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24 英雄の休暇


 エリスさんから魔法を教わってから3週間。


 あれから俺は欠かさず訓練を続けた。


 正確な内容は、早朝のランニングを終えてからの自主練である剣の素振り300回に加えて魔法を発動する訓練を追加した形だ。


 魔法はイメージであるとエリスさんは言っていた。


 だが、サブカルチャー溢れる日本から来た俺にとって、魔法発動のイメージという部分は難なくこなせる。


 マンガやアニメに出て来るキャラクター達が使っているような魔法をイメージすれば良い。科学的な要素も加味すれば魔法に対するイメージは容易だ。


 しかし、問題は魔力操作。


 元の世界に魔法という概念が無かったのもあり、こればっかりは初めての体験。何とも難しい。


 例えばエリスさんが使っていた魔法弾。


 あれは魔力を固めて放つ、というシンプルな工程である。


 俺は魔力を固める……尻の前で魔力をボール状にするまでは難なく出来た。だが、固めた魔力を自分の体に当たらないよう迂回しながら前方に飛ばすという部分が上手く出来ない。


 最初は自分のケツに魔法弾をぶち込んでしまって酷い事になった。


 調子に乗って、最初から応用しようと魔力の塊に回転までかけていたので、そりゃもう尻が酷い事になった。


 回転する魔力の弾は尻に直撃した後で俺のズボンとパンツを削り、生尻までも削ってしまったのだ。


 幸いにして痛みを感じた瞬間に魔力は霧散したが、俺のプリケツは真っ赤っか。


 しかも、それを見ていたアリアちゃんに生尻を癒してもらうという。まさに地獄よな。


 基本が出来ていないのに小細工しようとして失敗する良い例だ。


 それからは小細工無しに魔力の塊を動かす練習をひたすら続けた。


 加えてピンポイント身体強化の練習も怠らない。


 生身で剣の素振りを終えたあと、ジャック爺さんやラッチさんとの打ち合いで身体強化を織り交ぜる。


 ただ、集中しないと維持が出来ないので本当に一瞬だけ使う形だ。


 例えば踏み込みの際に足を強化し、爆発的なスピードで突っ込む。あとは相手の振る木剣を強化した腕で受け止める。


 今のところはこれくらいしか使えず、咄嗟の判断で使える選択肢の1つといったところか。


 勿論、欠点も多い。


 前者は一歩間違えば無様に床へ顔面ダイブ。後者は直撃前に集中を反らす要因があると生身で木剣を受け止める事になってめちゃくちゃ痛い。


 使い方を間違えれば一発でピンチに陥ってしまう。


 これを解決するにはとにかく練習。


 練習するしかない。


「ふっ、ふぅ! くっ!」


 だから俺は日ごろの訓練に加えて寝る前にベッドの上で魔力を操作する練習もしていた。


 うつ伏せになり、ケツを浮かせて魔力の塊を作る。そして、自分の頭の方へ動かす練習だ。


「英雄様。廊下まで自慰行為の声を漏らすのはどうかと思いますよ。あと、シーツを汚すのはやめて下さい。私が洗濯するんですよ」


 練習中に部屋に入って来たロザリーさんに変な誤解をされてしまったが。


 懇切丁寧に説明し、目の前で練習をしてみせたので誤解は解けているはずだ。


「あー、はいはい。分かってますよ」


 と、言っていたので大丈夫だろう。その後もシーツを汚すなと3度ほど注意してきたが。


 最近の訓練事情はこんな感じだ。


 自分的には満足している。体も鍛え始めてから筋肉がついて結果が見えてきたし、魔力の塊も少しは動くようになってきた。


 やはり積み重ねて結果が出ると励みになる。しかし休息も必要である。ジャック爺さんもそう言っていた。


 だから、そう。俺は訓練を休みにした今日、自分にご褒美をあげる事にしたんだ。


 それが今日の本題である。 


「本当におひとりで行くのですか?」


 休暇の日の朝。俺はアリアちゃんに予定を聞かれ、今日は街へ行って買い物に行くと伝えた。


 アリアちゃんは昼から王族としての予定があるそうで、今日は外に出れない。


「大丈夫。いつも走ってるランニングコースの途中にあるし、昼までには戻るから」


 1人で街へ向かう俺を心配するが……これも計画通り。


 護衛の騎士を付けるとまで言っていたが、普段走っている道の途中が目的地だしすぐに戻ると言ってそれも断った。


 ただ、英雄の剣は帯剣してくれと強く言われたので王城専属の鍛冶師が作ってくれた鞘に剣を入れて腰に差す。


「そうですか……。くれぐれもお気をつけ下さいね」


「じゃあ、行って来るね」  


 今日、俺は何としても一人で出かけたい。


 何故かって?


 目的地は本屋だからだ。本屋といえば……エロ本だろうが!


 そう。この世界にもエロ本が存在する。騎士団の若者達が話し合っているのを耳にして存在は確認済み。


 しかも、この世界は異種族がいる。人間だけじゃない。


 そうなればラインナップも豊富なハズだと俺のスーパーコンピューターが答えを弾き出した。


(獣人系、魔族系……。リアルケモミミにリアルサキュバスもあるかもしれん!)


 日本では2次元という架空の存在だったモノが、ここではリアルに存在する。


 それらを目にせずに何とするか。


 俺は城の門から街へ出ると西へ向かい、西区にある本屋へダッシュで向かった。



-----



「いらっしゃいませ」


 いつものランニングコースの途中にある本屋へ入ると、獣人の男性が店番をしているじゃないか。


 チャンス。


 女性店員だったら恥ずかしいが、男性ならば遠慮はいらぬ。


 俺は目をスッと細めて店内を歩きながら目的地を探った。


 本棚の間を見て……この列は違う。次の列……違う。


 店内の端っこ……あったッ!


 15歳未満立ち入り禁止と書かれた暖簾が目印ッ!


 補足しておくとこの世界の成人は15歳からだ。酒もエロ本も15歳以上なら買える。


 俺は暖簾の向こう側へ早足で向かう。


(おおッ)


 中には両サイドの本棚にビッチリと詰まったエロ本。そして、最新作は下段に平積みされているスタイル。たまんねえぜ!


(なるほど。写真集的な物が多いのか)


 元の世界であれば2次元物、3次元物と大まかなカテゴリで分けられているのが普通だろう。


 だが、こちらの世界では3次元の写真集が多い。2次元っぽいのもあるが、セリフが無くイラスト集のような感じだ。


(写真も英雄が作ったんだっけ。ありがてぇわ)


 一冊のエロ本を手に取り、パラパラと捲れば元の世界にあった写真集と遜色無い画質だ。


 これも3代目英雄が写真という概念を魔導国に伝え、魔導国と共同でカメラを開発したおかげだろう。


 ありがとう。ありがとう。


 あなたのおかげで僕は今、獣人女性の全裸を拝見させて頂いております。


(ふむ。こちらは角が生えた女性……。これが魔族の女性か)


 頭に巻き角が生え、肌が青い女性がセクスィーなポージングをしているではありませんか。


 なるほど。なるほど。


 2次元で青肌のキャラクターが出て来る物語もあったが、やはりこちらではリアルに存在するのか。


 一言で言えば素晴らしい。


 最高だ。異世界最高。


 因みにエルフの写真集は無い。


 その昔、美形の多いエルフは奴隷として扱われて酷い事をされてしまう被害が多かったらしく、こういった性の対象になるモノからは排除されているそうな。


 俺はこの世界の過去に行って奴隷扱いしてた奴等を今すぐぶん殴りたい。


 そんな事を考えながら、好みのモデルを探していると――挙動不審な男の子2人組がやって来た。


「な、なぁ。早くしようぜ」


「う、うん……」


 見た目は中学生男子くらいの2人組。


 俺はすぐさま15歳になったばかりの少年達なのだろうと察した。


 彼らの手には既に本が2冊。タイトルをチラ見すれば歴史書のようだ。


(サンドイッチ購入法か。若いな)


 エロ本じゃない物の間にエロ本を挟んで買う、サンドイッチ購入法をする気だろう。


 何という若さ。眩しい。俺にもそんな時代がありました。


 今の俺はそんな小細工しないぜ?


 買うのに余分な本はいらねえ。生身のままよ。 

 

 しかし、どれを買うか大いに悩む。


 ラインナップは俺が想像していた以上に豊富だ。昼までには戻ると宣言した手前、慎重かつ迅速にブツを選択せねばならないだろう。


「ふぅ……」


 俺は深呼吸をしてエロ本コーナーから退出。店員の元へ歩み寄る。そして――


「すいません。トイレありますか?」


「あ、はい。右奥です」


「どうも」


 選ぶのには時間も冷静さも慎重ささえも要する。ならばまずはトイレ。


 出すモン出さなきゃ戦はできねえ。


 俺はトイレに入り、腰に差していた剣を壁に立てかける。


 便器に座って脳裏に平積みされていたラインナップを思い浮かべて悩み始めた。


(やはり異種族系か。いや、ここはまずスタンダードに人間か? だがそれでは元の世界と変わらん……!) 


『キャーッ!』


『うわァァーッ!!』


 踏ん張りながら考えていると、トイレに備え付けられている小窓の向こう側から叫び声が聞こえる。


 アイドルが街中に現れてそれを見つけた女性の黄色い悲鳴じゃない。


 ガチの悲鳴だ。しかも複数人の。  


 俺はケツを拭いてからズボンを穿きつつ小窓を開けて外を見た。


「なッ!?」


 小窓の向こう側には街の通りを駆ける狼型魔獣の姿が。


 それだけじゃない。アリのようなデカイ魔獣もいれば、あの忌々しいドロップキックウサギまでいるじゃないか。


「な、なんで街に魔獣が……!?」


 俺が呆気に取られていると、トイレのドアがドンドンドンと強く叩かれた。


「お、お客さん! 外の通りに魔獣が現れた! 早く出て逃げて下さい!!」


 な、なんだってぇ!?


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