就寝
「久しぶりのご飯……美味しいです!」
「それは良かった。次はいつ食べれるかわからないんだ。いっぱい食べておきな」
「はい!」
奏のご機嫌を損ねた俺は、何とか食料でご機嫌を直す事に成功した。だがその道のりはとても長かった。俺の透視を持ってしても、食料を探すのだけで数時間を要してしまった。
いや、それだけならまだいい。それよりも辛かったのは、奏の視線と沈黙。奏は相当根に持つ性格なのか、食料が見つかるまで、まともに俺の言葉に答えてくれなかったのだ。
「……これからは奏に冗談を言うのは止めよう……」
「黒羽さん? 何か言いましたか?」
「ん? いや、奏は可愛いなって」
「……もしかしてバカにしてます?」
「いや、してないから! だからまた睨むのは止めて!」
言ってるそばから危ないところだった。んー、女心は難しいな……。
「……黒羽さんは真顔で嘘をつきますから、判断が難しいです。あっ、さっきのこと反省してます?」
「それはもちろん。もうしません、神に誓います」
「なんだか全く反省の色が見えないような気がするのですが……?」
「あれ? なぜバレた?」
「黒羽さん!!」
「あははは! ごめんごめん。さーて、腹も膨れたし大分時間も経過した。そろそろ寝よう。奏、先に寝な。適当な時間で起こすから」
「わ、わかりました」
「ん? どうかしたか?」
俺の言葉に頬を赤らめる奏。俺が問いかけると、奏は恥ずかしそうに俯きながら……。
「え、えっと……わ、わたくしの寝顔をあまり見ないでくださいね?」
「んー、他にすることないし見てるかも」
「え、えぇっ!?」
「ほら、早く寝た寝た。いつ誰が襲ってくるかわからないんだから」
「うぅ……わ、わかりました。黒羽さん、見ちゃダメですよ?」
「はいはい」
「や、約束ですからね!」
「あぁ、神に誓おう」
「……ものすごく不安ですが、お先に失礼します」
「あぁ」
そう口にすると奏は、俺に背を向ける形で地面に横たわった。地面にはもちろん、布団などの寝具の類はない。ここに辿り着く前に拾った布を引いてはいるが、気休め程度にもならないだろう。はっきり言って寝る環境としては最悪だ。
「スー……スー……」
だがそんな環境の中でも、奏はすぐに眠りに落ちていた。肉体的な疲労の蓄積はもちろん、精神的にもかなり参っていたのだろう。
「ふぅー。少しでも長く眠らせてやりたいが……くっ!? ……厳しいかもな……」
俺は頭を押さえながらそう言葉を漏らす。
俺の頭は透視の多用による激しい頭痛に襲われていた。この頭痛は透視する距離によって痛みを増す。今回は短い距離で透視していたが、複数回に渡って使用した為か、なかなか激しい頭痛だった。
だが最初に透視を使った時よりは酷くはない。もしかしたら透視を使用すればするほど、痛みも慣れてくるのかもしれない。
「ちっ……この痛みを感じなくなるまで、一体どれだけの時間がかかるんだか……」
俺は悪態をつきながら天を見上げた。そこにはどこまでも続く空はなく、低い灰色の天井と、人工的な明かりしかなかった。
デスゲームが始まってまだ一日。大変なのはまだまだこれから。そう自分に言い聞かせて、俺は左目だけをゆっくりと閉じた。




