴァンに渡す。


 この中で一番のアタッカーとなるエヴァンは大剣のチェックをしながら、手渡された魔力水入りのコップを受け取った。


「もうすぐ到着します!」


 準備をしていると、御者をする騎士の声が聞こえる。


 それを聞いたエヴァンは魔力水を飲み干して戦闘準備は完了。


 現場に着くと両国合わせて100名ほどの騎士達がいた。彼らは緊張を張り詰めていたが、馬車から降りて来たエヴァンを見るなり安堵の表情を浮かべる。 


「あの木より奥にいます」


 隊長が現場で魔獣の動向を探っていた部下に話を聞き、俺達へ伝える。


 既に現場の騎士達も戦闘準備は完了しており、俺達はさっそく討伐へ向かう。


 指差された先の木を少し越え、先をよく見れば確かに2匹の魔獣が餌を食べていた。


「よし、隊長。手筈通りに」


「承知しました」


 エヴァンの言葉を聞き、隊長は中腰になりながら見つからないよう後方へ。


 俺達が飛び出した後に騎士団へ指示を飛ばす役目だ。


「よし、準備は良いか?」


 俺がエヴァンとレッドに問うと2人は無言で頷く。


「行くぞ!」


 バッと木の影から最初に飛び出したのは俺だ。


 相手が俺の姿を認識するが、もう遅い。


「土ロック!」


 目で2匹の魔獣を捉え、魔力を多く注ぐとイメージした土ロックを発動。


 魔獣の足元にある土がモコモコと動き出し、足を包み込みながら相手の胴体付近まで膨れ上がる。


 突然の出来事に雄叫びを上げながら体を動かす魔獣であったが、


「シッ!」


 次に飛び出して来たレッドが空に飛び跳ねながら短剣を放つ。


 放たれた短剣は左側にいた魔獣の目に突き刺さると、相手は痛みで暴れ回る。暴れて土ロックを強引に解除するが、想定内。


「もう一丁!」


 暴れ回る左側の魔獣に俺はもう一度土ロックを発動。強引に拘束を解こうとする魔獣の動きを再度封じ込めた。


 尚も暴れる魔獣であるが、レッドの放った短剣に塗り込んだ毒が回ったのだろう。


 徐々に暴れる勢いが落ちていく。


「ぬあああッ!」


 最後のシメは魔力水で魔力強化されたエヴァン。


 彼は左側の弱った魔獣を狙わず、まだ無事な右側の魔獣を狙う。


 魔力水を飲んだ事で体内の魔力は一時的に底上げされ、エヴァンの使う身体強化も1ランクアップされた状態に。


 いつも以上に強くなったエヴァンは、地面を爆発させるほどの勢いで突撃。


 突きの構えを取って、相手の脳天目掛けて大剣を力任せに押し込んだ。


 重撃という言葉がピッタリな程の突撃力で見舞った突きは容易に魔獣の頭蓋骨を粉砕し、一撃で魔獣を仕留めてみせた。


 これが俺達の編み出した対複数戦の連携だ。


 俺とレッドが他の魔獣を弱体・拘束して時間を稼ぐ間に、最大火力のエヴァンが各個撃破する。


 脳天を破壊された魔獣は絶命し、残り1匹。


「全員で仕留めるッ!」


 大剣を引き抜いたエヴァンがそう叫ぶと、俺とレッドも突撃を開始。


 レッドは腰に差していた剣を引き抜き、俺も剣を持って走る。


「上から行くッ!」


「オッケーッ!!」


 俺はケツから風魔法を噴出させ、2人の邪魔にならないよう上空へ。


 地上ではエヴァンが大剣を引き抜いた勢いのまま、横薙ぎに一撃を加えて。


 駆け付けたレッドが首元に剣を突き入れる。


「おおおッ!」


 そして、上空から落ちる俺は剣の刃を下に構えて急降下。重力の手助けもあり、勢いは十分。


 俺の剣は相手の首元に刺さって、俺自身は相手の胴体に着地した。


 俺達の連携によって残りの1匹も負傷者を出す事無く撃破する事が出来た。


「うおっと」


 俺は地面に倒れる魔獣の首から慌てて剣を抜き、地面にジャンプ。


「倒せちゃったね」


「うむ」


「楽勝だったな」


 イエーイ! とハイタッチして喜ぶ俺達。


 笑顔で振り返れば、後方でポカンと口を開けたまま固まる騎士団。


「さ、さすがです」


 困った顔で何とか言葉を絞り出しましたと言わんばかりの騎士隊長。


 俺は負傷者が出なくてよかったなー、なんてお気楽な考えを浮かべていたが……。


「た、隊長ッ! 街道にもう1匹出ました! 馬車が追われていますッ!」


 まだまだ事件は続くようだ。


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