第5章 王の錫杖 (6)
6.足
ハルさんを家まで送り届けると俺はロッドブレーキ自転車にまたがる。
時間のせいか、そもそもこんな坂道登る以外の道があるかわからないが、人通りはかなり減っていた。
パンクしてたといってたが、修繕していてくれたらしい、
ペダルを踏み込んだら、あのぎぃぎぃ言う音も見事に消えていた。
そして見事に軽い。爺さんGJだ。
そして軽快に自転車を走らせた。
俺は前輪のダイナモのロックをばこっと下げるとライトがついた。
進行方向を明るくするためというより、自分の居場所を示すためのほうが目的だ。
暗い中、坂道下ってくる自転車は、ぶつかったりしたら、擦りむいたじゃすまないだろう。
昼過ぎくらいに小一時間くらいかけて昇った坂を 5分もしないうちに下り切ると今度は外周方面移動する。
車を取りに行くのだ。
2回、1回、「お控えなすって」だ。
今度は人通りの少なくなったビジネス街に入り込む。
高層ビルに囲まれた大きな公園までくると、SHIMIZU総合商社という看板が見えた。
そこだ。
俺はそこ看板の脇に地下駐車場の入口を見つけると迷わず中に自転車で乗り込んだ。
1台の車が目に止まる、ハイラックス ピックアップスポーツがピカピカに磨かれ、蛍光灯を反射していた。
2.6リッター、パートタイム4WD、リッター5.3キロメートル。
とりあえず、キーをもらうべと、俺はその横を通り抜けた。
無人となった警備室の横に扉があった。
コンコン
コン
「お控えなすって」
がちゃりと扉が開くとそこには市が立っていた。
「ずいぶん遅いんで出張ってきた」
「夜の6時以降は残業になるんだ、俺が立てばロハだ。」と市は楽しそうに言った。
「クライン家の荷物も運びこんであるぜ」
「これ、そこのカードだ、名義は俺んだから頼む」とICカードを渡された。
変なことに使うなと釘を差された。
「春風はどうだった?」
市はなにか気になることがあるのか、そう聞いてきた
「あぁ腕の良いガンスミスで助かった」
「そうかい、そりゃよかったぜ」
親分はめったに人を褒めたりしないがうれしそうだった。
「娘か?」と聞こうと思ってやめた
野暮ったいことを聞くもんじゃない。
「あの車?か ハイラックス」
「おおそうだ」と言ってキーを投げて寄越した。
「じゃ、後は頼む、出る時はそのカードでロックだ」
奥へ消えていく市は
「そういや、タマオが飲みに来いって言ってたぜ、ちゃんと言ったからな」
念を押される。
そして「達者でな」と俺は市に声をかけると市は手を上げて答えてビルの奥へと消えた。
俺はクライン家の荷物の確認をするため、埃臭い部屋に入った。
手押し車のついた液体ラックをハイラックスまで運ぶと、よっこいしょと
燃料を積めるだけつむ。
後部座席には、着替えや食料に水を詰め込んでいく。
そして試作部からの一品、耐刃耐熱耐火耐圧耐衝撃スプレーを見て満足した。
俺はFULLREGISTLIQUIDSPRAYと名前をつけようと思っているが
地上のみしか対応していないし体に直接吹きかけると、体温調整が困難になり暑い。
そして汗腺が塞がれてすごい匂いが出るからおすすめしないと装備部からは言われている。
それと同じ場所に攻撃が当たり続けても駄目らしい。
それを1ダース、1回全身に振りかけるのに3本くらい使う。
それが24本、8回分、持続時間は3時間。
一段落すると、俺は紙製の地図を開いて、楽園監獄、ルードウィング家などの場所を記憶していく。
九重家のAIとリンクした時計やデジタル系のガジェットをドローンに詰め込んで、遠くの海に鎮めるようプログラムする。もちろん完全オフラインでの作業だ。
関わった連中にに手書きで手紙を書いていくつかお願いをしておく。
俺のスマホに、不定期で電話すること、それ以外はいつもどおり過ごすこと。
ディアナに届くかわからんがディアナとベネディトにはいつもどおり過ごすこと。
俺を無理に探さないことを含めておく。
そして重要なことを1つお願いすると、それぞれ封書に入れて、市のICカードとともに、倉庫の事務机の上に置いた。
ハイラックスサーフ4WDのエンジンを掛けると、静かに地下駐車場を抜け出した。
AIに引っ掛けられないよう対処する必要がある。
すべての情報が握られ観測され推測されてすべて筒抜けになる。
俺はそれを化かす必要があった。
俺はふむと考えると1つ手を打つことにした。
<了>
次回 第6章 John Doe 1.身元不明




