第2章 王家の都市(4)
4.大日本帝国横丁と雷電王
リムジンは大通りから外れてちいさな大日本帝国横丁というのがかかれたアーチの前で停車した。
「こっからは車入れないから、ちょっと歩くわ」
ウルリカは運転席に向かって、
「どっかで流すか、戻っていていいわ、終わる頃には連絡する」
金ピカで叩くとカンカン言うロボットはそれを聞いて、悲壮感?をただよわせようとするが、どうしてもその喋り方と容姿が
その切なさを笑いに変えてしまう。
「わ・わ・わ——私どもをお捨てになるのですか?」
と金ピカロボットは連れて行ってほしそうに抗議して、俺をみた。
なぜ俺を見る、何だこいつやる気か?お前ら食うもんなんかないぞ?と思った。
「ダイジョウブよ、ちゃんと今日中には帰るから」
俺を見ながら、そのポンコツは
「ウルリカ様ハワタサナイゾ」と機械のくせにボソッと呟いた。
俺は唖然として、この面白ロボットを睨みつけた。
ちなみにこのロボット首は回らないようで、俺の方を見るたび上体がこちらを向く、その度に、腕がr2d2もどきにガンガン当たって、少しかわいそうになった。
俺はその心意気やヨシと感心しながらも、何が心配なのかさっぱりわからなかった。
ちらりと横を見ると、ディアナは「あれ、なんて読むの?何語?」とベネディクトに聞いていた。
「あれは日本語で、漢字でかかれておりますな。」
「The Empire of Japan Streetですな。」
ディアナは不思議そうにふーんと答えていた。
そういえば、シュナイダーは、超日本かぶれだ。
学んだ格闘ゲームとかがほぼ、その時の流れを組んでいる。
その技名をわざわざ叫んで繰り出すところなんかはそのものと言っていいだろう。
このエリアはその自由さと、破天荒さで作られたいわば、皇帝直属のなぜか最近勢力を拡大している日本ノスタルジー協会の手による街だった。
ウルリカは嬉しそうに自慢気に言った。
「ここなんでもあるのよね、何食べたい?」
「おまかせでいいなら、私おすすめあるんだけど」
「まかせる。」
俺はそれだけ言うと、ベネディクトもディアナも頷いた。
「あ、あとここ、通信機器が繋がりにくくなってるの。通信暗号強度が、なぜか強いのよ」
「だからプライバシーはほぼ物理的な接触以外はシャットアウトだから、どうしても外と連絡したかったら、あそこの緑の箱あるでしょ、あれで連絡して。」
通知番号はすでに20桁を超える、それを記憶するとなると単語帳かなんかで練習するしか無い。
だがまぁそんなことをする奴はほぼおらん。
あの緑の箱だって、なんだかよくわからない見た目だった。
大日本帝国横丁のアーチをくぐるとアーケード街、家電、服、雑貨、小物などいろんな店が立ち並ぶ。
ただしどれも怪しい。
ブラウン管のテレビには驚いたが、今時電波なんかどうやってひろうのか、金属の棒がリボンのようにくっついていた。
ディアナは、目を輝かせあっち行きたい、こっちがいいとベネディクトを引っ張り回しては、何かと買い込んでいた。
ほうっておくとあっという間に飯食う時間を奪われそうだと思い
「おーい、そろそろ行くぞ~」と俺はディアナを呼び止めたのだった。
そうして戻ってきたベネディクトの顔にはその戦利品。
太いプラスチックの眉、黒縁のメガネの枠だけにテカテカの大きなプラスチックの鼻その下に見事なプラスチックの髯。
そして吹くとピーッとなってくるくる巻いた伸びる紙が風船と笛が一体となったおもちゃのついたメガネをかけていた。
何かの名物、”しばいたれ五郎”の顔を模したやつだと後で聞いたが
なかなかに似合っていた。
「なにか、変ですかな ぴーーーーー」と真面目くさってベネディクトが言いながら笛を吹いた。
ウルリカはそれを見て、こらえきれなくなって、大いに笑っていた。
——————
俺達は、ウルリカのおすすめだというこの店、「四方八角美人」という店に足を踏み入れた。
海の匂いと、少し生臭いが、とれたての鮮魚が竹のザルにならべられ、大量に目の前に並べられている。
客が選ぶたびに、器用にハサミで取って眼の前の炭で焼いてくれる。
あと少しはなれたところに大きな水槽があって、魚が泳いでいた。
生け簀というらしい。
結構な客入りの中、ぽっかり空いた空白の席に通されると、その店の店長がやってくる。
筋肉質の焼けた肌はヴェネディクトは上品な叔父様、というのに対しこっちはワイルドなおっさんと表現するのにふさわしい
おやじ2大巨頭の登場に、俺、いや僕はすっかり気圧されてしまった。
ベネディクトは、まだぴーぴーやって、笑い転げるウルリカとそれにつられて、必死に笑いをこらえるディアナもご満悦。
楽しきはげに良きかな……だ。
おれは日に焼けたおっさんに、
「こいつの紹介で」と笑いを堪えられないウルリカに顎をシャクった。
おっさんはだまって、タブレットのメニューを俺に渡して、熱い炭火の前に戻っていった。
飲み物はこのタブレットらしい。
渋くてクールとか、ちょっと狙いすぎてないか?
俺は、あれとこれとそれ……と注文をとりにきたバイトの眼の前の、ウルリカともディアナとは違うタイプの可愛い娘にお願いする。
そして飲み物を自分の分だけ、ぽちっとしてお笑い空間から脱出を試みた。
俺が眼の前に並んだ食材から選んで注文したのは、サザエ、蛤、イワシに、ホタテだ。
分かってる風の注文にウルリカは、あ、それあともう2つづつと景気よく追加した。
つくもちゃん、わたし黒ビールね。
と俺がタブレットを持っているところをねらって、俺に言いやがった。
執事、ベネディクトは俺からタブレットを奪うと、私めにおまかせをと言うと、
「お嬢様、何をお飲みになりますか?」
「私、くすくす、えーと、くくく、ノンアルコールのアップルサワーを、ぷっくく」
ディアナは笑いをこらえながら、執事に伝える。
「ベネディクト、今日はもういいから、あなたもやりなさい」
そう言われて、ベネディクトは、勢いよく笛を吹いて、ぴーーーーーーーーーーーと音を鳴らしたのだった。
俺はひとしきり、海の幸と、ハイボールを堪能すると
「で?」とウルリカに聞いた。
「しばらく家を自由に使っていいわ、あぁつくもちゃん、わかってるわぁ」
といって、蛤をぱくついていた。
「おっさんはどうする」
「ぴーーーー」
それはいいからちゃんと喋れ、
別で頼んでいた、イカを頬張りながら
「はふはふ、し・・しばらく、おま、もぐもぐ、お待ちくださ、ごっくん」
「だ、誰も取りゃしないだから落ち着け」と俺はベネディクトをたしなめた。
ベネディクトは大きめの枡に入ったお酒をゴクっと飲んでから
「ふぁぁっぁ」と酒臭い息を吐いてから
「お、概ね、お供、お供いたします、けくっ」
ディアナをちらりとみると、食べることに夢中なようで、話しかけるのも気が引ける。
「今話しかけないで。」と雰囲気で語るのは正真正銘のご令嬢だと納得せざるを得なかった。
おれはおいおい、こんなんで大丈夫かと不安になったが、まぁなるようになるだろうと腹をくくったのだった。
店のお会計は、ウルリカが約束通り、現金で支払いをした。
ディアナはご満悦で、また来よう、ベネディトといい、
当のベネディクトは、「さようで……ございますな……、おじょう……さま、ひっく」
すっかりでき上がっているようだ。
まぁ今日は時間もあれだし、長旅で疲れている。
なにせ無駄に無駄な情報量が多すぎて、おれもすっかり疲れていた。
————————
そろそろ行きましょうというウルリカに俺は目でそれもそうだなと思うと
「だが断る!」
眼の前に 【GAME CENTER TEIOUDOU】のどはでな看板を見つけてしまったのだ。
げーむせんたーとな・・俺はつい、ふらりと店内に吸い込まれてしまった。
中を見渡すと、色んなビデオゲームや、ぬいぐるみを取る機械、コインゲームなどが所狭し並びその奥の広さまではわからない。
ゲームセンター特有の基盤や配線の焼けた匂いが鼻を突く。
色んな音が混ざり合って聞こえる、なんの音か判別すらつかない音色のカオス。
その右手の方にビデオゲームの筐体群がところ狭しと並んでいた。
そこに吸い寄せられるように近づいた。
散々やったゲームの筐体を見つける。
1回、100円は安すぎないか?と思いながら、手近にあった両替機で手持ちの紙幣を両替する。
1万円札しかなかった。
100円玉が100枚、ずっしり重い。
それを横で重なるコインカップに入れた。
なぜ、どの額も全部100円にしてしまうのか、謎ではあったが、そんな謎はもうどうでもよかった。
”愚弄スペシャル。終わりなき死闘”
なんだか飢えた狼が戦うゲームはよくしっているが、まぁいいそのよく似たゲームの筐体に座ると、ずっしり重くなったポケットからひとつかみ、小銭をそのテーブルに100円玉を10枚づつ積んでその1枚を投入口に入れる。
「ジャキン」という音が筐体から音がして。
「私に勝てるかしら?」と女キャラのセリフが流れた。
ウルリカはきょろきょろと見渡して俺を見つけると近寄ってきた。
何故かメガネを外していてぎょっとして大丈夫か心配になる。
「あ、つくちゃんとこにあったゲームだぁ」
どうやらこいつも酔っ払ってるらしい。
キャラクター選択画面で、私こいつ好き!といってボタンを押してしまう。
「ねぇ・どぅー・しょう」 という ちょっと丸い身体に、丸っいサングラスを鼻に引っ掛けたおっさんが選ばれる。
おいおい、そう思っていると ゲームが始まってしまう。
CP戦なんか、目を瞑っても勝てるほどやり込んだゲームだ。
まして、 「ねぇ・どぅー・しょう」 技の出し方が直感的で使いやすい。
俺の中でも1、2を争う強さだった。
そしてついにボスまで来た時、ちらりとディアナをみるとベネディクトが座り込んでうつむいていたそれをディアナが介抱しているのが見えた。
ベネディクト、79歳、まぁ年だからなぁ。
そしてディアナはいい子だと俺は素直に感心していると、画面にシャリーン 【NEW CHALLENGER】 の文字。
それをみて、ウルリカはうわ対戦割り込みだ、と喜んでいる。
対戦相手が選んだのは雷電王というキャラクターの中でも屈指の公式チート性能を持つ、見た目も青い雷を纏うド派手なキャラクターだった。
最初は 相手『2-3』俺 で俺の勝ちが続く。
ついには、相手『1-3』で俺の勝ちが多くなっていく。
どうやら相手は大技を出したくてしょうがないらしく、わざと追い詰められてから反撃するのが好みのようだった。
相手の出方もタイミングも徐々に見切ってきた俺は、ついに0-3でストレート勝ちしてしまう。
向こうの席で、「ぬうううう、こいつめやりよるわ」
となんだか芝居掛かった声がして筐体の隙間から覗き込んでおれは後悔した。
また【NEW CHALLENGER】の文字に俺は少し焦っていた。
そいつはは大きな声で
「男だったら一つにかける~♫」
「♫……誰が呼んだか、誰が呼んだか~」
「♫今日も決め手の~~ 銭が飛ぶ~♫」
と歌いながら筐体に銭を投入していた。
たぶんあれはお忍びのつもりだろうか。
野球帽を被った筋肉隆々の身体。
秋口で少し肌寒いのに半袖のTシャツ、ふくらはぎ辺りで破けたジーンズにボロボロのスニーカー。
どっかでストリートファイトでもしそうないでたちの、超絶皇帝(自分で決めれる)ライトニング・シュナイダーその人だった。
でかい、190センチ近い身長とガタイにゲームの筐体が小さく見えるほどだ。
が・・・・大袈裟に騒いでいたのであった。
完全にお忍びがばれていて、まわりにあんなボディガードが大量にいるのだからわからないほうがおかしい。
みな遠巻きにシュナイダーを眺め見て、見て見ぬふりをしている。
俺は見つかるとめんどくさい、負けるときは気持ちよく勝ってもらうという活より難易度の高い戦いっぷりを披露することにした。
雷電層のHPが赤く点滅するまで削る。
やつは「ライトニング・タックル」、「ライトニングアロー」と技を叫び始めた、ここまで声が聞こえる。
極めつけに「超・絶・滅」と言いながら、超絶必殺技を繰り出してくる。
赤くなると無制限に技を繰り出せるのはこのゲーム仕様だ。
俺はディアナに目配せすると、ライトニングに気がついたのか、”しばいたれ五郎”のメガネを俺に投げて寄越した。
俺は技を喰らいながらそれを掛ける。
ウルリカがそれを見てまたくくくと笑い出そうとしてこらえていたがその顔が硬直する。
顔で「ヤ・バ・イ」と伝えてくる。
どうやらウルリカもやつに気がついたらしい。
「そんな事は知ってる、退散するぞ ぴーーーー」と”しばいたれ五郎”のメガネをかけた俺は、やつに聞こえない程度の声で答えた。
そして隙の多い技で、奴の超必殺技を食うと、画面に「you loser」の文字
「いい試合であった!」
「やはり最後に勝つのは気持ちがいい!」
「なぁ、永遠の友よ」
等と言いながらこちらを覗き込む、ライトニング氏。
俺はそっと立ち上がると、笑いを堪えて悶絶中のウルリカの腕を引っ張りながら座席を立ったろころで、目があってしまった。
「!! なんざそのふざけたなりは?」
「ぴーーーーーー」
と巻紙笛をならしながら出口へと急いだ。
「まて、”しばいたれ五郎”、それをどこで手に入れた」
「ぴーーーーーー」
俺はアーケード街の雑貨店のほうへ指を指すとライトニングはあっさりそちらに走っていった。
俺よりこのメガネがほしかったらしい。
思わず俺は、「アホでよかった。」とつぶやいてしまった。
ウルリカは、「まって、まってよ、今走ったら死んじゃう、笑い死にとか貴族歴に記録されたら、私お嫁に行けない」
たしかあれは死んだ後のるんだったかな。
俺は「嫁に行くのか笑い死ぬのかどっちかにしろよ」と忠告しておく。
ベネディクトは、申し訳ありませんを連発しながら、のそのそとゲームセンターからでてくる。
その背後に隠れてディアナが出てくると、「それ早く外して、プクク」と俺の顔を見ないようにこちらにやってきた。
「やれやれ」とつぶやく代わりに
ぴーーーーーー
俺はなにこれ面白い。と心のなかで喜んだのだった。
<了>
次回 第3章 ESC(Escape)&ATC(Attack) 1.金ピカ丸(違)と薩摩




