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14 真実に気付く


 俺はあれからどうなったのか、とアリアちゃんに質問を投げかけた。


 すると、アリアちゃんは膝に俺の頭を乗せたまま説明してくれる。


 なんでも俺は瀕死の状態であったが、突如発生したケツの光の中から魔導具が生まれたと。


 それはアリアちゃん専用の魔導具は魔水晶というカテゴリ、銘を『癒しの宝玉ブエル』という。


 魔水晶を起動すると俺のズタボロだった体がみるみる癒えていくじゃあありませんか。


 つまり、その宝玉は回復魔法が発生する魔導具という事だろう。


「この世界には回復魔法ってないの?」


「いえ、存在はしていますが限られた種族しか使う事が出来ません」


 何でも治癒魔法を使えるのは魔族にカテゴライズされる種族の1つらしいのだが、過去に勃発した世界喰らいとの戦いで数を減らしてしまったようだ。


 治癒魔法とはあらゆる傷を治す奇跡。


 戦いが終わった後でも各国からも必要とされ、悪人に捕まって奴隷のように働かされるという事態まで発展。


 それらを良しとしない4大国が彼らを保護し、今では国の管理下にある山奥に籠ってひっそりと暮らしているそうな。


 暮らしている場所は各国の王のみが知る秘密であり、4大国の隠密部隊が影ながら生活を支えているという。


「その代わりと言いますか、ポーションなどの薬技術が発展したので今ではそちらが主流ですね」


 治癒魔法が奇跡と呼ばれるように、死亡していなければ体の欠損まで一瞬で全て治るのが治癒魔法。


 代替えとして進歩したポーションという薬技術は薬草類などを煎じて組み合わせた液状のもの。欠損までは治らないが傷は大体治せる。


 しかし、病気などには専用のポーションを合わせて作らないといけないので1つで全て治す万能薬とは言い難いそうだ。


 といっても、外科手術などが必要だった日本から来た俺からしてみればポーションも奇跡と言える薬だろう。


「それで、アリアちゃんはその治癒魔法が使えると?」


「私がというよりは、ユウキ様が作り出した宝玉のおかげですね」


 アリアちゃんは脇に置いてあった宝玉を俺に見せてくれた。


 彼女から受け取ると俺の脳裏には宝玉の詳細が思い出したかのように過る。


 宝玉はアリアちゃん専用で彼女以外は使えない。


 治癒魔法の効果は彼女の想い次第で増減する。


 これが生み出された切っ掛けは俺とアリアちゃんの絆が深まったから、だそうな。


 ……絆、深まっちゃったタイミングはどこ?


 俺には謎であるが、ともかく彼女専用のアイテムが創造されたのは喜ばしいことだ。


「でも、これは武器なのかな?」


「あ、はい。治癒魔法が使えるようになるのと私の魔力もブーストされますので」


 魔水晶は珍しいものじゃなく、魔導具として嘗て魔力ブーストアイテムとして君臨していた杖の上位互換であり、3代目英雄が作り出した新しい形の魔力増幅装置の1つ。


 魔法使いなら魔水晶を持ち歩くのが一般的なようで、魔力が増幅することもあって武器の1つとしてカウントされるようだ。


 と、いっても……。


 やはり絆を結ぶと他者に特別な武器を創造できるというのが真実だと分かった。


「でも、他人の武器を創造するなんて歴代英雄様の中でも無かった事です」 


「え? そうなの?」


 てっきり、最初の剣を創造した時に分かっていた事なので歴代英雄も同じ能力を持っているものだと思っていたが。


「はい。初代英雄様から続く英雄の方々の中に他者へ武器を作ったという話はありません」


 なるほど。歴代英雄がズッ友を作れないほどのコミュ障だったか、俺から新たにできた能力のどちらかだ。


 ……設定ミスった皺寄せか?



-----



 アリアちゃんのお膝で膝枕という天国を味わった俺だったが、1つの真実に気付いた。


 そう。俺の着ている服が変わっているという事実に。


 そして俺の脳内にある深淵からは気絶する前の忌まわしき記憶が蘇る。


 出たんだ。


 全部出たんだ。ケツの中のモノ、全部出た。


 だから着ている服が変わっているんでしょう?


 俺は一筋の涙を流した。


「ユ、ユウキ様!?」


 膝の上で涙を流した俺を見てギョッとするアリアちゃん。


「ど、どうしたのですか!? あ! クリムゾンベアーとの戦いを思い出して!?」


 アリアちゃんは俺が恐怖心を思い出したのかと勘違いしているようだ。


 それともあえて言わずに……?


 俺はアリアちゃんの優しさに気付いて、両目から大量の涙を流した。


「え、英雄殿! 水です! これを飲んで落ち着きましょう!」


「あんな凶悪な魔獣に相対したのです! 怖くて当然じゃないですか!」


 新米騎士の人達すらも心配して水の入ったコップを持って来てくれる。


 みんな、ボクの汚点を記憶から消してくれたの……?


 あったけえ。みんなの気持ち、あったけえ。


「英雄殿。お目覚めになられましたか」


 そこに追加で登場したのじゃジャック爺さん。彼の手には俺の着ていたズボンが握られていた。しかも水洗いした感じで濡れている。


 まさか。


「まさか強化魔法が施されたクリムゾンベアーの攻撃を耐え抜くとは。さすが英雄としか言いようがなく、見事なお姿でした」


 爺さんは寝ている俺の傍に座ると、濡れたズボンを隠すように後ろに置きながら話し始めた。


「そ、そうかな……。俺は必死で……」


 だから俺も真実をスルーする事に決めた。見なくても良い真実だってあるはずだ。死ぬ寸前までズタボロになったんだ。許されるはずだ。


「何を仰いますか。貴方は英雄としてまだ日が浅い。だというのに、姫様を守るべく強敵に立ちはだかった」


「そ、そうです! あ、あのお姿を思い出すと……」


 ウンウン、と頷きながら俺を称賛してくれる爺さん。


 俺の顔を覗き込みながら頬を赤くするアリアちゃん。


 おや? 爺さんはともかく、アリアちゃんのこの感じ……まさか。


 惚れちまったのかい? 俺は脳裏にハッピー & ハッピーな考えが過る。


 しかし、俺の目に飛び込んで来たのは濡れたズボンを広げるロザリー氏。


 ……無いな。俺、お漏らし英雄じゃん。


「英雄殿!?」


「ユウキ様!?」


 俺は再び一筋の涙を零した。


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