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18 早朝訓練の変化


 クリムゾンベアーの襲撃から早1週間。


 襲撃から1日経った翌日からは精神的な疲労もすっかり抜けており、いつもと変わらぬ自主トレーニングを開始。


 今日も今日とて自主トレを欠かさない。


 いつも通りにランニングをして、訓練場で的にケツを向けながら魔法を撃つ練習。


「うーん……」


 俺は悩んでいた。


 このケツを相手に向けて発射しなければならない縛りがどうにかならないか、と。


 クリムゾンベアーの時は側面からケツを向けて撃ち、前にピョンと飛んで距離を取ったり、カサカサと横に動いてFPSゲームのレティクルを合わせるような動きをして直撃させる事が出来た。


 しかし、根本的な問題がある。


「狙いずらいし、腰が痛い」


 問題はこの2つに尽きる。


 ケツを向けて首を捻りながら後方を見なければならない体勢。そして、常に腰を曲げている事による腰の負担。


 こんな事を続けていたら腰痛待った無しな未来が約束されてしまう。


「土鎧のような相手に狙いをつけない魔法は楽なんだがなぁ……」


 土鎧の魔法は相手にターゲッティングしないので、立った状態で魔法を起動すればいい。


 やはり攻撃魔法は控え、土鎧のような楽な体勢で発動できる魔法を中心とした戦略にシフトした方がいいのだろうか。 


 俺がウンウンと悩んでいると、訓練場に4人の騎士が姿を見せた。


「ユウキ殿。相変わらず早いですね」


「おはようございます。ユウキ殿」


 にこやかに挨拶してきた4人の騎士。それはこの前の訓練で共に行動していた新米騎士達だった。


 未だ騎士団や城に勤務している人達は俺を影で笑う者は多い。


 だが、彼ら4人と訓練に同行していたベテラン騎士達は親しく接してくれるし、親身になってくれる。


 一緒に訓練で苦労を分かち合ったからだろうか? それとも一瞬(すぐに熊が出たので)だけ同じ釜の飯を食った効果だろうか?


 何にせよ、若干ぼっち気味だった俺には嬉しい事だ。


「おはようございます!」


 だからこそ、大切にしなければならない。俺は笑顔で元気よく挨拶を返した。


「魔法の練習ですか?」


「ええ。どうにかケツを向けずに攻撃魔法を当てられないかと思いまして」


 俺は問いに答えながら、腰を突き出して魔法を撃つ。加えて腰をカクカクと動かしながら連射してみせた。


「はは……。しかし、本当に威力は高いですよね。何とかして活かそうと考えるのは良いと思います」


 さすがに俺の魔法を撃つポージングに4人は噴き出しはしないが苦笑いは浮かべる。


 しかし彼らの表情に浮かぶのは馬鹿にした、というよりは反応に困った末の苦笑いって感じだ。


「あ!」


 5人で考えていると、一人の新米騎士が何か閃いたようで声を上げる。


「剣で対峙し、相手とすれ違う瞬間に撃つのはどうでしょう!?」


「すれ違いざまにか……」


 俺は的に近づき、木剣を構える。何回か的に剣を打ち込んだ後に……前方にステップしながら的である案山子の胴を斬って脇をすり抜けた!


 そして、背中目掛けてケツを向ける!


「ファイヤボッ!」


 俺のケツは文字通り火を噴いた!


 ケツから放たれる火の弾。しかし発射の衝撃で前に体が動き、俺はバランスを崩して地面に顔面から突っ込んだ。


「あばァ!?」


「ユ、ユウキ殿! 大丈夫ですか!?」


 発案した人が駆け寄り、心配しながら俺の手を持って起こしてくれた。


「いてて、魔法は当たりました?」


「は、はい。至近距離なので威力は申し分ないです」


 起こされながら駆け寄って来た騎士達と一緒に成果を見る。すると、的には大きな黒いコゲが。


「特殊な魔法防御を施している的にこれだけダメージを与えるとは」


「しかし、転んではダメか……」


 活かせそうな方法はできたが、同時に新たな懸念が生まれてしまう。


「うーん。要練習ですかね?」


「そう、ですね。団長にも相談してみては?」


 確かに言う通りだ。剣術と魔法を組み合わせて戦うならジャック爺さんにも意見を聞いた方が良いだろう。


 これを自然に出来れば、俺の魔法剣士ライフが始まるかもしれない。


 魔法はケツから出る。だが、最速の一太刀を浴びせて視覚外からの魔法追撃! なんてカッコよくない?


 問題は俺の体がイメージ通り、ケツから出ているのを悟らせないくらいに速く動くかどうかだが。


「団長に相談するのも良いと思いますが、やはり魔法の事であるならば宮廷魔導師に相談してはどうでしょう?」


 宮廷魔導師とは王家お抱えの魔法使いだ。彼らは研究者でありながら、戦闘もこなすエリート集団。


 常日頃から魔法の研究と訓練を行い、新しい魔法の開発などを行っている。数年に一度、魔導国に留学してあちらの技術を学んできたりもするらしい。


 とにかく、エリオス王国で魔法使いの頂点と言えば宮廷魔導師達となるだろう。


「そうですね。英雄の剣を使う仕事も頼まれているし、その時にでもちょっと聞いてみます」


「それが良いと思います」


 専門家ならば俺には思いつかないようなアドバイスをくれるかもしれない。


 ジャック爺さんにも勿論話をするが、アドバイスや判断材料となる事は多いに越したことはないだろう。


「じゃあ、魔法はこれくらいにして。剣の素振りしますか」


「そうですね」


「ええ。やりましょう」


 俺と新米騎士達は1列に並び、ジャック爺さんやベテラン騎士達から習うエリオス王国剣術の型に沿って素振りを始めた。


「1! 2!」


「「「「 1! 2! 」」」」


 俺が先陣をきって素振りを始めれば、4人は揃って付いてきてくれる。


 今までは一人でやっていた自主訓練。


 こうして毎朝一緒に出来る仲間が増えたのが本当に嬉しかった。


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