浮かび上がる状況
「一つ目の質問、あんたたちはどこから来た?」
「お、俺は東京。倒れている奴は山梨と言っていた……」
サンプルは少ないが、ここに連れて来られた奴らは、関東の各地から集められているのだろうか?
「二つ目の質問、いつここに連れて来られた?」
「み、三日ぐらい前だ。せ、正確な時間はわからない」
三日。つまり俺たちがここに連れて来られる前に、このデスゲームはすでに始まっていたことになる。時刻を知る物がなさそうなところをみると、この男の言う三日は正確な経過時間ではないのだろう。
「三つ目の質問、あんたは他の奴らの姿を見たか?」
「あ、あぁ……三十人ほど見た」
この男が三十人ほど見ているってことは、参加者はもっといるのだろう。さらに俺たちのように途中参加する奴もいると考えると、その人数を推測する事はできない。
「四つ目の質問。日本刀に付いていた血、あれは何の血だ?」
「…………ほ、ホモサピエンスの……」
「真面目に答えろ。死にたいのか?」
「ひぃぃぃぃぃ!? す、すみません!! に、人間のです!」
あの血は人のモノであった。それは俺の想像していた最悪のケースを示していた。やはり参加者同士の殺し合いは、すでに始まっている。
実際こんな臆病な奴でさえ人を切っているのだ。今後出会う奴らには、細心の注意を払うべきだろう。
「……これが最後の質問だ。なぜ俺たちを襲った?」
「しょ、食料を奪おうとした。……腹が減って気が狂いそうだったんだ!! なぁ、俺たちに食料を恵んでくれ! 頼む!」
食料の為に人を襲う。たった三日でそうなってしまうとは、人間はなんて脆いのだろう。
「残念ながら俺たちは食料を持っていない。ここに連れて来られて、まだ数時間しか経っていないからな」
「そ、そんな……」
「さっ、質問は終わりだ。さっさとこの男を連れて逃げろ。俺の気が変わらないうちに……な?」
「ひぃっ!? わ、わかった……!!」
俺が男の首筋にあてがっていた刃を退かすと、男はすぐに倒れている男の元へ向かう。
きっと一秒でも早く俺から離れたいのだろう。男は倒れている男を抱え上げると、すぐに入って来た扉から出て行った。
「ふぅー、どうやら最悪の状況だな。なぁ奏、一つ聞いていいか?」
「は、は、はい!」
「なぜそんなに俺から距離を取っている?」
「え、えっとですね。黒羽さん、実はとても怖い人なのではないかと思いまして……」
「あははは! 俺はただの高校一年生だぞ? そんなわけないじゃないか!」
「ただの高校一年生は、あんなに迫力はありません!」
「実は俺、演劇部だったんだ!」
「あっ、そうでしたか。通りで迫力があり過ぎると思いました! 全ては演技だったのですね! なんて素晴らしい演技力でしょう!」
「ごめん、嘘。本当は野球部」
「…………」
「あのー、奏? 無言で睨むの止めてくれる? 結構怖い」
俺のことを見る奏の視線は、とても冷たいものであった。そして手に持っている大鎌により、迫力がより一層増す。
どうやら俺が真っ先にすべき事は、奏の機嫌を取る事になりそうだ。




