非情
「奏、俺の後ろに」
「は、はい……!」
俺の言葉に素直に従う奏。その表情は明らかに強張っていた。もしかしたら俺の表情も、奏と同じく強張ったものになっているかもしれない。だが今は、そんなことを気にしている状況ではない。
「そこにいるんだろ? 血の付いた日本刀を持った男二人!」
俺は男たちがいる扉へと話しかける。だが俺の声に、男たちが答えることはなかった。いや、男たちは答えられなかったのかもしれない。姿を晒していないのに、自分たちのことを言い当てられたのだ。動揺してもおかしくない。現に男たちは扉の向こうで、戸惑った表情を浮かべながら言葉を交わしている。
「ち、血……ですか? それはもしかして……」
「人のか、動物のか。それはわからない。でももし前者だったら……最悪だな。奏、少しこれを預かっていてくれ」
「は、はい!」
俺は手に持っていた日本刀を奏に手渡す。そして部屋にあったハンマーを手に取ると……。
「んー、上手くいくかな?」
「何をする気なのですか?」
「それは……こうするのさ!」
俺はそのハンマーを両手にしっかりと持ちながら、ゆっくりと回転を始める。一回転、二回転と徐々に回転する速度を上げていき……。
「はっ!」
三回転目に持っていたハンマーを投げ飛ばした。目標は男たちが隠れている扉。遠心力の効いたハンマーは、高速で回転しながら、かなりの速度で扉に向かっていく。
ハンマーは扉に――。
「テメーら――うぎゃぁぁぁぁ!!!!」
「おとなしく――ぎゃはぁぁぁぁ!!!!」
「あっ」
「おっ」
ぶつかる瞬間に開け放たれた!
そこに大声を上げ、日本刀を高々と掲げた男二人が姿を現す。だがその刹那、男たちはハンマーの手荒い歓迎を受けることになった。男たちの断末魔が狭い部屋に響き渡る。
「…………」
「…………」
「……ピクリともしませんね?」
「まぁ一人はもろに腹部に入ってたからな。ちなみに後ろの奴は前にいた奴と一緒に倒れて、後頭部をもろに強打していた。たぶん死んでないと思うが……」
俺は大型のナイフを手に取ると、男二人の脈を確認する。
「……ん。脈はある。生きている」
「そうですか、生きているんですか。この方たち、あきらかにわたくしたちのことを襲う気で入ってきましたよね? でしたらそのまま死んでくださっても構わなかったのに……残念」
「奏は童顔のわりに、意外とエグいことも言うんだな。それに口調が丁寧な分、えげつなさが増す」
「ど、童顔は関係ありません! ……で、この人たちはどうしますか?」
「んー、危険な参加者っぽいけど殺すのはな……。取りあえず脚と腕の腱でも切っておくか?」
「……黒羽さんの方が、十分にえげつないと思います」
「そうか? 殺さないだけ優しいと思うぞ? さっ、決心が鈍らないうちに、さっさと腱を切るかな」
俺はそう口にすると、奏から日本刀を受け取る。
そしてゆっくりと鞘から日本刀を抜くと……。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
「きゃっ!?」
「ふふっ、気絶の演技はもう終わりか?」
ハンマーの直撃を受けていない男が慌てて声を上げる。その表情は真っ青になっていた。
「いくつか質問がある。答えてくれるよな? もちろんあんたに拒否権はない」
俺は薄っすらと笑いながら男を見下ろし、日本刀の刃を男の首にあてがう。そしてできるだけ相手に、非情な男だと思わせるよう、俺はあえて威圧的な口調でそう口にする。
すると男の股間からは液体が流れ出す。きっと恐怖のあまりに失禁してしまったのだろう。男は無言で、何度も何度も首を縦に振った。




