15 王都に帰還
ひと段落した俺達は王都に戻る事に。
しかし、乗ってきた馬車はぶっ壊れているし、馬車を引いていたお馬さんも死亡してしまった。
どうするのかと思いきや、既にジャック爺さんが手配済み。
無事だった新米騎士の一人に命じて王都に走らせたらしく、夕方には王都からの迎えがやって来た。
街道のど真ん中で戦闘していたのだから1台くらいは馬車が来るのではと考えていたが、今は春で収穫期の最中らしく人通りは少ないらしい。
そもそも魔鉄道があるのでエリオス王国の地方では駅のある都市に地方の物が一度集積される。
地方から王都への物資移動は魔鉄道で。王都近郊の村や街から収穫されたモノは王都まで馬車で運搬するが、それも少し先の事。
今はその地方から王都へと動いている最中、王都近郊も収穫中なので特に物流や人の流れが少ない。
再来週辺りから王都から地方へと物流が返って行くらしく、現在はタイミングが悪かったのだろう。
と、まぁそんな訳で王都から来た緊急車両ならぬ緊急馬車に乗って王都へと戻った。
「戻って来れましたね」
王都から2時間の場所なので空が真っ暗になる前には帰還する事が出来た。
城の入り口に馬車が停まり、中から俺達が降りると王様が直々にお出迎え。
「ユウキ殿! アリア! 無事であったか!?」
先に戻った騎士から事情を聞いたのだろう。王様は少し焦った顔で俺達に駆け寄った。
「私は無事ですお父様。しかし、ユウキ様が酷いケガをしてしまいましたが……」
両手両足の骨折れてたしね。酷い怪我と言っても差し支えないだろう。
今は両足地面についてピンピンしてるけど。
王様の傍で護衛する近衛兵の人達はアリアちゃんの言葉と俺を見比べて、話が合っていないと疑問に思っているのだろう。どういうこっちゃ、という表情をしている。
しかし、王様は既に事情を全て把握しているのか素直に一度頷くだけだ。
「そうか。2人も疲れているであろう。詳細は部屋で聞くとしよう」
王様の提案は正直有難かった。体は治ったが精神的な疲れは癒えていない。
大量の血を流した事の影響もあるのか体は気怠さを帯びている。とにかく座って一息付きたい。
王様を先頭に城の中へ。途中でロザリーさんと別れ、王様の執務室へ入ると王妃様も待っていた。
ジャック爺さんも加えた5人で執務室のソファーに腰を降ろす。
「とにかく、帰って来てくれて安心した」
「そうね。報告を聞いた時は心配で仕方なかったわ」
本当に心配してくれていたのだろう。
王様と王妃様はようやく安堵したとばかりに深いため息を零す。
「ええ。しかし、私が無事に帰ってこれたのもユウキ様のおかげです」
「そうですな。英雄殿がクリムゾンベアーの気を引いてくれなければ、もっと被害が大きくなっていたでしょう」
「いや、最終的に仕留めたのはジャック爺さんだし……」
謙虚さは忘れちゃいけない。ここで調子に乗れば必ずしっぺ返しが来るに違いない。
俺の浅い人生経験の中で知り得た豆知識である。
「それでも討伐に加わってアリアを守ってくれたのだろう。王として、アリアの父として礼を言う。ありがとう」
「そうよ。ユウキさん、この子を守ってくれてありがとう」
「いや、その、ははっ……」
罵倒される事が当たり前だったので礼を言われ慣れていない俺はめちゃくちゃ照れてしまった。
顔が熱い。きっと顔面が真っ赤になっているのだろう。
「それにしても……報告で聞いたがユウキ殿が魔水晶を生み出したとは本当か?」
「ええ。本当です」
王様の問いにアリアちゃんが大事そうに抱えていた宝玉をテーブルの上に置いた。
「……ふむ。確かに見た目は魔導具の魔水晶であるな」
帰り道の道中で宝玉の話をしたのだが、大きさは完全に市販品である魔水晶と変わらない。
ただ、嵌め込まれている虹色の水晶玉が特殊なようだ。
大体は一色に染まっているか、透明な水晶が嵌め込まれているのが一般的だそう。
「でも、型も結構特殊なデザインね?」
型と呼ばれるのは魔導具のコアである水晶玉を支える台座のような部分を指す。
大体は魔水晶を囲うように丸く金属で覆われているのだが、アリアちゃんの魔導具は植物の蔓が宝玉を包み込み、正面にはライオンの顔というデザインになっていた。
なんでライオン? 大天使アリア様には天使の羽系のデザインが合う思うが……。
「これは癒しの宝玉・ブエルという銘のようです。魔水晶の基本的な機能である魔力増幅と共に治癒魔法が使えるようになります」
「なるほど。これでユウキ殿を治したのか……。ふむ」
王様はアリアちゃんの説明を聞き終えると何かを思案するように顎髭を撫でた。
「アリア。この事は外に漏らすな」
王様はいつも以上に真剣な顔でアリアちゃんへ言った。
「治癒魔法が使えると外部に漏れれば余計なトラブルを招き兼ねない。使うのはユウキ殿だけにしておきなさい」
「そうね。特に反王派の貴族に知られたらアリアが狙われるかもしれないわ」
おいおい、反王派ってヤバイ単語出たっちゃよ。反王ですよ? クーデター起こすような輩がいるのか?
「すいません、俺のせいで……」
とにかく、俺のせいでアリアちゃんを危険な状況に巻き込んでしまったのは事実だ。
「いや、ユウキ殿のせいではない。というよりも、他者に武器を創造するという能力すらも初めての事だからな……」
「むしろ、初めてがアリアで良かったかもしれないわね。事前に能力の事が分かったわけだし。ユウキさん、他の人に武器を創造するのは自分の意志で行えるのかしら?」
「いえ、俺が気絶していた時に生み出されたようで……。自制できるかはわかりません」
そう。俺の意志で作る作らないと選択できるかは現状では不明だ。
気絶中にケツからプリッと出たと、アリアちゃんの口から聞いた時はもう一回気絶しそうになったが。
「そうか。しかし、武器の創造を我々は制限できん」
「どういうことです?」
「召喚された英雄の行動は我々が制限できないと国際法で決まっている。人として酷い行いなら強制的に介入できるが、武器を作る事は世界の平和を守る事として捉えられるだろう。ユウキ殿が信頼する相手に武器を作るのであれば一向に構わない」
「でも、ちゃんと相手は見極めた方が良いわ。良い人そうに見えても、貴方が英雄と知れば英雄の立場を利用しようと画策して近づく者もいるはずよ」
話を聞かされ、最初に抱いた感想は「怖い」だ。
俺が作った武器を利用して世界征服を目論む野郎もいるかもしれないって事だろう。もしかしたら、王家に仇なす奴もいるかもしれない。
なんかもう、魔獣よりも人間の方が怖くなってきた。
そんな想像をしながらどんよりしていると、隣にいたアリアちゃんがパッと輝かしい笑顔を向けてきた。
「大丈夫です、ユウキ様! 私が傍にいますから!」
なんて心強いのでしょう。
俺はこの日、確かに救いの天使を見た。カワイイ。
「ふふ。アリアったら張り切っちゃって」
「アリアの言う通り、迷ったらアリアに聞くといい。もちろん、私や妻もジャックも相談に乗るぞ。なぁ?」
「陛下の言う通りですぞ。困ったら何でも相談して下され。必ずや、力になりましょう」
本当に良い人達だなぁ。
死にそうになったけど、頑張ってよかったと心からそう思う。




