第2章 王家の都市(3)
3.まだ何も終わってないんだが。
無事二人は見つかり、なにごとかウルリカに小言を言われそれぞれの方向に去っていくのを見送った。、
ディアナはなぜか二人に大きく手を振りながら「御機嫌よう~」と言っていた。
なぜか頬を赤らめながら。
全く関係のない俺は遠くでそれを見ながら、ベンチでベネディクトと二人で熱い缶コーヒーをすすっていた。
「大変だな」 俺が言うと
ベネディクトは「お互いに」と返してきた。
二人で大きなため息をついた。
二人がこちらにやってくるなり
ウルリカは俺に「最近親がうるさくて……」
一体何の話をしてるんだろう、この女は。
ディアナは執事に 「美少年兵士ですよ、美少年、あれだけ数がいると圧巻でしたね……」
一体何の話をしてるんだろう、このお嬢様は。
俺はものすごく嫌そうな顔をしながら、
「二人とも気は済んだか?」
ウルリカとディアナは顔を見合わせて、耳まで真っ赤にして、うつむいて謝罪した。
そしてウルリカが「く、車の迎えが来てる、まずは食事を……」
俺は「そうだな、それでいいか?」
ベネディクトとディアナはとりあえず頷いた。
ウルリカは、それより着替えよう、この格好は目立つといって、駅の事務室に連れて行かれた。
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すっかり私服に着替えた、ウルリカは、俺に愚痴をこぼした。
「サイズがなくて、胸部プロテクターが男性用だったのよ。」
と、解放された胸部に天然の柔らかいプロテクターを遺憾無く晒しながら身悶えした。
そして、喪女そのもの、ジャージの上下を着ていた。
今日非番だったんだけど呼び出されちゃってうちのロボットが急かすものだから。
着替える暇がなくて
そしてその顔に乗っていたのはサングラスではなく、ゴツいレンズのメガネだった。
車は、今風でのっぺりしているが、サイズはその辺の自走車よりでかかった。
白い色のリムジン・クルーザー mark.II
貴族御用達の高級自走車だ。
内装は、後部席に向かい合わせでの革張りのシートに小さいテーブル、冷蔵庫まで完備されている。
その車の近くにほぼ全身、金メッキで、カシャカシャと落ち着きのない動き、「まだかな、まだかな」とぶつぶる言ってるロボット。
それと、機械語でぴぽぴぽと音を鳴らす、半球上の頭に円柱の胴体はずんぐりむっくりしてて愛嬌がある。
前方?と左右両方にフレームが伸びてその先にキャタピラがついていた。
なんだか、すごく目立つ。
だいぶ前に流行った、映画に出てくるロボットのレプリカだが、すごい骨董品だ。
「あ、あ、あ お嬢様、来るのが遅いので心配しましたよ」 金ピカのロボットは両手をバタバタさせ流暢に喋った。
「ぴっ、がっぴっががが」
ウルリカが「黄金丸と、薩摩だ」と言って紹介した。
嘘だ、金ぴかのやつは C-3P◯、ずんぐりむっくりは RX-DXだろう。
と俺は内心そう思った。
ディアナは黄金丸を持っていた日傘で叩くと、カンカンカンと中身のない金属の音がしていた。
「お、お、お、おやめください、そんな御無体な・・・・」
こいつは言語中枢にへんな負荷がかかってるのか、かならず会話の始めに”あ”、とか、”お”とかをくっつけてくる。
「なにこれ大丈夫?中空っぽみたいな音する。」
俺はディアナの、そのギャップにぐうの音もでないくらいあきれはてるのだった。
そしてウルリカを見ると、自力で運転席に登れないのか薩摩を運転席に押し込んでいた。
「なんで降りたんだお前は」といっていたが、
「ぴぴぴ、ががが」
「もうしょうがないわね、ふふふ」
俺は光景にこいつは嫁にはいけないだろうなぁという気分になる。
このロボットたちはは召使いというよりもはやペットなんだろう。
そういえば仲のいい友達がいるというようなことを言っていた気がするが、もしかしてこいつらではないだろうか。
漸く、俺達はリムジン・クルーザーの後部座席に乗り込んだ。
俺は運転席側、隣にウルリカ、正面にディアナ、その隣にベネディクト。
「30分ほどでつくから」とそう言いながらウルリカは冷蔵庫からワインを取り出すと、飲む?と聞いてきたが、このあたりの感覚はお嬢様なんだなぁと言う気分になる。
俺が「いや、まだいい」と断るとなぜかディアナは残念そうだった。
ウルリカはサングラスではなく普通のメガネを掛けていた。
それが気になっている俺にウルリカは
「ん?私は両方ともに視力は2.0だ」
「これは近視のメガネだ、かけると近いものが見えにくくなる」
「ちゃんと見えると、緊張してしまうので、これをかけておくと、みんな滲んで・・」
「まて、それ以上言うな」
幽霊に見えるとか言い出したら困ったことになる。
ベネディクトはだんだん不審げな視線をウルリカに向けながら言った。
「申し訳ありませんが、事情がさっぱりわからずじまいで」
ウルリカは大きくうなずき語り始めた。
まず2つの事情
ひとつ、王の錫杖を返却された、ディアナの現在事情が現在貴族たちの間で話題となりディアナ争奪戦が始まろうとしていること。
それを聞いたベネディクトはしかめっ面をする。
ふたつめ、俺をシュナイダーに会わせないこと。
まぁ、つくもちゃんが子どもに手を出さないと知って、軍学校で箔をつけに来た子どもたちの訓練を兼ねていたの。
それにはディアナが反応した。
前者はうちのお家の都合なのね、もう一つは、あちこちからなんとかしろお前知り合いだろうって言われて。
都合よく一緒にいるのを聞いたから・・・ね
あの黒服、アタシの部下、公安部なのアタシんち。
締めくくりに、
「ま、情報はアタシんところで止まってるから、今日明日は安心していいわ」
ベネディクトは至極真っ当な質問をした。
「子どもたちの口から漏れる可能性は?」
「あぁ九重九十九という伝説をひと目見たくてそっちに気を取られてたから大丈夫でしょ」
つくもちゃん、軍学校では、副読本になってる男だから。
「お金貰ってないだが」
と俺はしれっと言った。
「うふふ、ダイジョウブよ、すごいブ男だから」
「ちなみに監修したのはアタシ・・・」
こいつは金をもらってるらしい。
「今日は、九重九十九が駅に来るかもって聞いてみんなワクワクしながら参加してくれたんだから」
あの人数は俺のせいらしかった。
「飯はお前のおごりな」
「まっかせなさーい、臨時収入もあることだし、大船に乗っていいわよ」
その臨時収入はきっと0が6つついることだろう。
メガネのせいでまともに顔がわからないほうが普通に接することができるこの美女はどうしてこうなったと思わんばかりだ
普通に生きてれば、こんなことにはならなかったろうに。と
ちなみにそれが俺のせいだとはこれっぽっちも思わないわけではなかった
歪みねーなこいつ、と俺はそう思ったのだった。
<続>
次回 第2章 王家の都市(4)4.大日本帝国横丁と雷電王




