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擦れたお兄さん(26)が、お金と超技術で無双してみた  作者: 久破空是


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第1章 アイゼン・エクスプレス(3)

3.王の錫杖

 

 「王の錫杖、知ってる?」とディアナは少し上目遣いでそう言った。

 

 「あぁ「お預かりリスト」に載ってたのは見た気がする」

 「王の」という名のつくものには割と目にする。

 九重家の家業の所為でもあるが。

 

 「なにそれ?あんなのがほかにもあるの?」

 

 「あぁ、ざっと1万点くらいな」

 自慢ではないが、一円にもならない預かりものや、いろいろだ、、九重家の収蔵品のリストだ。

 

 「え?、今度見たい」とそういったものに興味があるのか目を輝かせていた。


 ふむ……と考え聞いてみる。

 「君、霊感を信じるか?」

 

 「え、なにそれ、信じるどころか、強い方だって思うわね」

 

 不思議そうな顔、年相応なのか、表情は豊かだと俺は思った。

 「じゃ、やめといたほうがいい」


 「どういう意味?」


 「あぁ、リストを見たやつが、倉庫に忍び込みやがってな」

 

 「どういう意味?」 と再びディアナは聞く。


 俺は簡単に説明をした。

 ずいぶん昔になるが、リストを見たやつが、その倉庫にある惚れ薬の材料があることを知ってな、潜り込んだ奴がいた。

 結局、それから行方不明。

 半年後、見つかりはしたが、遠く離れた街の精神病院に入院してるところをそいつの借金取りが見つけてな。

 うわ言のように「だっきさま、だっきさま」と何を聞いてもそれしか言えなくなってたらしい。

 まぁなんのことかさっぱりだったが、調べに行く気もならんかったらしいよ。

 そいつは元霊媒師だったそうだ。

 

 「…………」ディアナは沈黙した。


「まぁそこに書かれている言葉自体に何か感じるやつもいるかもしれん」

「だからおすすめはしないよ」


「あなたは読んだの?」


「あぁ、一通りな」

 

「な、なんともないの?」


 そう言われて俺は首をすくめた。

 

 俺は少し困ったようにディアナに言った。

「親父がくたばった時に、いくつかは持ち主に返したんだ」

「残りは保管してあるよ」

「ものがものだけに、捨てにくいんだ」

「維持費に年間、数千万はかかるからなんとかしたいんだが」

「いかんせん持ち主もわからんものもあるから困ってる」

 そう言って視線を窓の外に移した。


 執事が「お茶でもいかがですか?」と言ってバックの中から、水筒を取り出すと、コップに注いだ。

 湯気の上がる、香ばしい香りに、俺は礼を言って受け取った。

 

 執事の名は「ベネディクト・クロフォード」いかにもという名前だ。

 紅茶か何かと思ったら「麦茶」とのことだ。

 俺の名前を聞いて選んでくれたのかもしれない。

 

 ディアナは 「そんな焦げ臭いお茶よく飲めるわね」

 「香ばしくて飲みやすいんだ、スッキリする」 と返しておいた。

 ディアナは別のポットから淹れた紅茶を香りを嗅ぐように飲んでいた。


 俺は、電車の揺れにあわせて揺れる麦茶の水面を見てそのことについて思い出していた。


 世に出たら困ったことになると親父がぼやいていた。

 例えば、『花の咲く本』 満月の夜に花びらのように本が開きそしてその時だけ中身が読める。

 その人の運命が書かれているというが読んだものは居ない、その持ち主がことごとく失踪する。

 『笑う仮面』もそのひとつ、身に付けたものに不思議な力を与える代わりに見るものすべてが面白くなってしまい最後には笑い死ぬ。

 『妖刀 ムカデ丸』は、生き物を切るとそこからムカデが湧いてくるとか。

 『勝手に喋るスマホ ジェクシー 』は人格が宿っているという。

 そのスマホの人格は女、持ち主には男しか選ばない。

 見つけては言葉巧みにだましてくるが、その望みを叶えてくれる。

 ただしメンヘラで束縛が強いらしい。

 最後に、その男はジェクシーもすべて何もかもを失うそうだ。

 ほかにも、『アンティキティラ島の機械』の完成品とか……まぁいろいろだ。

 それは最古の自立人形だ。

 聞くところにのよるとどこかを目指してるらしい。

 目指してるらしいまでしかわからん、

 

 親父がくたばって、半年。

 まぁリストの横にご丁寧にコメントまでついているから、本当に返却して大丈夫なものだけを返却している。

 その中にあって、そのコメントに何も書かれていなかった一つがその『王の錫杖』。

 念のため、超合金製の箱に、なんかよくわからんおまじないの書いた紙を大量に入れて業者を通じて返却した。

 まぁそうしろって、倉庫の管理者、マーリン・アーサーに言われたので従ったまでなのだが。

 ちなみにそれは持ち主に返却してもいいという太鼓判がついていた。


 思考を現実に引き戻し、俺は目の前の少女に視線を戻した。

 

 それに気がついたかのように。

 「盗まれたというより誰かが持ち出した、というほうが自然かしらね。

 それを探し出してほしいのよ。」

 

 ディアナは何か考えるようにそう言った。

 

 「心当たりは?」

 ディアナは首を横に数回振る。

 「それがさっぱり、どちらかというと、わからないうちに消えていたとしか言えないんだけど」

 

 「ただね、バーミリオンの叔父様が持ってるって噂が出たの」

 ボソリとディアナは人ごとのように言った。


 

 「で、盗まれたと?」

 

 ディアナは頷いた、

「気がついたのは、保管庫にはなかったから」

「ただのあのゴツい箱、そのまま使わせてもらってたから、誰か間違えて捨てたんじゃないかとも思ったんだけど」

 

 「ちゃんと名前は書いておいたのか?」

 

 「そ、そんなことしないわよ、面白いこと言うのね」

 とディアナは上品に笑って紅茶に口をつけた。

 

 それを見た俺も麦茶を一気に飲み干した。

「で、その『王の錫杖』ってのはただの鉄の棒なんだろ?」

「別にいいじゃないのか」

 

「まぁね、錫杖自体は今どき、釘を打つ金槌にも使えやしないし他に使い道なんか思い浮かばないから…………」

 伝説に近い骨董品も価値は人それぞれか。

 

「でも問題なのは言い伝えの方なの」

 

 ローゼンタールの言い伝えか。

「王の錫杖は、持ち主を王にする。」

 俺は目を閉じてその言葉を聞いた。

 

「で?、言い伝えなんだろ?ただの?」


「そうよ、私もそう思ってたから、あまり気にしなかったのよ。」

「ただね……バーミリオン家で『王の錫杖』を手に入れたと噂がながれたのよ」

「で……盗まれたと思ったわけ」

 「まぁそれはそれで、何事もなければ問いただそうとも思わなかったんだけど」

 というと、喉を潤すように紅茶を飲み干す。


 空になったカップの底を見つめると

「バーミリオン叔父様、ライトニング・シュナイダーに呼び出され一騎打ちで、半殺しの目にあって、今でも病院で震えているそうよ」

「それですっかり、王位継承権は放棄するってさ」

 

「まぁ、見栄っ張りの奥様が、婦人会で自慢したのが耳に入ったのね」

「そんなこともあって、今のあたくしの序列順位ご存知?」


 執事に「おかわりはいかがでしょう?」というのを首を振って断ると

「あぁ、 この依頼の話を聞いた時は29位だったと記憶しているが?」


「今、21位なの。」


「そりゃすごい、3ヶ月で8位もあがるもんなのか?」


「割と平和な治世よ?そんなぽいぽい上がるものじゃないのよ」

 

「その杖のせいでなんらかの力が働いたと考えたということか」

「で、探し出してどうする?」


「叩き折って捨てるわ。」

 

「王にならないのか?」


「冗談じゃないわ!、シュナイダーと戦うかさもなくば、愛人よ?」


 15歳の小娘にここまで言わせる男、シュナイダーに俺は少し同情してフォローしてしまう。

「根は真面目でいいやつだと思うけどな、馬鹿だけど」

 

「そうね、いままでの主君にしては物わかりがよくて悪くはないのよね、馬鹿だけど」

「でも、それとこれは別なのよ」と大人びた表情を見せた。


 「そうか」

 と俺はそう言って、カバンからチョコレートの包みを出すと、ディアナに手渡した。


 ディアナは、それを見て俺を睨みつけると、頬を赤らめパッケージを破いて中身にかじりついた。

 その子供らしい仕草と、15歳少女特有のいじらしさに俺は少し安心する。

 

 「その依頼、受けよう」

 

 俺は第三等級車両の座席に戻るのはもう嫌だ。

 第一等級車両の椅子はの座り心地と来たら心のなかで涙を流す思いだった。

 まぁ戻らなくていいのなら、この依頼受けるのも悪くない。

 

 何が列車旅行の醍醐味だ、そんなの痛くないほうがいいに決まっている。

 と俺は学長の薄くなった頭髪の髪の毛を一本づつ引き抜いてやると、心に誓ったのだった。

 

 <了>

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