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与えられたのは希望ではなかった  作者: 黒羽 凪
第二章~希望を与えられた者たち~
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密かな決意

 扉を開け放った先には、六畳ほどのスペースが広がっていた。そこには部屋一面に武器が並べられており、新たに扉が三つ設置されていた。

 武器の種類は日本刀、槍、薙刀、鎌、斧、鞭、弓、棍棒、ハンマー、レイピア、ナイフなど、刃物系が多く置いてあった。だがその中に銃火器類が無い事に、俺は少しホッとしていた。


「……これは本物なのでしょうか?」

「この状況で、さすがに偽物は置かないだろ」


 俺はそう答えると、数ある武器の中から黒く長い日本刀を手に取った。その感触はとても冷たく、ずっしりと重い。それは紛れもなく、人を殺す為に造られた道具であることを物語っていた。

 刀を鞘から抜いてみると、その刀身も鞘と柄と同じく黒一色。部屋一面を照らす人工的な光を鋭く反射するその刃は、抜群の切れ味を連想させる。


「これが本物の日本刀……とても綺麗ですね」

「あぁ、確かに。とても人殺しの為の道具とは思えないほど綺麗だ。神楽院さんも護身用に一つ選んで」

「は、はい。……あの、黒羽さん一つだけお願いしても宜しいでしょうか?」

「ん? 内容にもよるけど、なんだ?」

「えっとですね、できればわたくしの事を名前で呼んでほしいのです。わたくし、神楽院という苗字が好きではなくて……」


 そう口にする表情は、(うれ)いを帯びていた。過去に何があったのか俺にはわからないが、内気そうな少女が口に出すってことは、よっぽどの事があったのだろう。

 その出来事が気にならないと言ったら嘘になる。だが俺はここで聞くようなことはしない。人には言いたくない事の一つや二つ、必ずあるはず。それは俺も同じだ。


「別に構わない。それじゃあ奏さんでいいか?」

「あっ、わたくしの方が年下だと思いますので、さん付けは不要です」

「ん、了解。それじゃあ奏。奏は何歳なんだ?」

「わたくしは今年で十八歳になります。黒羽さんはおいくつなのですか?」


 こ、この容姿で十八歳……だと? どう見ても中学生にしか見えないぞ。っていうか俺よりも、二つも年上だったとは……人は外見で判断してはいけないってことか。


「……俺は今年で十六。つまり俺の方が年下ってこと……です」

「えぇっ!?」


 俺の言葉に、今日一番の驚きの表情を浮かべる奏。

 俺も今まで奏のことを年下だと思っていただけに、敬語もどこかぎこちないものになってしまう。


「ほ、本当なのですか? 黒羽さん、こんな状況でもとても落ち着いていらっしゃるから、てっきり成人していると思い込んでしまいました」

「落ち着いているというか、もう諦めた。そう言った方が正しい……です」

「ふふっ、無理に敬語を使わないでください。最初のままで平気です。わたくし童顔ですから、そういった扱いに慣れていますし。黒羽さんもわたくしを同い年ぐらいだと思っていたのでしょ?」

「あぁ、すまない」


 本当は年下だと思っていたとは、さすがに口にできなかった。本人も童顔だということに、多少の自覚はあるようだが野暮なことは言うまい。


「即答されてしまいました……。やはりわたくしは幼く見えるのですね。女としての魅力がないのですね……」


 そう口にして地面に座り込むと、膝を抱え落ち込む奏。その姿が幼い頃の結愛と重なって見えた。そう見えた瞬間、俺は何だか優しい気持ちになった。

 

「ほら、落ち込まない。確かに外見も大事かもしれない、でも本当に大切なのは中身だろ? それに奏、君は可愛い。もっと自信を持ちな」


 俺はゆっくりと屈み、なるべく奏と視線を近づける。そして自然な笑みを浮かべながら、奏に声をかける。できるだけ優しく、幼い頃に結愛にしてやったように。


「わたくしが……可愛い……?」

「あぁ、俺はそう思ったぞ?」

「黒羽さん……わたくし、異性の方からそんなこと言われたの初めてです。わたくし、もっと魅力的になれるように頑張ります……!」


 瞳を潤ませながらも、満面の笑みでそう答える奏。俺はこの時、初めて奏の本当の笑顔を見た気がした。そしてその笑顔は、とても魅力的であった。それを本人が自覚し、早く自信を持てるようになればいい。俺はそう思った。


「あぁ。だがその前に、このデスゲームでちゃんと生き残らないとな。話はそれからだ」


 奏の姿が結愛と重なったからか、この子を最後まで守ろう――。俺はこの時、密かに決意を固めたのだった。

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